音空間事業本部 北島 宏之

1. プロローグ

2008年6月9日、IMAGICA様として5カ所目のCM制作拠点である山王スタジオが営業を開始しました。溜池山王駅11番出口を出ると、目の前に山王スタジオの外観が飛び込むという好立地であり、内部は「フレーム」とカラーグレーディングシステム「フィルムマスター」の併設を可能にした編集室1室、「フレーム」編集室2室、5.1ch対応で音へのこだわりから最新のアナログコンソールSSL Dualityを採用したMAルーム1室の計4室で構成されています。弊社はデザインコンペによりMAルームを担当させていただきました。

2. MAルームの概要

MAルームは、コントロールルーム/アナウンスブース/前室で構成されています。コントロールルームのメインスピーカはMusik RL901K、サラウンドスピーカはGENELEC 8240A/7270A(LFE)です。限られた間仕切りの中でコントロールルームを出来るだけ広く見せる為に、平面的には円形状・天井はドーム状とし、その裏の空気層で吸音・拡散処理を行っています。遮音はD-60以上、空調はNC-20(MA), NC-15(ブース)です。前室以外は完全浮構造ですが、特にブースは直上が歩道であるため、天井からも防振支持を取らない独立構造とし、また、ブースを縦に走っていたH鋼(柱)からの固体伝搬音対策として、これを2.3mmt-700φの鉄板(裏は制振材貼り)で囲いました(写真3 矢印部分)。

一番頭を悩ませたアルミ有孔波板は、事前にサンプルを製作してもらい、孔の大きさと高域の抜け、取り付け時における板のビリつきの有無を確認しました。これも含めて、音場全体の響きを調整しています。また、フロントスピーカは台置きとし、十分な剛性を得るために鉄骨柱で構成しました。かつ天板はコンクリート充填とし、質量のあるものとしています。

3. エピローグ

「見た目よし、音よし」。この世界に携わる上での一つのテーマです。見た目よしとは、内装のデザインはもちろんのこと、機器配置・作業性・音響空間を考慮しながら、限られた空間の中にバランスを見ながら配置することを言います。音よしとは、静かなこと・遮音がいいこと・適度な響きがあることです。MAルームはあらゆる要素が絶妙に絡み合った斬新な部屋で、モノ造りの醍醐味を思う存分味わうことができました。関係各位様、刺激的な経験をありがとうございました。

写真1 コントロールルーム
写真1 コントロールルーム

写真2 コントロールルーム(後壁)
写真2 コントロールルーム(後壁)

写真3 アナウンスブース
写真3 アナウンスブース

写真4 (左)スピーカ台 (右)のぞき窓部分 アルミ有孔波板
写真4 (左)スピーカ台 (右)のぞき窓部分 アルミ有孔波板