音空間事業本部 嵯峨 寛人

1. 概要

高さ200mと大手町エリアで最も高い読売新聞東京本社新社屋が2013年11月に竣工した。その内部に2つのホールがあり、劇場型多目的ホールは4階のステージから5階までの段床客席で、小ホールは5階ホワイエを挟んで背中合わせにレイアウトされている。当社は1年半にわたり、ホールを含む音響関係諸室の施工及び、施工管理を行った。

2. 遮音構造

各ホールは、上下階コンクリートスラブと固定遮音壁で囲まれた中に、防振ゴム浮床と浮遮音壁、総重量300tを超える上部防振鉄骨から支持する遮音天井で囲う、BOX in BOX( ボックスインボックス) 構造で構築されている。また、床、壁、天井にはそれぞれ特殊な防振ゴムが5000個程度使用されており、それぞれの防振ゴム支持点の荷重を計算し、各所適切な防振ゴムの配置にもなっている。

3. ホール施工上での特徴

天井の防振鉄骨は重量に対し支持点が少なく、鉄骨自体のたわみと歪みがあるため、各防振ゴムに適正荷重を負担させるのが難しかった。紙上計算通りにならないため、ゴムのたわみ量から荷重を逆算し、鉄骨を一度持ち上げてゴムを再設置する作業を何度も行うことで解決した。床に関しては、無積載時と最大積載時の荷重差が大きく、防振ゴムの選定と配置を工夫した。特に小ホールは、中央の可動式壁で仕切り隣同士で異なる催しを行うこともあるため、浮床自体もふたつに分割し相互に絶縁している。また、双方の浮床下部防振ゴムのたわみ量の差による段差が少なくなるよう工夫している。また、工事工程に関しても特徴がある。このホールの特徴である、蒲鉾の断面形状のような壁仕上は音を拡散し、大変良い響きを得ることができるが、非常に重量があり、取付作業にも時間がかかる。そのため、今回は仕上工事と浮遮音層工事を平行して行うことになった。本来は仕上の裏側に来る、浮遮音層工事を同時に行う事は、前代未聞であるが、各職種間の念密な調整や、新しい作業手順の開発など各種努力により、本来、不可能と思われる工事も遂行が可能となった。

4. 最後に

今回弊社は、ホールの遮音部分を受け持つ浮遮音層の工事に参加させていただいた。仕上がってしまえば見えない部分も多々あるが、前出の多くの困難を乗り越えて、このホールが完成した事は弊社としても大きな自信にもなった。日本の中心、東京駅より徒歩圏内のこのホールで、これからすばらしいコンサート、講演、パーティーが行われ、人々の感動が生まれることを切に願う。

【よみうり大手町ホール】座席数=501席 主舞台規模=幅13.0m×奥行7.7m
主舞台規模:約100㎡ 音響反射板設置時:約88㎡
プロセニアムアーチ 幅13.0m×高さ8.0m~5.4m可変
【小ホール】面積=354㎡ 可動間仕切利用時:165㎡/185㎡ 最大収容人数=395人