騒音対策事業部  光枝 太一  平田 武士

1.はじめに

騒音対策事業部は、工場・事業場における施設稼働音による敷地境界や近隣への影響度合いの検討、工場内の作業環境改善など数多くの業務に携わる。また、2021 年に音空間事業本部とソリューション事業部の流れを汲み発足した事業部としての背景から、騒音対策コンサルタントだけでなく、設計、騒音対策工事まで一貫した体制を築く日本有数の事業部である。
本稿では、企業コンプライアンス重視の企業様へ当事業部が実施した事例を紹介する。

   

2. 工場の対策の近況と対策検討

本件は、24 時間稼働する工場で夜間に敷地境界線上で規 制値を少し超えていたため当事業部へご相談があった。対策前 の調査により、図 1 の▲に示すように民家に最も近い敷地境界線上で 100Hz,125Hz にピークを持つ周波数特性となっていた。

図1 敷地境界線上の測定結果(▲ : 対策前、■ : 対策後)
図1 敷地境界線上の測定結果(▲ : 対策前、■ : 対策後)

現地での測定データを用い、工場の現状をシミュレーション検討によりどの設備機器の影響が大きいか予測を行った。解析の様子を図 2 に示す。

図2 シミュレーション検討の様子
図2 シミュレーション検討の様子

予測結果より、近隣に近い位置に設置されている高圧キュービクル、施設最上階の機械室や施設の奥にあるが建物間を抜けて届いているコンプレッサー室給排気口からの放射音が影響していることが分かり、これらを対策できれば敷地境界に対する影響を下げられると考え、それぞれ施工可能な対策案のシミュレーション検討を行った。 これらの対策案を反映した対策シミュレーション結果をお客様に報告し、段階的に対策を行う方針となった。

 

3.対策工事

  

対策を実施した部位の様子を図 3、図 4 に示す。

図3 換気サイレンサー設置の様子
図3 換気サイレンサー設置の様子
図4 防音壁設置の様子
図4 防音壁設置の様子

対策工事施工後に測定を行った結果を図 1 の■に示す。測定結果では、影響の大きかった 100Hz で 10dB 以上、125Hzで 5dB 以上減衰した。また、低音域の対策を行ったため、広範囲にわたり減衰していることが示されている。

4. おわりに

騒音対策コンサルタントのみや対策工事のみを行う企業は多々あるが、測定・検討・設計・工事まで一貫して行える会社は多くない。また、当事業部は自社製の騒音予測シミュレーションにより現状の把握、対策検討案の効果量予測を行えるため、予算毎の段階的な効果予測なども提案できる。このシミュレーションの予測精度が当事業部の強みであり、過剰な対策ではなく適切な対策案を提案することで費用も抑えることができる。

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