京都みなみ会館

ソリューション事業部 音響コンサルタント 早川 篤

1. はじめに

2019年8月にリニューアルオープンした京都市南区に位置する京都みなみ会館(1963年創業)をご紹介いたします。今回はタトアーキテクツ様(設計事務所/兵庫県神戸市)にお声がけいただき、音響コンサルタントとしてプロジェクトに参加させていただく運びとなりました。私たちが過去に携わったミニシアターのリニューアルでは、昭和13年に竣工したビルへの移転、築100年を超える木造工場の再生、既存ビルの床を解体し階高を確保しながらつくったシアターなどがありますが、今回は元銀行をシアターに改修する計画でした。スクラップアンドビルドではないリニューアルの場合、設計条件の制約が多い為、音響計画もプロジェクトの状況に合わせて進めていますが、今回はスクリーン裏の壁を隔てたすぐ隣に木造住宅が立ち並ぶ上に、京都みなみ会館様から{怪獣映画を中心とした爆音上映をオールナイトで実施したい}というご要望を伺い、頭を抱えながらプロジェクトがスタートしました。


外観


スクリーン1


スクリーン2


スクリーン3

2. インテリアとアコースティックデザイン

旧京都みなみ会館は、ALC造の建物の2階に位置する、床がスロープ形式の1スクリーンで、壁面には吸音効果をもつ有孔板や木毛セメント板が用いられ、少しレトロな雰囲気の響きが長いシアターでしたが、今回は、RC造の建物に3スクリーンを上下階に配置する計画となっていました。以前、ある映画監督がおっしゃっていた{昔はハコ(映画館)毎に個性があってよかったなあ。}という言葉を思い出し、映画館としての機能を維持しながらも、昨今のシネマコンプレックスとは異なる{個性的}な空間を目指そうと考え、タトアーキテクツ様の空間デザインの方向性に合せて内装材を協議、選定し、設計を進めました。

1Fのスクリーン1(席数126)の壁には、旧みなみ会館の名残のある有孔板が採用されました。素材感を統一する為に壁全体に有孔板が貼られていますが、背後空気層に充填するグラウスールの量を調整し、また、部分的に板状材で孔を塞ぎ、低音域から高音域までバランスの取れた響きになるよう配慮しました。次に2Fのスクリーン2(席数54)は壁面にグラスウール化粧吸音板、スクリーン3(席数30)は旧みなみ会館の名残のある木毛セメント板が採用されました。木毛セメント板を映画館の仕上げ材に採用するのは今回が初めてだったのですが、室容積が小さいことや材料の吸音特性から低音域の制御が難しいと考え、木毛セメント板の背後に空気層を設けていただき、響きのバランスが取れるよう配慮しました。竣工時の残響時間(500Hz)の測定結果は、スクリーン毎に内装材の特性が見られるものの、推奨値範囲内となり、インテリアの素材感とアコースティックが調和した素晴らしい空間が完成しました。


Acceptable Reverberation time VS Room Volume (Dolby)


1F エントランス

3. 遮音計画について

{スクリーン裏が木造住宅}と{怪獣映画の爆音上映}を念頭において、計画初期に敷地周辺の環境騒音を確認し、遮音計画を検討しました。今回は上下階にシアターが位置する為、1Fのスクリーン1は、スクリーン周辺の床を防振床とし、天井は防振天井、外壁側のみ緩衝材を用いた遮音層、2Fのスクリーン2と3は完全浮き構造を採用しました。建物が元銀行で一般的なビルよりもコンクリートに厚みがある為、遮音性能確保には有利でしたが、外壁にある既存窓の遮音対策や設備計画などの問題点を協議しながら施工を進め、最終的な遮音性能は上下階でD60から65、スクリーン1の外壁は、D65以上の性能を確保しました。今現在、{爆音上映}にも耐えております。

4. おわりに

今回は、設計者、施工者ともに初めてのチームで挑みましたが、個性的で素晴らしい映画館が完成いたしました。京都みなみ会館 館長の吉田様、映写担当の米澤様、設計のタトアーキテクツ島田様、今井様、また、施工途中、細部まで気を配っていただきましたアンドエス様をはじめとする施工会社の方々に厚く御礼申し上げます。


平面図


断面図

設計建築:タトアーキテクツ
施工:アンドエス
敷地面積:572.03m2、建築面積 379.37m2
延床面積:720.59m2、階数 地上2階
構造:鉄筋コンクリート造(既存)、一部鉄骨造(増築)
工期:2019年1月~2019年8月
写真撮影:阿野太一