音空間事業本部 加藤 丈晴

1. 建物概要

エフエム福岡では、開局以来入居していたビルの建替えを機に、西日本シティ銀行との共同ビルを建設しました。構造は鉄筋コンクリート造、地上8階建ての免振構造で、銀行が1~3階に入っています。フロア構成は、1階がオープン型のスタジオ、2階は控え室、4,5階はテナントスペース・会議室で、6階が4つの制作・生放送用スタジオと送出スペース、7階は事務所となっています。8階は電機室、屋上は送信鉄塔が設置されています。

2. 各スタジオの音響設計概要

新スタジオの音響設計の概要について御紹介します。

1階 Eスタジオ・サブ(オープン型の生放送用)
6階 Aスタジオ・サブ(生放送用)、B~Dスタジオ・サブ(制作用で2室はワンマンDJにも対応)、マスター室、マシンルーム、番組登録室、アナブース

スタジオ、サブ、アナブースは上下隣室間の遮音を確保するため「完全浮構造」を採用し、静けさはNC-15~20(サブはNC-20~25)を設定しました。

特に1階のEスタジオは2階まで吹き抜けており、前面道路に対して高さ5m、横はL型に10mもある巨大なガラス窓を通して外から見ることができる開放型のスタジオです。目の前にバス停があるため、バスの発車音や運転手のスピーカからの声が生放送のマイクに入らないように、ビル外装の10mmガラスの内側(スタジオ側)に厚さ19mmと25mmの2重ガラスを追加しました。音場的には、壁2面が大型のガラス窓となり反射音の影響が大きいため、室内側のガラスは上向きに傾斜させ、天井に90cm近い空気層を設けてサウンドトラップと化粧グラスウールで吸音しました。また、腰のレンガや床のタイルの反射音も考慮して壁内部の吸音処理を調整した結果、自然でバランスの取れたスタジオとなりました。

6階の4つのスタジオにも大きなガラス窓を設け、外の景色や天候を感じながら放送できるようにしています。6階も1階Eスタジオと同様に、天井・壁にサウンドトラップを配置して反射と吸音のバランスを取っています。

3. おわりに

ガラスを多用したオープン感覚のスタジオ計画でしたが、様々な工夫により音抜けのよいスタジオが完成したと思います。この機会を頂きましたエフエム福岡様をはじめ、三菱地所設計、五洋建設関係各位に御礼を申し上げます。

(写真提供;篠澤建築写真事務所 篠澤裕 氏)

写真1 Eスタジオ
写真1 Eスタジオ

写真2 Eスタジオ
写真2 Eスタジオ

写真3 Eサブ
写真3 Eサブ

写真4 6階Dサブ
写真4 6階Dサブ