H 邸 オーディオ・シアタールーム AGS 追加設置工事

音空間事業本部  柳澤 拓海  崎山 安洋  根木 健太

概要

オーディオ・ノート社は、真空管アンプに代表されるオーディオ機器で海外からも高い評価を受けているハイエンドオーディオメーカーである。今回、事業拡張に伴い鹿島田から溝口に社屋を移転。その2F に試聴室が計画され、弊社はその設計と施工を担当した。
一口に試聴室と言っても、求められる音場は様々である。音場を始め試聴室のコンセプトを互いに共有するために、計画段階から鹿島田の試聴室で試聴と意見交換を充分に行った。その結果、開発目的だけでなく完成品をお客様に披露する場とし、デッド過ぎない落ち着いた音場の空間設計を目指した。
試聴室は自社ビル内、事務所エリアの一画に位置し、遮音仕様は固定遮音構造とし最低限必要な遮音量を確保した。音場処理用スペースも十分に確保した上で、可能な限り部屋の有効寸法を広くとれる計画とした。
弊社のサウンドラボで聴かれたAGS も、効果的なポイントで使用されたいという要望を頂き、天井に4 か所、壁面に2か所配置した。
オーディオ・ノート社では、アンプ設計時に周波数特性等の数値データをクリアした上で、部品の固定や取り回しをどうするかといった調整が、最終的な音質に大きく影響するとのこと。弊社の音場調整にも共通する考え方が多く見受けられる。最終の音響調整では、客先と弊社とで様々な音源を聴き比べながら、再生音場で音像の位置・輪郭、前後感、空気感、低域感、中高域のバランスなど、お互いが捉えた音場に対する意見交換をしながら進められ、AUDIO NOTE の製品が持つ音楽の情念が感じられる空間造りを、オーディオ・ノート社と二人三脚で造り上げることが出来た。

お客様の声

商品開発での音質評価をするため、特有の癖がない環境を確保したいということと同時に楽器の音、特に声が魅力的に鳴り、音楽鑑賞が十分に楽しめる空間を求めました。施工完了時の遮音特性、残響時間、伝送特性等の基本性能はほぼ設計通りにクリアしました。
ただしこの段階での音はいわゆるハイファイでした。伝送周波数特性、残響時間周波数特性ともに大変優秀なのですが、音楽の叙情的な部分の再現性が必要で、その後の細部の音響調整で劇的に改善されました。「オーディオ用の部屋を作りあげる」ということは、我々が日々戦っている商品開発の工程と通ずるものがあります。基本性能を達成した後、いかにして魅力ある音楽を表現できるように仕上げるのかが最も重要な部分であると感じました。
測定器での計測が難しいところを調整し、その変化を正確に感じ取りより良い音の響きに仕上げていく。正に長い経験により積み重ねられた技術とアイディアでのみなせる業であると思います。

AUDIO NOTE Kagura2
AUDIO NOTE Kagura2
背面に設置したレコード棚
背面に設置したレコード棚
壁面に埋め込んだ特注AGS
壁面に埋め込んだ特注AGS
壁面に埋め込んだ特注AGS

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