工場の騒音対策の前に 対策に必要な音源のスクリーニング

コンサルティング事業部 小池 宏寿

1. はじめに

工場騒音の対策では、まず評価点での騒音値と規制値との関係を明らかにし、次に評価点に対して最も大きな騒音源の抽出を行い、そしてそれに対して「最も効率のよい対策」が施される事が重要です。

騒音源を抽出すること、私どもはこれを「騒音源のスクリーニング」と呼び、対策前の最重要検討事項としてノイズビジョンを用いて実施しています。騒音源のスクリーニングを行わないで、無数にある騒音源を検討することは、時間と労力が無駄になるばかりか、各音源の寄与の確認もできないため、対策方法も安全策となりがち(クライアント側からみては無駄)になってしまいます。

見えない音を「見える化」できるノイズビジョンを使い、騒音源のスクリーニングを行う事がこれからの新しい騒音対策の方法と言えます。

2. 作業環境騒音の改善

工場では原料とともに、日夜生産ラインを稼動させるために必要な電力は欠かせません。今回ご紹介させていただく事例では、工場全体の電力を安定供給・確保するために、工場敷地内の一角に自家発電設備を設置していました。

この建物の室内では実際の工場の生産ラインではないので、常時作業される作業員の方はいらっしゃらないのですが、ヘッドホン型防音保護具(図1参照)がないと耐えられないほど騒音が大きく、騒音レベルで約105dBありました。また作業がないとはいっても、発電機の運転状況の変更、メンテナンスなどで室内に入る場合もあるため、意思疎通が通常の方法(声)でできない状況は問題となっていました。そこで今回は、防音保護具をはずせる段階(第Ⅱ管理区分)まで騒音を低減させる方法を検討するために、まず機械本体の騒音源の大きな箇所の探査を行いました。

図1 ヘッドホン型防音保護具/拡大図
図1 ヘッドホン型防音保護具/拡大図

作業環境測定結果と管理区分の例(労働安全衛生規則)
B測定値
85dB未満85-90dB90dB以上
A測定平均値 85dB未満 第Ⅰ 第Ⅱ 第Ⅲ
85-90dB 第Ⅱ 第Ⅱ 第Ⅲ
90dB以上 第Ⅲ 第Ⅲ 第Ⅲ
※第Ⅰ管理区分... 作業環境の継続的維持。
※第Ⅱ管理区分... 標識による明示等、作業環境を改善し、第Ⅰ管理区分になるよう努力する。
必要に応じ、防音保護具の着用。
※第Ⅲ管理区分... 標識による明示等、作業環境を改善し、第Ⅰまたは第Ⅱ管理区分になるようにする。
防音保護具の着用と、その旨の掲示。
※A測定とは、作業場所の測定点を任意の基点を軸として6m以下のメッシュ状に測定を行う。
※B測定とは、作業者が音源に近接して作業を行う場合、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間、位置で測定を行う。

実際に建物の中で測定・分析した結果を図3に示します。これをみると、左側の設備機械の影響が大きい事がわかります。そこで、さらにその設備機械に近寄って測定を行いました。(図4)

図4をみると、機械の中心部分で、ケーシングされていない軸の部分が最も大きな騒音源となっている事が分かりました。今後の対策としては、この部分のケーシングなどが有効であり、どの程度軽減できるかシミュレーション計算で確認することができます。

図2 ノイズビジョン測定風景 図2 ノイズビジョン測定風景
図2 ノイズビジョン測定風景

図3 自家発電施設建物内部での分析結果その1 図3 自家発電施設建物内部での分析結果その1
図3 自家発電施設建物内部での分析結果その1

図4 自家発電施設建物内部での分析結果その2
図4 自家発電施設建物内部での分析結果その2

3. 敷地境界付近の騒音対策

騒がしい自家発電機施設の外に出て、今度は自家発電機施設の騒音が敷地境界でどのような影響を与えているか調査を行いました。外壁は遮音性能の高いコンクリートでできていたので、調査を行う前に最も怪しい箇所として考えていたのは、騒音の大きい室内と外部をつなぐ排気口(図5)でした。

ノイズビジョンを敷地境界に設置し、測定・分析した結果を図6に示します。図6をみると自家発電機施設では排気口でなく、建物下の壁面に騒音の大きい箇所が表れ(図6左)、またノイズビジョン設置場所近くの建物からの反射の影響(図6右)も表れていました。

図5 自家発電施設外部の排気口/拡大図
図5 自家発電施設外部の排気口/拡大図

図6 敷地境界周辺分析結果その1・自家発電機建物 図6 敷地境界周辺分析結果その1・壁面の反射
図6 敷地境界周辺分析結果その1

実際に自家発電機施設壁面から音が透過しているのかどうか確認するために、さらに音源側に近寄って測定を行いました。その結果を図7に示します。

図7 敷地境界周辺分析結果その2・排気口 図7 敷地境界周辺分析結果その2・建物壁面
図7 敷地境界周辺分析結果その2

図7をみると、建物壁面と排気口の二箇所に騒音源の大きな箇所があることが分かりました。敷地境界側で排気口からの影響が表れなかったのは、音源の指向性(排気口の形状)によるものと考えられます。なお建物壁面に現れている音源は、隣接しているクーリングタワーの騒音(図7)が自家発電機施設壁面に反射して表れていることが後に分かりました。

ノイズビジョンを用いることで主な騒音源が明らかになりました。対策の概要はある程度この結果から想定することはできますが、対策の効果を精度よく推定するためにはシミュレーション検討が必要になってきます。

図8 クーリングタワーの測定風景(平面型アレイ)(上)と分析結果(下)
図8 クーリングタワーの測定風景(平面型アレイ)(上)と分析結果(下)

4. おわりに

対策を行う前段階として、騒音源のスクリーニングをご紹介しました。音源自体だけでなく、反射の状況なども明らかにできるため、応用すれば吸音する場合の効果なども想定することも可能です。今後さらに音源探査の技術を有効活用させることで、迅速かつ正確な騒音対策のご提案ができるものと考えております。