音空間事業本部 津金 孝光  騒音対策事業部 平田 武士

1.はじめに

無響室の吸音構造は多種ありますが、吸音材を山形とした吸音構造は通称「吸音楔」と呼ばれ、音圧反射率を抑えられる吸音構造として長けており、また歴史のあるものとなります。
吸音楔はコーティングされた細い鉄線でフレームを作り、中には吸音材を充填し、外側を透過性が高いクロスで保護する形が一般的ですが、今回そのフレームを排除した新しい吸音楔を開発しましたのでご紹介します。

   

2.新型フレームレス楔とは

フレームがあることにより、吸音材の形状の確保がしやすいものの、デメリットとして細い鉄線であっても音の反射物になる点や鉄線の重量が吸音楔に加わる点があり、フレームを無くすことができれば、そのメリットは大きなものとなります。
新型フレームレス楔は、従来の吸音楔と同じ要素を踏襲しながら、フレームを除去した新しい吸音楔として完成しました。特殊加工により吸音楔の形状を保持し、フレームを無くすことにより音の反射面を従来品より大きく減らし、吸音楔の軽量化も達成されました。また建築基準法における不燃材料認定を取得しています(特許申請中)(写真 1)。

写真1 新型フレームレス楔の外観
写真1 新型フレームレス楔の外観
 

3.無響室への新型フレームレス楔の適用

  

当社の音響研究所は無響室を所有しており、長さ 600mm の従来の吸音楔を採用していましたが、今回当社の無響室を 改修し、この新型フレームレス楔を自社の無響室に適用しまし た(写真 2)。改修後、無響室の自由音場範囲を確認する逆 二乗則特性の測定を行うことにより検証を行いました。結果は、従来の吸音楔によるものと同等の測定結果が得られ、また聴感 による無響感は向上していると言えるものとなりました。

写真2 新型フレームレス楔を適用した当社無響室
写真2 新型フレームレス楔を適用した当社無響室

4. おわりに

この新型フレームレス楔により、我々は更なる新しい付加価値のある無響室をご提供できますので、是非ともご期待ください。

おすすめの記事