音響材料特性予測ソフトウェアSTRATI-ARTZ 2.0の 新機能のご紹介

ソリューション事業部 廣澤 邦一

1. はじめに

STRATI-ARTZは、技術ニュース第31号で紹介いたしました、積層された音響材料の性能予測に欠かせないソフトウェアです。このSTRATI-ARTZがこの度バージョンアップ、画期的な新機能を搭載し、より便利に、より広範な用途にお使いただけるようになりました。ここでは、新しい機能を中心にSTRATI-ARTZ 2.0をご紹介させていただきます。

2. 測定値から材料を推定する「マテリアル サーチ」

材料の音響性能を予測するためには、基となる何らかのパラメータ、例えば、流れ抵抗や弾性率などが必要です。これらのパラメータを直接測定できる場合や、また対象となる材料がはっきりと分かっている場合は大きな問題は生じませんが、パラメータを測定できず、材料も判然としない場合は、音響特性の予測ができなくなってしまいます。さらには、大よその当たりさえつけば良い場合もありますが、そのための手がかりさえ掴めなくなってしまいます。

このように、厳密なパラメータの値は必要ないが、大よその材料は把握したい、というときに便利な機能がこの材料検索機能(マテリアルサーチ機能)です。これは、STRATI-ARTZのデータベースから、与えられた垂直入射吸音率のデータに最も近い性能を示す材料を検索する機能です。マテリアルサーチ機能を用いることによって、パラメータも材料名も分からないがその垂直入射吸音率のデータだけはあるという場合に、その材料に最も近い特性を持った材料やパラメータを推定することができるようになりました。

図1 マテリアルサーチ機能の一例
図1 マテリアルサーチ機能の一例

図1に一例として、あるテストサンプルの音響管を用いた垂直入射吸音率の測定データ(緑線)に対して、近い特性を示す材料をデータベースから検索した結果、類似と判断された3つの材料の吸音率を表示しています。(特許出願中)

3. 最適なパラメータを同定する「パラメータ スタディ」

材料の音響性能は言うまでもなくパラメータに左右されます。より音響特性に優れた材料を開発するためには、どのようなパラメータであれば良いかを知ることが重要です。また、マテリアルサーチで類似の材料を同定した後、パラメータの値そのものを微調整し、測定値とより良い一致を示すような材料パラメータを同定する必要もあります。

このようなご要望には、新開発の「パラメータスタディ」がお応えします。この機能は、ある材料のパラメータが与えられたとき、その中で着目したパラメータを変化させ、それに伴う音響性能の変化を一目で分かるように表示するものです。具体的なイメージを5.でご紹介いたしますが、画期的な機能で、材料の特性最適化の指針が容易に得られます。

4. 有孔板を含む積層構造への対応

昔の学校の音楽室で、小さな孔がたくさん開いている仕上げの壁をよく見かけたものです。これは、レゾネータ(共鳴機構)による吸音効果を狙った壁で、この孔の開いている板は「有孔板」と呼ばれます。有孔板の吸音効果は、孔の直径、板の厚さ、開口率によって決まり、これらを調整することで効果を設計できます。現在では、微細穿孔板(Micro Perforated Plate; MPP)と呼ばれる、プラスチックフィルムなどに直径1mm以下の非常に小さな穴を開けているものもあります。MPPは大きな吸音効果が比較的広い帯域で発揮されることから、多くの場面で用いられるようになりました。

STRATI-ARTZ 2.0では、MPPを含む様々な孔の径に対応、さらには円形の孔だけでなく正方形の孔も扱うことができます*1

図2は、有孔板を含んだ積層構造の垂直入射吸音率に対する検討例を示しています。

図2 有孔板(厚さ1mm、孔の直径1mm、開口率1%)を用いた積層構造の垂直入射吸音率の計算結果
図2 有孔板(厚さ1mm、孔の直径1mm、開口率1%)を用いた積層構造の垂直入射吸音率の計算結果
図2 有孔板(厚さ1mm、孔の直径1mm、開口率1%)を用いた積層構造の垂直入射吸音率の計算結果

5. STRATI-ARTZ 2.0の新機能を使った検討例

まず最初の例は、流れ抵抗の大きな厚さ2mmの多孔質材料と流れ抵抗の小さな厚さ10mmの多孔質材料の2層が、剛壁上に設置されている状態を考えます。

このとき、表面の多孔質材料の流れ抵抗を変化させたパラメータスタディを行った例が図3です。横軸は周波数、縦軸は流れ抵抗であり、流れ抵抗を変化させたときの垂直入射吸音率の変化を分布図として表現しています。赤に近づくほど吸音率が高く、青いほど低いことを表しています。また、図中の白線は、初期値(現在値)として与えた流れ抵抗に対応した吸音率を示しています。

図3 2層構造のパラメータスタディの例(流れ抵抗に着目)
図3 2層構造のパラメータスタディの例(流れ抵抗に着目)
図3 2層構造のパラメータスタディの例(流れ抵抗に着目)

図3を見ると、明らかに初期値に対して、低い流れ抵抗を持たせればより吸音率が高くなる傾向が分かります。そこで、流れ抵抗を半分程度にしたときの吸音率を図4に示します。この検討から、高周波域での吸音率が大幅に改善可能であることが分かります。

図4 2層構造の垂直入射吸音率
図4 2層構造の垂直入射吸音率
図4 2層構造の垂直入射吸音率

続いて図5は、3層構造を想定し、挟まれているMPP(厚さ1mm、孔径1mm)の開口率の変化を検討した例です。

結果では、開口率が小さいと低い周波数で急峻な吸音率のピークが見られ、逆に開口率が大きくなると中周波数以上で吸音率が大きくなる、すなわち多孔質材料の特徴が生かされることが分かります。このようにMPPを含む積層構造は、その設計によって多様な音響特性を実現できます。

図5 3層構造のパラメータスタディの例(MPPの開口率に着目)
図5 3層構造のパラメータスタディの例(MPPの開口率に着目)
図5 3層構造のパラメータスタディの例(MPPの開口率に着目)

6. おわりに

STRATI-ARTZ 2.0の新機能をご紹介させていただきました。これらの機能によってより便利に、より広範な用途にお使い頂けるようになったと考えております。新機能の多くは、実際のユーザー様からのご要望を取り入れて開発したものです。今後もご要望に耳を傾けながら、皆様のお役に立てるような機能やサービスの開発を行ってまいります。

参考文献

*1 K. Hirosawa,“Estimation of acoustical properties for multi-layered structures included a perforated panel using the transfer matrix method”,inter-noise, SS-P1, Osaka (2011).

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