騒音源の特定における連続静止画システムの活用

DL事業部 和田 浩志、水野 貴宏

1. 騒音源特定における調査の現状

苦情の要因を突き止めたい、労働環境の改善をしたい等様々な理由で、騒音の発生源を特定したいという要望は、騒音・環境分野に携わる多くの方が抱えているものと思います。また、騒音測定を実施したが、騒音源の特定までは至らなかった、という経験がお有りの方も多いのではないでしょうか。

騒音源特定の手法として、まずは時々刻々の騒音レベルを連続的に記録し、騒音レベルの変動波形により推定する手法が考えられます。最近では騒音計単体でも内蔵メモリやSDカード等に騒音レベルを記録することが可能となっていますので、このような騒音測定を実施することは難しいことではありません。しかしながら、騒音レベルの変動の様子だけで、騒音源を特定することは困難です。

図1 騒音レベル変動波形だけでは騒音源の特定は難しい...
図1 騒音レベル変動波形だけでは騒音源の特定は難しい...

そのため、騒音源の特定を行いたい場合、騒音レベルを記録すると同時に、音声信号を録音しておき、後から騒音発生時の音を人が聴取して、その大きさや音の高さ、音色などから騒音源を推定する手法が一般的です。

図2 音声信号から騒音源を推定する
図2 音声信号から騒音源を推定する

この手法はイニシャルコスト、ランニングコストともに比較的安価に実現できるうえ、人の耳で直接確認できるという点で優れているといえます。

しかしながら、たとえば工場内など多様な騒音源が存在する場所でこのシステムを使用した場合、少し事情が変わってきます。騒音レベル変動波形と音声信号だけを用いて、様々な音源の中から問題となっている騒音源を特定するためには、データを確認する人がその場所を詳細までよく知っている必要があります。測定地点にどのような機器や施設があり、どのような作業が行われ、また、どのような時間帯にどのような車や人やモノが出入りするのか、これらを熟知していることが、騒音源特定には欠かせない情報となるためです。また、施設を熟知した人であっても「フォークリフトを操作している際の騒音であることまではわかるが、どういった作業の最中に発生している騒音かまではわからない・・・」というような悩ましいケースも多々見られます。

このような諸問題を解決する手法として開発されたものが、今回ご紹介する連続静止画システムです。

2. 連続静止画システム

このシステムは、騒音レベルと音声信号に加え、監視対象となる現場の画像を数秒間隔で記録し、騒音レベル変動波形や音声信号と併せて、騒音発生時の画像を確認するという手法により、視覚的要素を含めた騒音源の特定を可能としました。

右ページの図4では、騒音レベル変動波形(図3)の中に示されている、13時42分ごろに発生した騒音の音源特定を行った例を示しています。この時刻の音声信号の聴取により、金属同士がぶつかり合うような音が確認できたものの、その発生源が何であるかまでの特定は困難でした。しかしながら、連続静止画システムで記録された画像を確認すれば、リフトが金属製のケージを持ち上げ、運搬し、別の場所に置く際に発生した騒音であったことが一目瞭然にわかります。このように騒音レベルとその時刻の画像を併せて確認することで、騒音の発生源が誰の目にも明確になり、的確な騒音対策を行うことが可能となります。

図3 騒音レベル変動波形例
図3 騒音レベル変動波形例

図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例
図4 連続静止画例

3. システム構成

連続静止画システムは、市販のメーカー製セキュリティカメラを組み込むことで、リーズナブルな導入コストで騒音レベルと連動した画像の記録を実現しています。システム構成例を図5に示します。

図5 システム構成例
図5 システム構成例

騒音レベルと音声信号を記録するための騒音計、全天候防風スクリーン、マイクロホン延長ケーブルと、画像を撮影するためのセキュリティカメラ、耐候性カメラハウジング、PoEと呼ばれる、通信ケーブル(LANケーブル)を介して電源を供給する技術に準拠したスイッチングハブ、測定結果及び記録画像を蓄積するためのデータ収録装置(ノートPC等)で構成されます。

騒音計のマイクロホンは延長ケーブルを用いることにより最大100mまでの延長が可能ですし、セキュリティカメラはPoEによりLANケーブル経由で電力が供給されるため、測定地点への電源ラインの供給が不要となり、設置が非常に容易となっています。そのため、システムをこれまでとは違う場所に移設する場合でも、迅速かつ安価なコストでの対応が可能です。

また、収録された連続静止画データを確認するソフトウェアも、直感的にわかりやすく、容易に取り扱えるものとしました。次頁の図6に示すように、騒音レベル変動波形にマウスポインタを合わせると自動的に対応した時刻の画像が表示されます。このように直観的で使い勝手のよいインターフェイスを備えたソフトウェアを使用いただくことにより、少ない手間で効率的にデータを確認いただくことができます。

図6 ソフトウェア動作イメージ
図6 ソフトウェア動作イメージ

このように、実際にシステムを利用する方の視点で設計しておりますので、普段、騒音監視業務をメインとされていない担当者様でも、十分にご活用いただけるシステムとなっています。また、周辺住民の方など、音響的な専門知識をお持ちでない方を対象とした、対外的な説明を行う際にも非常に有効なツールとなると考えております。

また、連続静止画システムの特徴として、夜間など、暗い場所での撮影性能の高さが挙げられます。前述の通り、このシステムのポイントである画像の撮影には、市販されているメーカー製セキュリティカメラを使用しています。昨今のデジタルセンサーの技術進歩は目覚ましく、夜間撮影においても、かすかな光があれば非常に鮮明な画像を高解像度で撮影することが可能となっており、夜間時間帯の騒音監視にも力を発揮します。

図7は図4で示した連続静止画と同様の場所で夜間に撮影された画像の赤枠内を拡大したものです。画面奥に小さくしか映っていませんが、高解像度で記録されているため、中央奥に停車しているトラックの前をリフトが通過する状況をはっきりと確認することができます。

図7 連続静止画例(夜間)
図7 連続静止画例(夜間)

さらに、本システムに組み込むカメラは、1台のデータ収録用PCに対して、複数台の使用が可能です。そのため、1台のカメラでは監視しきれない場合や、複数地点の監視を同時に行いたい場合など、システムの拡張が必要になった場合にもシステム全体をもう1式追加するのではなく、カメラの追加のみで対応可能です。

4. システムの発展性

本システムは、工場騒音を対象として開発されましたが、それ以外の用途で用いることも可能です。例えば航空機騒音の測定に用いる場合、これまでは人員を常駐しての目視調査でしか成し得なかった、機種の特定を可能とします。

図8は航空機が飛行する様子を撮影した一連の連続静止画で、これを確認することにより、機種の判別が可能になります。なお、この航空機は一部メディア等にも取り上げられることのある、MV22オスプレイという機種です。このような画像を1便毎に得ることにより、離陸・着陸の別、滑走路運用方向、離陸後の旋回方向はもちろん、これまでは難しかった航空機の機種確認が可能となります。

図8 連続静止画例(航空機) 図8 連続静止画例(航空機) 図8 連続静止画例(航空機) 図8 連続静止画例(航空機)
図8 連続静止画例(航空機)

5. 今後にむけた開発計画

静止画での確認によって、視覚的な要素を含んだ騒音源の特定が可能となりましたが、複数の騒音源から同時に騒音が発生するような場合は、視覚的な要素を含んでも特定するのが難しい状況が考えられます。そのような状況下における騒音源の特定手法として、弊社がこれまで航空機騒音の自動測定装置として用いてきた、音源探査識別装置(詳細は技術ニュースNo.34、No.37を参照ください。)と連動させることを計画しています。

図9 音源探査装置分析結果例
図9 音源探査装置分析結果例

図9ではセンサー南西方向から北東方向へ上空を通過した航空機の騒音を音源探査装置が捉えた例を示しています。この音源探査識別装置は複数の音源があった場合でも、最も寄与の高い騒音の到来方向を視覚的に捉えるもので、この結果を、今回の連続静止画システムとあわせることにより、図10に示したような誰の目にもわかりやすく、革新的なシステムが実現可能と考え、現在、鋭意開発を行っています。

図10 連続静止画における騒音源の「見える化」(イメージ)
図10 連続静止画における騒音源の「見える化」(イメージ)

6. おわりに

今回ご紹介した連続静止画システムは、工場内で不規則に発生する騒音源を特定したいという相談を受けたことから開発したものであります。この技術を応用することにより、工場騒音だけにとどまらず、道路騒音の除外音の検出や、航空機騒音の機種特定、新幹線騒音の列車速度算定にも利用できるものと考えています。今後も皆様のニーズに合わせて、さまざまな利用方法を検討していく所存であります。また、皆様へのデモンストレーションを行うための準備をしておりますので、お気軽にご相談ください。

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