音空間事業本部 木村 文紀、堀井 理恵、北原 慎也
1. 計画概要
六本木のとあるビルの地下にMA S-1はある。元々、CMや番組制作を主としたMAスタジオであり、コンソールにはSSL 4000G、メインモニタースピーカにはEXCLUSIVE 2402と非常にきめ細やかなモニター環境が構築されており、当然、音場のクォリティも重要視されていた。すぐ隣りの映像編集室を稼働させつつ、システム工事も含め1ヶ月の工期という厳しい条件の下、このプロジェクトは始まった。
2. 音響上の特徴(HD化に伴うサラウンド環境の構築)
番組等のデジタル化に合わせてSSL C-200HDの導入を決め、2chから5.1chサラウンドまで様々なコンテンツ制作に対応できる環境を構築するという明確なビジョンを掲げた。さらにエンジニアミキサーの首藤氏より、2chモニタリングに関してはこれまで聴き慣れたEXCLUSIVEに相応しい音場を作り上げたいとの要望が寄せられた。そこでまず現状の音場を把握するために物理データを採取する音響測定を行い、その上で幾つかの設計ポイントを抽出した。つまり、サラウンド音場に合わせて、既存のスピーカ背面の反射壁の前部を吸音スペースにあて、サラウンドフロントスピーカもビルトインし、ジャージクロス仕上に改造して、2ch及びサラウンドフロント共に音像の輪郭と定位感の更なる向上を目指した。また、左右非対称の部屋形状であるため、ミキサー席左右の側壁のバランスを考慮した音響処理を施した。
アナウンスブースには音響反射面となるガラス窓の大きさを最小化し、部位に応じて低域吸音・拡散・高域吸音を組合せて収録音場の最適化を計った。またマイクアレンジしやすい音場に配慮し、弊社オリジナル低反射テーブルを導入した。
3. お客様の声
これまで不満だった部屋全体のライブ感・低域の音像が増幅していた点が解消され、EXCLUSIVEの良さは残しつつ、低域も膨らみ過ぎずバランスよく制御できた印象。サラウンド環境においてはベースマネジメントまでを依頼したが、自然の響きを活かし電気的な調整をしすぎないようにした点など、我々も勉強になることが多々あった。サラウンドLCRのパンニングもスムーズになった。
スタジオ概要 | |
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工期 | 2009年2月~3月(1ヶ月)システム施工含 |
所在地 | 東京都港区六本木 |
音響システム | 共信コミュニケーションズ(株) |
MA S-1 スタジオ(正面リニューアル後)
バッフル内部音響処理
スタジオ後方
アナウンスブース