騒音対策の検討方法

ソリューション事業部 騒音環境改善チーム 青木 雅彦

1. はじめに

当社は多くの工場のお客様から騒音対策のコンサルティングをご依頼いただいています。騒音対策の検討には、音の基本的な特性に基づいた考え方が必要です。また、よりスピーディーで信頼度の高い検討には高度な技術力が必要です。そこで騒音対策の考え方と当社の検討方法、及び検討上の課題の一つをご紹介します。

2. 騒音対策の考え方

工場には多数の騒音源があり、対策を検討するためには影響の大きい騒音源を特定する必要があります。また、対策後の騒音状況を予測するためには、影響の比較的小さい騒音源にも着目する必要があります。

工場の騒音状況のモデルを図1に示します。

図1 工場の騒音状況のモデル図
図1 工場の騒音状況のモデル図

騒音計を用いた敷地境界の測定では各騒音源からの影響は特定できませんが、ここでは図1に示す寄与を仮定します。対策の検討過程を分かりやすくするため、図1に示す状況と対策後の予測値を下記の表1に示します。

表1 工場の騒音状況のモデルと対策後の推定
表1 工場の騒音状況のモデルと対策後の推定

表1をご覧いただくと、対策前は敷地境界において①~③の騒音源の影響は合計約60dBです。騒音の計算では、53dB+58dB+51dBは60dBになります。また、その他の設備群と環境騒音を加えても計算上は60dBのままです。対策後には騒音源①から③の合計が約48dBとなりますが、その他の設備群と環境騒音を加えると約50dBになります。つまり、騒音の大きい騒音源だけしか考慮しない場合は、対策後の予測値が小さめとなり、危険側の予測となるため、対策効果の検討時には注意が必要です。

3. 影響の大きい騒音源の特定

騒音対策では、対策が必要な騒音源、つまり影響の大きい騒音源を特定することが重要です。しかし、敷地境界で個々の音源の騒音値を直接測定することができないことが多いため、騒音の距離減衰特性に基づき、騒音源近傍で測定した騒音値から敷地境界への影響を予測します。

図2 騒音の距離減衰特性
図2 騒音の距離減衰特性

騒音は、音源が点と見なせる場合には距離が2倍になると約6dB減衰します。この特性から、騒音源近傍の測定値を用いて敷地境界への伝搬を予測することが可能です。ただしこの方法では、騒音発生部位(放射面)の面積が大きな騒音源の影響を過小評価してしまう危険があります。

図3 騒音の放射面積の影響
図3 騒音の放射面積の影響

図3に示すモデルの場合、外壁と比べ窓の遮音性能が低いため、工場の外部近傍では窓からの透過音が大きくなります。しかしある程度距離が離れると、壁の面積が窓と比べてかなり大きいため、壁全体からの透過音の影響が窓よりも大きくなります。このように、騒音の放射面積が大きい壁、屋根、あるいは大型の設備機器等からの騒音伝搬については騒音発生部位の面積を考慮する必要があります。

4. 音源探査とシミュレーションによる対策検討

前述のとおり、敷地境界に対して影響の大きい騒音源を特定する事はかなり大変な作業です。当社ではスピーディーな測定のために、自社開発した音源探査システム"Noise Vision(ノイズビジョン)"を使った騒音源のスクリーニングを行っています。

図4 ノイズビジョンの測定風景と分析結果例
図4 ノイズビジョンの測定風景と分析結果例

上記は敷地境界近傍にノイズビジョンを設置し、騒音の発生位置(この場合はバルブ)を特定した結果です。ノイズビジョンを設置して10分後にはこのような分析結果画像をノートPCのモニター画面で確認することができます。この音源探査測定により、敷地境界等から直接影響の大きい騒音源を可視化することが可能です。

また、騒音対策の効果を予測するために、当社では自社開発の騒音予測ソフトウェア"GEONOISE(ジオノイズ)"を使ったシミュレーション検討を行っています。

図5 ジオノイズによる予測検討モデルと騒音分布計算例
図5 ジオノイズによる予測検討モデルと騒音分布計算例

騒音の伝搬を予測する場合、距離減衰、音源の面積以外にも反射音、回折音(塀、建物等を回り込む現象)を考慮する必要があります。多数の騒音源の影響を予測するために、シミュレーション検討は必須の作業です。当社ではより信頼度の高いシミュレーション検討を目指して自社ソフトの改良を続けています。

5. 対策効果検討の課題

対策効果の予測精度を上げることはとても重要な課題ですが、そのために騒音状況が定常かどうかは大きな問題の一つです。図6に6か所の工場で実測した敷地境界の騒音(交通騒音等の影響を受けにくい時間率騒音レベルLA95)の24時間の変動状況を示します。

この6か所の工場では、お客様から工場の騒音は定常だとお聞きしていましたが、実際には2dBから7dBの変動がありました。最も変動の大きかった1工場(変動幅7dB)を除いても、5か所の工場の騒音変動幅は2dBから4dB、平均は約3dBでした。

図6 工場敷地境界の騒音変動状況
図6 工場敷地境界の騒音変動状況

騒音対策を検討する場合、シミュレーションで音源として設定するために数十から数百の騒音源を調査します。そのため個々の測定時間は数分程度となり、個別にすべての騒音源の変動状況をその場で把握することは困難です。

設備等から発生する騒音に平均3dBの変動があり、測定時がたまたま変動の中央であったとすると、測定値よりさらに1.5dB程度騒音が大きくなる可能性があります。仮に騒音対策の目標値を満たすために高さ5mの防音壁が必要な場合、騒音源が1.5dB大きくなると、騒音源と敷地境界の位置関係にもよりますが、目標値を満たすためには防音壁の高さが7m必要となる場合もあります。したがって、少なくとも騒音源の変動状況を確認した上で検討を行う必要があります。

6. おわりに

騒音レベルの時間変動以外にも、対策効果の検討にはさまざまな課題があります。しかし、きめ細かい検討を抜きで騒音対策を実施することは設計図のない工事と同等の大きなリスクを伴います。私たちは騒音対策のリスクを減らすため、経験を活かし、技術力を高めることで、課題を改善し、コンサルティングの品質を高めたいと考えています。

おすすめの記事

■ 製品サービス

■ 技術ニュース