
音空間事業本部 津金 孝光、嵯峨 寛人、渡會 健、崎山 安洋
データサイエンス事業部 松尾 浩義、倉地 俊哉、堤野 雅貴
概要
JVCケンウッド様は、横浜本社地区を新たに価値創造の拠点「Value Creation Square」(バリュー・クリエーション・スクエア)として創設し、その拠点を構築するビル群の一つとなる新ビル「Hybrid Center」(ハイブリッド・センター)が、2024年10月に完成した。当社は新ビル内の音響的な試験室として無響室1室、半無響室2室、試聴室2室の計5室の設計・施工を担当した。
建屋1階の床面より更に3.2m下げた床から高さ10mを超える吹き抜け空間に、無響室が設置された。無響室は躯体から縁切りされた独立の自立型軸組フレームによるBOX in BOX の遮音構造を採用しており、周囲の音・振動からの影響を排除している。また低音域から十分な吸音性能を持つ1mの吸音楔を床・壁・天井に配置し、無響室として相応しい容積と吸音機構としている。空調・換気設備には水配管レス調湿外気処理機により湿度環境にも配慮されたシステムを構築し、性能の高い消音ダクト・サイレンサー等により、極めて静かな暗騒音が確保された空間とした。
天井面には、当社製の3軸のマイクロフォン移動装置(MTS-3)および、床面にはスピーカーの指向性を測定するために、同じく当社製のターンテーブル(TT-1000)も設置され、効率が良くまた再現性の高い測定業務が遂行できるよう配慮されている。
半無響室は大小2室を設置した。大型の半無響室は車両が入るものとして計画され、JVCケンウッド様の製品が車載状態で計測が可能である。車両用の半無響室として、エンジン排気設備をもちあわせており、また半無響室全体にシールド性能も付加している。小型の半無響室は、振動加振機によるラトル試験(ラトル音;カタカタ音など)を目的としたもので、鋼製遮音パネルによる組立式が採用された。
試聴室は目的別に2室となっており、1階の試聴室-1においては社外のお客様にも一緒に試聴していただける空間として建物内にレイアウトされている。2階の試聴室-2は、JVCケンウッド様の自社開発用として利用される。両室共、躯体から縁切りされた完全浮構造の遮音構造を採用しており、建屋内における諸々の試験設備が設置されている環境の中で試聴室に相応しい静けさが確保されている。
これらの新たな各種の音響試験室により、JVCケンウッド様が進める、より充実した研究・開発に取り組める環境の構築に貢献させて頂いた。
お客様の声
当社の経営方針である"ものづくりを通じた新たな価値の創造"を具現化すべく、今回新たに建設したビル内に無響室、半無響室、試聴室と複数の音響試験室を設営していただきました。これらの試験室が、当社の更なる音作りの深化に寄与しています。ビル建設の工期が限られており相当タイトな日程でしたが、予定通り仕上げていただき感謝しております。





(撮影:八島 崇)