音空間事業本部 稲毛 大輔
1. 建物概要
浅草・雷門にある新築オフィスビルへのキッチンガイズファクトリー事務所移転に伴い、同社の音楽・アニメーション制作のためのスタジオ『Studio 696』を施工した。
構造は鉄骨地上10階建ての一般オフィスビルで、スラブ-スラブ間(階高)は約3m。8階にコントロールルーム、ブースを1部屋ずつ設けた。ビルは幹線道路に面しているが、スタジオ階が高く、且つ既存窓として複層ガラスの気密サッシが使用されており、外部騒音に対する遮音性能は確保された建物であった。
2. 音響上の特徴
ブースの音場は、アフレコやラジオの収録、バンド録りなど、使用目的が多岐に渡るため、吸音し過ぎず、ある程度拡散性のある自然な響きとなるように、吸音トラップと拡散トラップをバランス良く吸音層内に配置した。また、オーナー自身がバンド活動を行っていることもあり、取外し式の拡散板を導入して、ライブ感のある音場に調整できる仕様とした。
上下階はオフィスであり、低域の固体音伝搬が懸念されたため、両室ともに防振ゴムによる浮床構造を採用した。(遮音性能;45dB/63Hz)。
また、建物は天井高が低いため、薄い吸音層内での吸音・拡散処理を行うことで天井高(2.4m)を確保した。室内騒音は空調(強)・換気設備が稼動している状態で両室ともNC-15以下で、コントロールルームにおいても生楽器を録音できる環境に作り上げた。
各室入口手前の床には、器材搬入を考慮した木製の上げ床・スロープを施工。壁と床との取合い部分は完全に縁を切り、床上部には隙間にコンクリートブロック及び空練りモルタル・珪砂を混ぜたものを詰め、空洞による箱鳴り防止処理を施している。
3. お客様の声
ブース後壁に計画した「赤い」音響反射板がドラム録音に思いの他有効で、ドラム収録直後、「すごくイイドラムが録れた」とわざわざお喜びのお電話を頂きました。
工事概要 | |
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工期 | 2008年12月~2009年3月 |
内装工事 | 日本音響エンジニアリング(株) |
配線工事 | (株)ブレインミュージック |
所在地 | 東京都台東区 |
コントロールルーム
ブース
ブース(左壁の赤い板が拡散板)
ミーティングルーム