近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018 ─ 野外オペラにおけるANKHの使用事例 ─

企画室 根木 健太


滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018
かがり火オペラ「ディドとエネアス」

1.概要

開館20周年を迎える滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールにて2018年5月3〜5日に〜近江の春びわ湖クラシック音楽祭2018〜が開催された。本イベントの目玉とも言える「かがり火オペラ」は、琵琶湖湖畔を目の前にステージが組まれ、暗闇とかがり火・対岸の夜景と舞台照明、自然空間の中に浮かび上がる幻想的な空間のなかで、へンリー・パーセル作曲の歌劇「ディドとエネアス」が繰り広げられた。

本ホール初の野外でのオペラ公演の為、様々な障害があったと推察されるが、音響対策の一つとしてフラットタイプのANKH-Ⅰが5台使用された。野外公演の為、PA設備を必要とするが、ステージ背面には大きなガラス面、客席後方には琵琶湖が広がり、生楽器を演奏するにはとても条件の悪い環境であり、電気音響処理だけでは「生楽器らしい音」を損なう可能性が大きかった。そこでANKHを使用することによって仮想空間が形成されマイクに収音される音を自然にし、過剰なイコライジングを必要としないオペレーションを可能にした。その為、生楽器の良さをそのまま観客に伝えることができ、演奏者にとっても個々の楽器の音が聴きやすい空間となり、狙い通りの効果が得られた。


演奏者の周りを重点的にANKH-Ⅰ(フラットタイプ)を設置

また、イベント期間中は大・中ホールだけでなく、ロビーや湖畔広場、琵琶湖を周遊する豪華客船での演奏も行われていた。そのうちのメインロビーでの演目にもANKHは活用された。ロビーには「エラール」のフルコンサートグランドピアノが常設されているが、このピアノ演奏公演にてフロアタイプであるANKH-Ⅵが使用された。広いロビーのほぼ中央に設置されたピアノから発せられる客席に届きにくかった音が、ピアノ下にANKH-Ⅵが置かれることで音が前に飛んでくるのと同時に、粒立ちもよくなり聴こえやすくなったとの声が上がった。


ホールメインロビーで使用されたANKH-Ⅵ(フロアタイプ)

2.お客様の声

ANKHはクラッシック音楽を扱う演目には最適な製品であり、演奏家の期待を裏切らない成果が得られるツールである。そもそも、洋楽器は音楽ホールで行うことを前提に設計されており、音楽環境を整えないと成り立たない性質を持っている。その為には、反響板装置や吸音板装置にて音を整える必要がある。オペラにおいても歌手の周りに反響板としても得られる舞台装置などの造形物があることで、観客に響きを増強する効果も得られることがある。そのように、サウンドボードと呼ばれる装置を海外のオペラハウスでは保有している所もあるが、この製品の良いところは反射したい周波数のみ効果が得られる所であろう。今後は、楽器用とボーカル用など音の質によって変化するものや、ホーン状の音を増幅するものなど、色々なレパートリーを期待すると共に今後の展開が楽しみである。


「ディドとエネアス」森のシーン


会場設営の様子 客席は約200席用意された