松竹映像センター 新ポストプロダクションスタジオ

音空間事業本部 崎山 安洋、嵯峨 寛人、林 真希

1F Dubbing Stage

1. はじめに

これまで大船・高輪・築地の3か所に分散していた拠点を集約した松竹映像センター様の新ポストプロダクションスタジオが、2014年12月、港区台場にオープンしました。

ゆりかもめ「お台場海浜公園駅」から徒歩1分。利便性が高い都心で、音響制作、映像編集、アーカイブ対応まで一貫した作業が行える環境が実現しました。

2. デザイン

コンセプトデザインは、日本ではソニー・ミュージックスタジオ、米国ではドリームワークス・アニメーションや20世紀フォックスなどのスタジオを手掛けたピーター・グルナイセン氏が担当しています。

長い歴史を持つ松竹映画の「伝統」を表現した「木」が取り入れられ、寒色系でシックな色調のスタジオに「温かみ」が加わっています。日本の伝統的な「障子」や「和紙」の透け感を半透明のアクリル板で表現。各スタジオに展開されている三角形パネルの組合せは、畳と同じ縦横比2:1で統一され、それをずらすことで視覚的なユニークさが表現されています。「日本の伝統」と「松竹映画の伝統」を重ね合わせたモダンなデザインとなっています。

1F Looby
1F Looby

3. スタジオ計画

テナントビルの1Fにダビングステージ、ADR、サウンドデザイン等の音響編集系の室を、7FにEDIT、AVID、Audio Suite等の映像編集系の室を計画しました。テナントビルにダビングステージを造るのは初めてのことでした。

階高は、1Fが6.4mの高さがあり、7Fは4.15mと一般的でした。1Fフロアーは、ダビングステージを中心に音響緒室を、7Fフロアーはマシンルーム周囲にEDITなど各室を配し、機能的なレイアウトとし、7F外周部の通路等は、お台場周辺の眺望を生かした開放感のある空間としました。

4. 音響計画

遮音計画は、上下階の別テナントさんとの遮音確保もあり、音響諸室はすべて浮遮音構造とし、遮音天井は二重化で上階との高遮音を実現しました。特に大音量のダビングステージ廻りは、ダクト貫通部等を入念に処理してあります。

音場計画は、室の目的と大きさに応じて、室寸法と形状、低域の吸音処理とバランスの良い中高域の音響処理を考慮した音響仕様としました。建築完成後に遮音測定を、機材設置後に音響調整(建築・電気)を各室で行いました。

特に、ダビングステージは、中間時にスピーカー設置調整・室内音響調整、完成時にスピーカーのダンピング処理・電気音響調整を行い、1Fのダビングステージや7Fのオーディオスィートは、クライアント様とディスカッションしながら、調整を進めました。

細かく調整を行ってくと、仔細な音の違いも判り、同じ音源でも、ニュアンスが伝わり、感動も増すものです。

3か所に分散していた拠点を集約し移転するという今回の大プロジェクトは、大船からダビングステージを移設するという難題に加えて、機能の新設や増設をすることで効率性と高機能性を重視した新ポストプロダクションを作るというミッションがありました。そこで大船のダビングステージを熟知していることや、同業他社の映画ダビングスタジオの施工実績がある日本音響さんに設計・施工を依頼しました。

最初のハードルはオフィス用に設計された既存ビルの中に映像編集室や天高が必要な録音スタジオを作らなければならないことで、遮音性や振動など様々な制約がある中、日本音響さんには物件探しの段階から参加してもらい、その都度適切なアドバイスや具体的な判断もしていただきました。またコンセプトデザイン担当にはロサンゼルス在住のピーター・グルナイセン氏にお願いした関係上、日米の建築の基準や法令の違いがある中で日本風のアレンジが必要であるにも拘わらず、根気よく米国のピーター氏とNOEチームがキャッチボールしながらトータルイメージを崩さずに、私たちの「ゆとりある環境を提供することで、クリエイティブな映像制作に貢献する」というコンセプトを実現してくれました。

最後に弊社の事情から工期を6ヵ月と短縮した中で竣工できたのも、豊富な実績に基づくデータと経験を駆使したNOEのチームワークと情熱があればこそだと思います。特にダビングステージに関しては大船時代よりもコンパクトになりながらも、パワフルで研ぎ澄まされた音場を再現し、またADRにおいてはNC値15という遮音性能を実現してくれました。まさに「次世代の担う機能とデザイン性を兼ね備えたダビングステージ」の誕生です。有難うございました。

1F ADR
1F ADR

7F Audio Suite
7F Audio Suite

7F ADR Booth
7F ADR Booth

7F EDIT
7F EDIT