音空間事業本部 柿沼 誠、加藤 丈晴
1. 建物概要
大阪の中心部を流れる堂島川の川沿いに誕生した「ほたるまち」。そのなにわ筋に面した一角に、朝日放送の新社屋が建設されました。地下1階・地上16階・塔屋2階の建物に全てのスタジオ機能及びオフィス等が移転し、2008年6月から放送が開始されました。川沿いから自由にアクセスが出来、周囲に開かれた建物になっています。
2. 各スタジオの概要
新社屋建設の際、下記のスタジオの施工を担当致しました。
- 「テレビCスタジオ」(主に朝夕の情報番組制作)
- 「新・ABCホール」(公開番組や各種イベント等に使用)
- 「MA」及び「素材MA」諸室
- 「ラジオ第1~第5スタジオ」
これらのスタジオは、隣接する諸室との遮音性能を確保する為に「完全浮構造」を採用しており、室内の静けさも下表(表-1)のように達成しています。また、外来電波からのノイズの発生を防ぐ為に、テレビCスタジオ、新・ABCホール及びラジオ第1スタジオには、電磁波シールドを施工しています。
3. 音響調整
建物竣工後に放送設備工事が始まり、スタジオも順次稼動していきました。その中で、TVサブ音声エリア(弊社施工ではないテレビA、B、Nスタジオサブ音声エリア含む)・MA・ラジオスタジオの音響調整及びそれらに付随する工事を担当いたしました。計画段階から各室の形状、音響軸の位置や高さの設定、スピーカー台仕様の統一などをしました。最終的には、音声スタッフの皆様と実際に音をヒアリングしながら、スピーカーの設置角度・吸音拡散の調整等を行いました。各室の比較試聴を繰り返し、全てのTVサブ音声エリア及びMAのどの室で聞いても違和感の無いモニター環境とすることが出来ました。ラジオ・サブも同様にすることが出来、音声スタッフの皆様から満足して頂くことが出来ました。
4. 終わりに
新社屋の計画段階から建築工事段階、放送設備工事中の音響調整まで、一貫して業務に携わる機会を与えて頂きました朝日放送西田様はじめ、関係各位の方々にはこの場を借りて御礼を申し上げます。
写真1 新・ABCホール
表-1 各室仕様
室名 | 暗騒音 | 遮音構造 | シールド |
テレビCスタジオ | NC-25 (63Hzで低減) |
浮床 : PSブロック 浮壁 : 三方向支持型防振ゴム+鉄骨下地組 浮天井 : 防振ハンガー吊 |
○ |
新・ABCホール | NC-25 | 浮床 : PSブロック 浮壁 : 三方向支持型防振ゴム+鉄骨下地組 浮天井 : 防振ハンガー吊 |
○ |
MA | NC-20 | 浮床 : 防振ゴム+大引鉄骨 浮天井 : 防振ハンガー吊 |
× |
MAアナブース | NC-15 | ||
素材MA 素材MAアナブース |
NC-25 | 浮床 : 防振ゴム+大引鉄骨 浮天井 : 防振ハンガー吊 |
× |
ラジオ(第1~第5) スタジオ |
NC-20~25 (一部63Hz除く) |
浮床 : 防振ゴムM5×2段 浮天井壁 : 防振ハンガー吊 |
× (第1のみ○) |
写真2 MA
写真3 ラジオ第1スタジオ