音空間事業本部 山下 晃一
1. はじめに
ルームチューニング・アイテムのシルヴァン(SYLVAN)・アンク(ANKH)は、プロ用途のスタジオ・放送局から、個人のオーディオルーム・ホームシアターまで、様々な用途でお使いいただいています。最近は楽器練習室からコンサートホールまで、演奏の場でもお使いいただく機会が増えています。今回は楽器演奏での事例を中心にご紹介します。
オーディオルームでのシルヴァン・アンク使用例
2. シルヴァン・アンクがもたらす効果
シルヴァン・アンクは、壁面からの反射音が直接音や反射音相互の位相干渉によって惹き起こす定在波や色づけといった音響障害を低減し、部屋の音環境を整えるルームチューニング・アイテムです。高価なオーディオを聴いているのに、あるいは、素晴らしい音色を持つ楽器を弾いているのに、大きな音を出すと歪んで聞こえたり、音抜けが悪いといった現象は壁面反射の影響といっても過言ではありません。シルヴァン・アンクはこのような壁面による音響障害を改善しますので、ライブすぎて明瞭度が低い部屋でも、デッドで音楽を楽しめない部屋でも効果があります。シルヴァン、アンクのユーザーからは、
- 音場の拡がりや奥行感が出て、音像が立体的になった
- 小さな音までよく聴こえるようになり、音楽に深みが出た
- 躍動感が高まり、音楽を聴くのが楽しくなる
- あたかも目の前で演奏しているかのようなリアリティを感じる
- 大音量でも歪まず、耳が痛く感じない
といった効果があると言われています。オーディオ再生音や楽器演奏音が改善されるだけでなく自分の声や足音が良くなった、という声もお聞きます。実際、放送局のアナウンスブースや銀行のロビーなど直接音楽とは関係ない場所でも使われており、居心地がよく長くいて疲れない、という評価をいただいています。
3. 楽器練習室での効果
楽器練習のための防音室をご自宅に導入される方は、周囲に気兼ねなく演奏できるための防音性能は重視しますが、部屋の音場=響きの重要性は二の次になりがちです。しかし、防音室での悩みをお聞きしますと、響きの改善で解決できることが多いと感じています。防音性能が高い練習室では音が外部に漏れにくい分室内にこもるため、大音量では音が飽和しやすく歪んで聴こえがちです。そのため手加減して演奏したり、歪みを取るために吸音材を多用したところ響かなくなり、響かせようとして強く弾いて体を痛める方さえもいらっしゃいます。こうした環境でも、シルヴァン・アンクを設置することで演奏がしやすくなった、という評価をいただいています。
- 音に立体感が出て、楽器本来の音が感じられる
- 小さな部屋でも広い空間で演奏しているように感じられる
- 練習室とコンサートホールの響きの違いを予測しながら演奏する必要がなくなり、練習に没頭できるようになった
- 楽器の音の芯が聞こえ、自分がどのように演奏しているのかがよくわかる
- 音の粒がクリアで、複雑な和声進行の中で旋律が動く部分でも内声の動きまで聴こえる
- 声を張らずに、自然な発声ができるので疲れない
- 余計な力が抜けるようになった
- 居心地がよく、長時間演奏していても疲れない
楽器練習室での使用例
4. 演奏会での使用例
最近はコンサートでお使いいただく機会も増えてきました。演奏会では、客席にいるリスナーにどのように音が届くかが重要です。コンサート専用に設計されたホールと異なり、多目的ホールや講堂はPA装置の使用を前提とするなど、アコースティック楽器の演奏にとって必ずしも最善とはいえません。また、コンサート専用ホールでも、楽器の構成や配置によっては、シルヴァン・アンクでよりよい環境にするお手伝いが可能です。
東京・春・音楽祭-東京のオペラの森-での使用例
本音楽祭は、「桜の季節に、上野で音楽祭を」という理念のもとに、上野のさまざまな文化施設でひと月にわたって多くの演奏会が開催され、充実したプログラムと美術館・博物館を会場とした「ミュージアム・コンサート」など、文化の街、上野にふさわしい音楽祭として定着しています。昨年は「国立西洋美術館・講堂」と新装なった「東京都美術館・講堂」で開催されたミュージアム・コンサート7公演でアンクが使用されました。「楽器の音に深みが感じられてコンサートホールで聴いているかのように演奏を楽しめた」といった評価をいただきました。また、演奏者の方からも「響きが美しく演奏がしやすかった」という感想をいただきました。
提供 : 東京・春・音楽祭実行委員会 撮影 : 青柳 聡
提供 : 東京・春・音楽祭実行委員会 撮影 : 堀田力丸
ステージ背後壁面の反射による位相干渉を4台設置したアンクによって低減したことでホールの響きの質が高まり、客席で聴いていますと音の情報量が増えて解像度が高まり、楽器や演奏の質の高さがよくわかります。
横浜シンフォニエッタ・コンサートでの使用例
国内外で幅広く活躍する指揮者山田和樹氏及び東京藝術大学卒業生・在学生を中心に結成され、国内のみならず海外でも高い評価を得ている横浜シンフォニエッタの演奏会(2013年1月、青葉台フィリアホール)でアンクが使用されました。客席で聴いていた方にアンク効果の印象をお聞きしました。
- 各パートの音が固まらず、立体的に聴こえる
- 各楽器の一音一音が美しく、表情まで聞き取れる
- クリアさとエネルギー感が両立する
- 音に深みが出て、粒立ちが良く、聴いていて心地良い
- 演奏に没頭できた
演奏者からは「強音時に音が飽和しなくなり、リスクが減って演奏しやすい」といった感想をいただきました。
提供 : 横浜シンフォニエッタ 撮影 : 有田周平
ジャズ・ライブ演奏(Jazz Spot CANDY)での使用例
千葉市稲毛にある「CANDY」は、レコード・CD演奏のクオリティの高さと、内外著名ミュージシャンの演奏を間近で体感できる場所として定評があります。コンクリート打放しの室内にはシルヴァン、アンク、コーナー型アンクが設置され、オーナーはじめミュージシャンやお客様から「音が美しくなり演奏の質が高まった」といった評価をいただいています。
提供 : Jazz Spot CANDY 撮影 : 林美葉子