G邸 リハーサルルーム

音空間事業本部  平田 昌之  福満 英章

   

概 要

ピアノ演奏と声楽を嗜む施主からの要望は明確だった。眼下に広がる眺望を楽しみながら、長時間過ごす事の出来る音響空間を希望された。
計画は物件を探すことろから始まった。眺望と交通の利便性が良いことに加えて、気兼ねなく音を愉しめる環境が構築できることを最優先に、条件に見合う部屋と出会うまでに約1年かかった。
音響空間の検討が進められる中、1958年ブリュッセル博覧会で展示されたものと同型の貴重なピアノを、施主の信頼する調律師の手により、製造された時代に迄時間を戻し、そこから現代に通用するコンディションに蘇えらせるというプロジェクトも同時に進行していた。
室内意匠はカラーを明るめのトーンとし、床の材質・色合い迄拘り、ピアノを主役に据えたいという理想が貫かれた。特異な部屋形状であったため、天井の吸音面・反射面の配置とともに、演奏者の位置迄まで綿密に検討した。壁の吸音面には低域まで処理できるようにファブリック越しに空気層を設け、反射面には厚めの珪藻土を塗り、柔らかな反射と拡散の効果を狙った。
遮音性能も確保しなければいけないが、眺望を遮らない事にも配慮し、天井から床面に及ぶ大きなガラス面は十分な空気層を設けた2重構造とした。施主や調律師の方からも" 響きの良い室内環境" と高評価をいただいた。

眺望の良い高層マンションの一室に計画
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天井面の音響処理
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ベーゼンドルファー社の貴重なピアノ
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