音空間事業本部
後藤宏明 出口公彦 佐竹康 中野健


Control Room A

1. Overview

渋谷の南平台町に本社を置き、ゲームの企画・開発・運営・アニメーション製作を手掛けている株式会社Cygames様のスタジオ新設計画に御協力をさせていただき、共用部、スタジオ3部屋・Edit6部屋の竣工を2020年3月に迎えた。

2. Concept

スタジオ

【A STUDIO】
南国リゾートを彷彿とさせるような明るく爽やかでラグジュアリーな空間。グリーンを多用して、フレッシュさを意識した。

【B STUDIO】
AGSを利用しながら、北欧はフィンランドの森をイメージさせる木を使用。世界的建築家、Alvar Aaltoのディテールを取り入れている。室内の家具もアアルトを中心に北欧家具にこだわった。

【C STUDIO】
ゴシックのテイストを取り入れながら、時代や文化を超越した非日常の空間を演出。仲問で集う秘密基地的な空問色が再現されている。

<スタジオ意匠設計>
一級建築士事務所AFD設計工房様

共用部

エントランス・ウェイティングスペースには大きな一枚のブラックガラスに同社のコーポレートロゴをシンプルに掲げ、洗練されたイメージを表現した。正面のレンガ調壁面に埋め込まれる大型モニタには各スタジオ・編集室の使用状況等が映し出される予定である。

右手に続くスタジオエリアを包み込む外周部(通路・ラウンジ)は古い倉庫を改装したようなアンティークブリックタイルの一面壁、ヘリンボーン貼の床材、無骨なスティール仕上・クリアガラスにより、さながら秘密基地の通路のような雰囲気を演出した。PC作業、簡易なミーティング、電話等で使用できるハイカウンター・ハイテーブル、ドリンクスペースを設え、スタジオ共用空間としてはシンプルな造りながらも利便性を確保している。

もう一方のエリアの正面方向には、社内チームスタッフが少人数で使用可能なエディットルームが設けられる。

コーポレートカラーのモノクロと上質なウッド調の落ち着いたライティングで設えたアプローチ空間により高品質な音響設備を保有する施設としての印象を高めた。

<プロジェクトマネジメント・共用部意匠設計>
株式会社ナリング・クリエイティブ様

3. Sound Field

【A STUDIO】
ハイスピーカーを完備し、イマーシブオーディオの再生・制作が可能なメインスタジオ。Dolby Atmos homeのレギュレーションに準拠した7.1.4chスピーカー配置を採用。
ゆとりのある空間と落ち着いたデザインから、ミックスだけでなくプレビュー環境としても機能するような音場造りを目指した。

【B STUDIO】
5.1ch対応のMIXルーム。
天吊りのリアスピーカーとの音場的なつながりを考慮して、斜め梁状の柱状拡散体を配置。

【C STUDIO】
複数人数での同時収録も可能な広さのブースを持つレコーディングスタジオ。ヴォイス収録だけでなく、楽器の録音も視野に入れ、壁に格納されている可搬型の柱状拡散体ANKHには反射/吸音パネルも装備してあり、この組み合わせを工夫することで、収録素材に応じた音場の可変が行えるようになっている。

各スタジオとも、それぞれのデザインコンセプトを意匠的に前面に取り入れ、柱状拡散体AGSの適正配置と吸音層の内側で要とに合わせた室内音場処理を施している。

【Edit】
音源作成のためのEDITルーム。6室とも、スタジオAとの再生環境の互換性を考慮した7.1.4chスピーカー配置を完備。

4. Electronic equipment

音響機器の電源としては、トランスを用いたピュア電源とし、ノイズを低減している音響電源としている。

また、照明・コンセントはシールドケーブルを使用し、発生したノイズが内部の導線に干渉することを防止している。

5. Air conditioning equipment

各音響諸室は空調を冷房・暖房自由にコントロール可能なシステムを構築。空調機トラブルによる同時運転停止にならない組み合わせとなるよう設計した。

スタジオ系空調機を共用部天井内に設置する事で、機外騒音をControlRoom/Studio天井内に取り込まない設計をし、Studio内に風量調節器を設置する事で小さな音の収録用途にも適した風量調整可能とした。

6. System

【STUDIO 共通】
DAW & Console:
Avid Pro Tool & Media Composer
Avid MTRX、Ferrofish A32
Avid S3、CBElectronics TMC-1
Speaker System(2ch):
Amphion One 18、JVC EX-HR9

【A STUDIO】
Speker System(7.1.4ch):
L,C,Rch:Genelec 8351BW
Rear & Back Sorround:GENELEC 8341AW
Hight:GENELEC 8331AW
SW:GENELEC 7360A

【B STUDIO】
Speaker System(5.1ch):
L,Rch:NEUMANN KH 310
Cch:NEUMANN KH 120
Rear Sorround:NEUMANN KH 120
SW:NEUMANN KH 810

【C STUDIO】
Speaker System(2.1ch):
L,Rch:NEUMANN KH 310
SW:NEUMANN KH 810

【Edit】
Console:
RME Fireface UFX+
Ferrofish A32
YAMAHA CX-A5200(AVプリアンプ)
Speaker System(7.1.4ch):
CENELEC 8331AW
SW:GENELEC 7350A

<System 設計・施工>
株式会社エスアンドアール様

<サウンドコーディネーター/アドバイザー>
レコーディングエンジニア 藤原暢之様

7. お客様の声

今回、スタジオ毎に色調や壁材、家具等でインテリア的な特徴を持たせる、という音響特性とは相反しそうな要素をお願いしましたが、綿密な打ち合わせと関係各所のすり合わせにより、期待通りの見た目を持ちつつも、スタジオとして納得の音響特性に仕上げていただき、大変感謝しております。

全体として非常にデザイン性の高いフロアとなり、弊社のイメージカラーと相まって、お客様に弊社の印象を強く持っていただける素敵なスペースとなりました。

現状、コロナ禍により、実稼働は行われておらず、音響等についてはまだこれから確かめていくところですが、現時点でも確かな手応えを感じており、これから使用していくのが非常に楽しみです。

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