建築音響 設計・施工 AGS(SYLVAN・ANKH) Special Interview -Kotaro Oshio-

Acoustic Guitarist 押尾コータローさん

PROFILE

2002 年7 月アコースティックギタリストとしてメジャーデビューし、同年10 月全米メジャーデビューを果たす。スイスの「モントルージャズフェスティバル」には、2002年から3年連続出演し、B.B.キングと共演するなど、海外での評価も高く近年ではアジア各地での活動も拡げ、韓国や中国でのソロライブも多数開催。
オープンチューニングやタッピング奏法などのテクニックを駆使し、1 本のギターで弾いているとは思えない鮮やかで迫力あるギターアレンジや、あたたかく繊細なギタープレイは世代を超えて多くの人々に支持を受けている。MBS ラジオでレギュラー番組「押尾コータローの押しても弾いても」が放送中。ソロアーティストとしてライブ活動を中心に、作曲家としても映画音楽や番組テーマ曲の作曲など幅広いスタンスで活躍中。


押尾コータロー オフィシャルサイト
https://www.kotaro-oshio.com/

押尾コータローさんが2021 年9 月に、東京・名古屋・大阪のクラシックホールで開催した「弦音Live 2021-PASSENGER-」のステージでAGS を使用していただきました。今回は押尾さんとPA エンジニアの片石喜之さんに「弦音Live」を通したAGS のご感想をお聞きしました。

ーーまずは、AGS をどこで知られたのか教えてください。

押尾さん:
AGS は東京文化会館の小ホールで行われた、渡辺香津美さんと村治佳織さんのデュオコンサートで初めて見ました。もともと谷川公子さんから、狭い空間でも、AGS を置くことで広い空間で弾いているみたいで、すごくいい!と。香津美さんからは森の中で弾いているような感じなんだよね、というお話も聞いていたんです。
公演中にAGS の有り無しを聴くことは出来ませんが、実際に客席で聴いた時に、お二人の音がとてもナチュラルに聴こえて、すごくいいなあと思いました。もちろん東京文化会館のホールの響きも良いですけど、今思えばAGS を置くことで音が整えられていたんですね。

押尾さん:
その時に僕も使ってみたいと思いましたが、自分のコンサートのスタイルに合うのか、PA エンジニアにはどう映るのかが興味深くて、まずは片石くんに相談をしました。

ーー「弦音Live」は紀尾井ホール、しらかわホール、いずみホールというクラシックホー ルでの公演でした。ライブハウスや通常のコーンサートホールでの公演とは違う、「弦音 Live」ならではのコンセプトがあれば教えてください。

押尾さん:
弦音Live では、弦の音をちゃんと届けたい、そしてホールの響きの素晴らしさも活かせるものにしたかったんです。ピュアな音をピアニッシモまで、出来るだけみんなに届けて、一番奥の席の方にもいい音だったと言ってもらえるライブ。それが僕の弦音Liveのコンセプトでした。
弦音Live は以前にも一度やっていて、その時からコンセプトは変わってないんですが、その時は今回よりも、もっと“生音”なイメージでオーダーしてましたね。片石くんはスピーカーの存在を感じさせないような、小さなシステムを組んでくれて、あのライブもすごくよかったんですが、客席の場所によってはギターの音量がもう少しあったらという声もあって。
2 度目の今回は、もっと気持ちよく音を楽しんでもらえる弦音Live にしたくて、ステージのスピーカーも変えて、AGS を使わせていただきました。

片石さん:
押尾さんに初めて弦音Live の話をもらった時は、ギターの生音だけでやりたいと言われました。でも、さすがに鉄弦のギターでは一番後ろまでは聴こえないと思って、色々なシステムを想定して考えました。それで、小さいスピーカーを後ろに二つ置いて、PA機材使いながらもLch, Rch を感じさせないシステムで、押尾さんのギターから聴こえるように、ほぼ生音でやったのが1 回目の公演でした。
今回は、押尾さんが改善したいことを実現するために、新たなスピーカーを試して、上下で音量が分けられるアレイタイプのスピーカーを2 つ使って、AGS を組み合わせれば上手くいくかもと感じました。

――「弦音Live」のお話を頂いて、いずみホールのゲネプロでAGS を試す機会を頂きまし たね。 いろいろな置き方で聴いていただいた結果、左右の斜め後ろに置いたPA スピーカーの前 と、押尾さんの真後ろ、という配置でAGS を採用していただきました。

片石さん:
今回は日本音響さんにとっても初めての置き方だったと思います。PA スピーカーの前にAGS を置いたことで、スピーカーからの音を上手く拡散したのか、前方席と後方席の差がなく、どこで聞いてもスピーカーから音が出ている感じもなくて、驚きでした。

――AGS の効果を検証するのに、スタッフの皆さんが客席を歩きながら、それぞれの席で どう聴こえるのかを確認される姿には感銘を受けました。

押尾さん:
何を優先するかは様々だと思いますが、僕の場合は来てくれるお客様にどの席も良い音で聴こえてほしいと思ってるんです。そのためにはどうしたら良いのかをみんなで考えます。だから、今回の設置方法が見つかったのかもしれませんね。
1 階席はもちろん、2 階席の方にも「良かった!」って感じてほしい。今回の弦音Live ではAGS をスピーカー前に置くっていうスタイルの発見が嬉しかったです。

押尾さん:
片石くんというエンジニアがいてくれて、AGS も有意義に試せたと思います。付き合いも長いので言いたいことも言える。音響以外のスタッフからも意見が出たりしてエンジニア任せになることはありません。結構、専門外の人の意見も大事なんです。


片石さん:
チーム押尾のスタッフは、お互いが色んなことを言うっていうのは有りますね。


押尾さん:
言いたいことを言って、それを解決していく。お互いリスペクトしつつ、こうしたらどう?とか、素人意見でもそれを具体的にするにはどうすれば良いか?というやりとりがいつも出来ているんですよ。今回も、チーム押尾が一丸となって、AGS ともうまくコラボレーションしてくれたなあって、スタッフには感謝しています。
音響のデジタル機器を扱う人間が、AGS という電気を使わないアコースティックなものをうまく利用して、さらにいい音に仕上げるってすごく、いいなと思いました。

押尾さん:
AGS をスピーカーの前に置いたことによる視覚的効果も大きいですね。スピーカーが目に入ると誰でもそこから音が出てるって意識になるけど、見えないと自然と意識に入らない。それが心地よかったりして、それこそ森の中に居るような空間が作れたのかなって思います。


片石さん:
会場全体が、均等に聴こえたのも良かった。


押尾さん:
AGS による素晴らしい音響効果を体験できたことが大きかったです。

――ありがとうございました。 今回はAGS をクラシックホールでの公演に使用していただきましたが、他にも使ってみた いと思われた場面はございますか?

押尾さん:
レコーディングで使えるんじゃないですか?コンサートであれだけ違いが出るなら、それを録音してみたら面白そう。


片石さん:
僕もレコーディングでやってみたい。マイクで録ったら、結構クリアに録れるんじゃないかな。

――最後に、どんな人にお薦めしたいですか?

押尾さん:
ピアニストの方々が使いたいって言われるのは分かりますが、ギターにもいいと思います。50 人から100 人くらいの会場での生音コンサートにも非常にいいと思います。すでに、ステージに組み込まれているホールもあると思いますが、クラシックギタリストの方で、音響を使わない人にもAGS が広がっていけばいいなと思います。

本日はどうもありがとうございました。


弦音Live2021”PASSENGER”

会場: 紀尾井ホール しらかわホール いずみホール

Photo by sencame