騒音対策事業部  青木 雅彦

1.はじめに

騒音対策の検討・工事業務は近隣からの苦情対応が多いため、具体的な内容を写真等でご紹介できないケースが多い。そこで最近の検討・対策例の概要のみをご紹介させていただく。

   

2. 宿泊施設の空調室外機の騒音対策

                       
主な騒音源対策前/規制値対策後 
空調室外機65dB(A)/50dB(A) 49dB(A)

①対策前の状況
宿泊施設竣工後に近隣から騒音の苦情があり、地方公共団体で測定を実施したところ、夜間の規制値を最大で15dB 超えていた。原因を調べたところ、空調室外機がデフロスト(霜取り)モードで稼働すると騒音が大きくなり、規制値を超えていることがわかった。
②調査・検討
対策案として室外機置場に防音パネル設置、敷地境界に防音壁設置、室外機の移設等の案について対策効果を検討した。しかし各案とも効果が不十分で、夜間の規制値を満たさないことが予想された。
③対策
そこで室外機置場を壁で塞ぎ、規制値を満たすために必要な吸排気口の消音器の減音量をシミュレーションで検討し、対策案の仕様が決定した。対策後の測定結果は49dB(A)となり、夜間の規制値50dB(A)以下となった。

             

3. 工場の煙突の騒音対策

                       
主な騒音源対策前の特定の音色対策後の特定の音色
煙突(ファン)49 ~ 50dB39dB

図1 対策のイメージ
図1 対策のイメージ
                  

①対策前の状況
工場で大型ファンを更新したところ、近隣から騒音が気になるとの訴えがあり、工場側で測定したところ、ファン更新前後で騒音レベルに変化はなかったが、数百Hz 付近の特定の音色の騒音にピークがあり、更新前と比べて10dB 程度大きくなっていることがわかった。
②調査・検討
特定の音色の騒音はファン建屋や煙突に接続されたダクトからも発生していたが、調査結果から近隣に伝搬している主な騒音は煙突から放射していると判断した。
③対策
そこでダクトに設置する大型の消音器を設計・製作し納品した。消音器設置後に測定を実施したが、周辺地域で聞こえていた特定の音色の騒音は10dB 程度低減し、聞こえなくなった。

 

4. 保育施設の空調室外機の低周波音対策

                       
主な騒音源対策前(民家室内)対策後(民家室内)
空調室外機54 ~ 58dB(80Hz)33 ~ 35dB(80Hz)

図2 対策のイメージ(赤色が室外機と防音壁)
図2 対策のイメージ(赤色が室外機と防音壁)
                  

①対策前の状況
保育施設で空調室外機が稼働すると、隣接した住宅内に低周波音を含む騒音が伝搬し問題となっていた。
②調査・検討
設備稼働時に室内で80Hz の低周波音のピークが卓越していた。低周波音の規制値はないが、シミュレーション検討の結果、室外機を移設し、さらに防音壁を施工すれば、80Hzのピークがなくなり問題が解決すると判断した。
③対策
工事後に民家室内で測定を行ったが、80Hz の低周波音は19dB ~ 24dB 低減してピークがなくなり、問題は解決した。

図3 防音壁の施工例
図3 防音壁の施工例
 

5. 工場の作業環境騒音の対策

                       
主な騒音源対策目標/保証値施工後の効果
集塵機(複数)‒7dB(A)/‒5dB(A)‒5dB(A)

                  

①対策前の状況
工場内の作業環境騒音を改善するため、多数の騒音源のなかで先ず複数の集塵機を対策することになった。
②調査・検討
対策方法を検討した結果、複数の集塵機をまとめて防音壁で囲う対策が候補となった。反射音の影響で、屋内の防音壁は、屋外と比べて対策効果が小さくなるが、シミュレーションで効果を推定し、実施が決まった。

図4 作業環境騒音の防音壁シミュレーション例
図4 作業環境騒音の防音壁シミュレーション例

③対策
対策後の効果は−5dB(A)で、保証値は満たしたが目標値には届かなかった。原因を検討したところ、防音壁を貫通する配管の影響と、設備振動による防音壁からの騒音放射(固体伝搬音)の影響が主な原因であると判断し、工場側に報告した。

 

6. 宿泊施設の空調室外機の騒音対策2 

                       
主な騒音源対策前/規制値対策後
空調室外機その他54dB(A)/45dB(A)45dB(A)

                  

①対策前の状況
宿泊施設竣工後に近隣から騒音の苦情があり、測定を実施したところ、夜間の規制値45dB(A)を最大で9dB 超えていた。原因を調べたところ、空調室外機の低騒音モードが解除され、騒音が大きくなる時があることがわかった。
②調査・検討
多数の室外機等の騒音源があるため、測定時に一部の室外機をモニターし、室外機の稼働状態と発生音の関係を調べた。その結果からシミュレーションで様々な室外機の発生音の組合せを想定し、防音壁と消音器、防音カバーの組合せを検討し、対策案を決定した。
③対策
対策後に測定を行い、宿泊施設以外の騒音(交通騒音等)を除外音処理したところ、敷地境界の夜間の騒音は最大でも45dB(A) となり、規制値以下となった。

 

7. 冷凍機の騒音(固体伝搬音)対策

                       
主な騒音源対策前(平均)対策後(平均)
冷凍機(複数)57dB(A)44dB(A)

                  

①対策前の状況
ある施設の室内で平均57dB(A)、最大63dB(A) の騒音が発生しており、その室の用途上、50dB(A) 以下まで低減する必要があった。
②調査・検討
振動対策のエンジニアリング会社と調査を実施したところ、隣接した機械室に設置されている冷凍機の振動が躯体に伝わり、室内で騒音となって放射する固体伝搬音が原因だと推定した。そこで冷凍機の下に防振装置を設置することで対策が可能と判断した。
③対策
対策工事後に測定を実施したところ、天井配管からの騒音の影響が残る1 室を除いて、3 室の平均で13dB(A) の低減効果があり、目標とした50dB(A) 以下となった。天井配管については別途遮音対策を行うことになった。

8. 計画段階での騒音対策

ここまでは実際に問題が発生した現場での対策検討事例をご紹介したが、当社では計画段階で騒音影響を予測し、対策案を検討する業務も行っている。具体的には工場、発電所、ごみ焼却場、スタジアムなど、様々な施設から発生する騒音の影響を予測してきた。
この検討は騒音問題の発生を未然に防ぐことができ、問題が発生してから対策を行うよりもコストを抑えられる。しかし実際には騒音問題が発生してから当社にご相談をいた だく事例が多く、対策手法、スペースなど制約の多い中で対策案を検討する場合が多い。対策検討・工事には時間がかかり、近隣への影響も長引く。そのため、計画段階での騒音検討をもっと利用していただければと願っている。

図5 計画段階での騒音シミュレーション例
図5 計画段階での騒音シミュレーション例

最後に、今回ご紹介した対策は株式会社スペースウエアー様(特に検討・対策の2,3,6)、特許機器株式会社様(同7)に大きく助けていただいたおかげでここまで対策できている。今回ご紹介した以外の対策も含めて、いつも強力なサポートをいただいていることに心より感謝申し上げます。

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