無響室(無響音室と呼ばれることもあります)とは、自由音場の条件を実現するために、壁、天井、床を高い吸音性に仕上げた実験室です。自由音場の条件とは、簡単に言えば壁面等の反射音の影響を受けず、音源から放射された直接音だけが観測される、屋外空間のような音環境であることを意味します。歴史的には、マイクロホンやスピーカの特性の測定、騒音計などの感度校正、各種音源の音響パワーレベルの測定等がその典型的な利用方法でした。現在ではこれらの用途に加えて、自動車や複写機などの放射音の測定や聴感実験など、広範囲で使われるようになっています。
弊社は、お客様のニーズに応じた無響室の設計・施工から、使用する測定システムまでトータルなご提案をさせていただきます。
無響室の仕様のポイントとして、
(A) 完全無響室・半無響室の選択
(B) 吸音層の決定
があげられます。
無響室には、床も含めた室の6面が全て吸音仕様の「完全無響室」と床のみが反射性の「半無響室」があります。完全無響室は、音声や騒音の研究開発全般、マイクロホンやスピーカの特性の測定、測定機器の校正が主な用途です。一方、半無響室は床面がハードなため、測定時には床が反射面であることに留意(もしくは利用)することが必要になります。
自動車を設置することができる無響室は、車室内での測定が目的の場合と、車外での測定が目的の場合に大別できます。
車室内での測定では、エンジン音やロードノイズの車室内騒音の測定や、内装材の寄与解析、カーオーディオの評価、ナビゲーションシステムの音声認識機能の評価等があります。車外での測定の代表的なものは、車外騒音測定の模擬や、ドア閉まり音の測定が挙げられます。また、車室内、車外双方での測定が行われる例としては、低騒音風洞(半無響室と同様の内装仕様になっていることが多い)での風騒音の評価があります。
またエンジンの駆動が前提となる場合には、エンジン排気システムを備える必要があります。その他運転状態を模擬するためのシャシダイナモメーターを室内に設ける計画、低騒音風洞実験設備の一部としての計画等、空調や試験設備メーカーとの共同プロジェクトも数多くの実績があります。
合わせて測定機器を統合した使い勝手の良いシステムソフトウェアのご提案や、お客様の製品開発をお手伝いするコンサルティングまで、幅広いサービスをご提供します。
遮音性能評価のための無響室は、残響室が併設され、室間にサンプルを取り付けるための開口部を備えています。
ここでは材料の単体試験のほかに、ドアやフロアパネル、ダッシュといったアセンブリ状態の部品(コンポーネント)の遮音性能の評価を行うケースがあります。測定システムとしても、マイクロホントラバースを使った近接音響インテンシティの自動測定等、幅広いご提案をさせていただきます。