音空間事業本部 出口公彦 嵯峨寛人 青木良江 崎山安洋
1. OFFICE RELOCATION
創業からの拠点であった新宿を離れ、クライアントや撮影にアクセスの良い汐留に移転し、今まで分散していたチームが一つのビルに集約した。ワンフロアの半分に相当する1,100㎡というスペースに撮影チームの機材庫、編集チームの編集諸室、オフィスなどが集約され、2016年4月に移転工事が竣工し、新たなスタートを切った。
EDIT9室、カラーグレーディングルーム、SIルーム、MA3室、アナブース2室、テープ庫、撮影用機材庫と管理業務オフィスが一体となった新本社である。
2. PROJECT MANEGEMENT
今回のプロジェクトでは、既に稼働しているテナントビルへの入居という事から、工事施工に関しての制約が多く調整に時間を要した。幸いビル管理側の理解を得られ、ビル本体に係る設備工事はビル管理サイドでの施工とし、基本的な音響に係る設備工事を含む既存解体から殆どの工事に於いては弊社での設計・施工である。
平面計画の決定後にビル側既存設備との調整を中心に全体の計画が進められ、非常にタイトなスケジュールでの移設計画となったが、機材庫とオフィスのスペースを資材置場としてフル活用する事でVASC様とビル管理サイドの御協力を得て、現行の編集業務を行いながら編集室・MA室をそれぞれ2回で移設するというスケジュールで完了する事ができた。
他のテナントが隣接している事もあり、初期の建設工事は夜間を中心に、設備工事を日中に行った。また音響諸室を優先に進めるという部屋によって工事進捗が異なる状況の中、工程調整を行いビル側設備工事と共に連携プレーで工事を進め、一般部の仕上工事を機材移設・ワイヤリングと並行して進めながら、短期決戦で全部屋の移設作業を行っていただいた。
3. PLANNING&INTERIOR
テナントエリアが横に広い空間であったために避難に要する歩行距離、お客様の導線、スペースを要する機材庫とオフィスの配置、隣接するテナントへの配慮といった課題をクリアにするべく、ギリギリのスペースの中ですべての機能をまとめるために綿密な打ち合わせとプランニングを繰り返し、今回のプランが決定した。
ゾーニングは、機材庫とオフィス機能の一般エリア・MAエリア・編集エリアに区分し、全体的には回廊のプランとした。
編集エリアは中央にマシンルームを配置してEDIT9室すべてがマシンルームに隣接し、カラーグレーディングルーム、S1ルーム、テープ庫までがまとめられている。編集エリアとは廊下を介し、オフィス等の一般エリアに挟んだ形でMA3室、アナブース2室(2室を各MA室で共用可能)のMAエリアという機能的なゾーニングで合理的にまとめられている。特に、回廊を廻らすことで外部騒音の侵入防止や隣接するテナントとの室間、MAゾーンに対する遮音の確保とスペース効率や各室へのアクセスが良くなっている。
また、広いラウンジがあり、汐留イタリア街の景色が見える。
インテリアとしては、当初から金属的な無機質な素材といったご要望があり、アルミ素材を取り入れたデザインとして各所に細かい演出がなされている。回廊はその位置によって異なった表情を持ち、ロビーは木質の床とすることで空間を分けるとともにくつろぎを与えている。メインロビーには黒板を要望され、美しい黒板アートが描かれている。サブロビーの壁面の緑化や、ライン間接照明、ガラススクリーンの案内表示などVASC様のこだわりのデザインが随所に表れている。
4. お客様の声
日本音響様にはこれまでの移設に伴うポスプロスタジオ・事務所の内装工事をすべてお願いして来ました。今回の汐留移転は今までの場所とは違い、工期も短くビル側の制約も多かったため様々な問題がありましたが、こちらからのリクエストにも柔軟に素晴らしいアイディアで対応して頂き、無事工期内で竣工することが出来ました。お陰さまで、お客様からも好評なポスプロスタジオに仕上がりました。有難うございました。