木造住宅ピアノ室のご提案 遮音性能の実測データより

音空間事業本部 佐古 正人

1. はじめに

ピアノの演奏をされる方が、一番長い時間ピアノを弾く場所はご自宅ではないでしょうか。また、ご自宅といっても、集合住宅や、戸建ての木造住宅であるなど条件は様々ですが、やはり最も気になるのは近隣や家族への音漏れの心配ではないでしょうか。

この問題を、たとえば木造住宅に限って考えてみますと、コンクリート造とは違い大きく音漏れがするイメージをお持ちではないかと思います。また、防音工事を行ってもどこまで防音できているのか、どのくらい周囲で聞こえているのか等、気になるのではないでしょうか。

当社は音に関連する部屋を作って40年を超える実績があります。その中で最近、設計施工させていただいた木造住宅におけるピアノ室の実績の中から、その測定データなどを元に、どの程度の防音性能があるのかご説明させていただきます。

図1 室間平均音圧レベル遮音等級と住宅における生活実感との対応例
遮音等級 D-65 D-60 D-55 D-50
ピアノ・ステレオ等の大きい音 通常では聞こえない ほとんど聞えない かすかに聞える 小さく聞える
テレビ・ラジオ・会話等の
一般の発生音
聞えない 聞えない 通常では聞えない ほとんど聞えない
生活実感・プライバシーの確保 ピアノやステレオを楽しめる
機器類の防振は不可欠
カラオケパーティ等を行っても問題ない
機器類の防振が必要
隣戸の気配を感じない 日常生活で気がねなく生活できる
隣戸をほとんど意識しない
遮音等級 D-45 D-40 D-35 D-30
ピアノ・ステレオ等の大きい音 かなり聞える 曲がはっきりわかる よく聞える 大変よく聞える
テレビ・ラジオ・会話等の
一般の発生音
かすかに聞える 小さく聞える かなり聞える 話の内容がわかる
生活実感・プライバシーの確保 隣戸在宅の有無がわかるがあまり気にならない 隣戸の生活がある程度わかる 隣戸の生活がかなりわかる 隣戸の生活行為がよくわかる
遮音等級 D-25 D-20 D-15 備考
ピアノ・ステレオ等の大きい音 うるさい かなりうるさい 大変うるさい そのまま聞える 音源から1mで90dBA前後を想定
テレビ・ラジオ・会話等の
一般の発生音
はっきり内容がわかる よく聞える つつぬけ状態 音源から1mで75dBA前後を想定
生活実感・プライバシーの確保 隣戸の生活行為が大変よくわかる 行動がすべてわかる 遮音されているという状態ではない
小さな物音までわかる
生活行為、気配での例

室内の暗騒音を30dBA程度と想定しているため、暗騒音が20~25dBAの場合には、1ランク左に寄ると考えた方がよい。特に、遮音等級がD-65~D-50の高性能の範囲では、暗騒音の影響が大きく2ランク程度左に寄る場合もある

木造住宅におけるピアノ室の防音仕様とは

当社が提案するピアノ室の防音仕様は、基本的に以下の図2のような完全浮構造となっており部屋自体の重量も大きくなることから、1階に作ることをお勧めしています。2階以上にした場合には、重量の問題から、梁や柱をすべて太くする必要があり、住宅自体のコストが高くなるからです。床レベルに関して、一般的な木造住宅の場合、1Fの床仕上げは、基礎のコンクリートより40~50㎝上がる形になっています。前述のように、部屋の重量が大きくなることから、40~50㎝嵩上げした床にピアノ室を乗せることは荷重的に問題があるため、基礎のコンクリートの上に直接防振ゴムを置き、その上にピアノ室を構築する形をとっており、ピアノ室の床は1F床より一段下がることとなります。また、外壁に関しては、隣戸が近接している場合や、元の外壁の仕様により、外壁を遮音補強することもあります。

図2 断面詳細図
図2 断面詳細図

事例-1(N邸)

普段はピアノ教室として使用するが、施主はピアニストでもあるため深夜でも練習を行いたい、しかし、隣室が家族の寝室でその部分の遮音を特に考慮したい、というご希望でした。そのため、既存壁の遮音補強だけではなく、寝室側にもう1層の間仕切壁を追加して、完全浮構造を構築する形となっています。

図3 平面図
図3 平面図

問題の寝室に対しては、遮音性能D-60を確保して目標性能を達成しています。図4の暗騒音グラフからもわかるように、実際のピアノ演奏を寝室で聞いたところ、低い音がかすかに聞こえる程度で人が寝るのには全く支障のない静かな環境でした。

図4 暗騒音グラフ
図4 暗騒音グラフ

事例-2(S邸)

閑静な住宅街にあり近隣の住宅とは隣接はしていますが、夜間特には弾かない、昼間のみの演奏、という条件でした。この部屋の特徴は、庭に面した大きなアルミサッシが1か所あり、その部分での遮音不足が危惧されました。しかし、上記条件などから、大きな窓は通常の2重サッシで対応しました。もし、深夜も演奏などの条件の場合は、3重サッシか、その他の方法をご提案していたと思います。

図5 平面図
図5 平面図

窓直前では多少の透過音は感じられますがD-50を確保しています。また、実際のピアノ演奏による測定結果の暗騒音グラフを図8にしめしますが、昼間では問題ない結果となっています。

図6 暗騒音グラフ
図6 暗騒音グラフ

終わりに

木造住宅のピアノ室の実測データはまだ数多くありますが、本稿においては2例をご紹介させていただきました。演奏される時間帯、近隣の状況、窓の配置や大きさなど、様々な条件・ご希望があるかと思います。そのような条件をふまえて、我々はご予算も含めお客様のご希望に沿ったピアノ室をご提案させて頂いています。

最後になりましたが、当社の両国本社に、完全浮構造で、実際にグランドピアノを弾いていただけるショールーム「Piano Lab」が昨年、オープンしました。この「PianoLab」で実際にピアノを演奏して頂き、周囲にどれくらい音が漏れているのか、また、部屋の響きはどのようなことをすればどう変化するのか、などの体験が可能です。お客様と一緒に音を聞き、音の共有を行える空間「Piano Lab」を是非ご利用いただきたいと思います。

図7 「Piano Lab」
図7 「Piano Lab」