技術部 今谷 泰子・平川 哲久
1. はじめに
音響技術者が建築音響設計(検討)を行う際には、音響材料に関して、音響性能のみならず、 構造的な性能・仕様、更に色・形状などのデザイン的要素、コスト、梱包荷姿、入手に関する情報等、あらゆる情報が必要不可欠となります。
これらに対し、音響材料メーカーおよび商社などより、材料に関しておびただしい数の製品カタログ、技術資料が提供されています。
技術者にとって、このような製品カタログや資料より得られる情報は、利用価値の高いものである反面、以下のような問題点が考えられます。
- 広範囲にあらゆるメーカーのカタログ・資料を収集するには、限りがある。
- 膨大な量のカタログ・資料を格納しておくスペースに制限がある場合が多く、また、整理・整頓、必要なデータを検索するのにも莫大な労力を要する場合がある。
- 従来から取引のある、一部のメーカー・商社のカタログ・資料による情報に頼りがちになり、 その結果として、何処かで見た事のあるようなデザイン(出来栄え)となる場合がある。
- メーカーによっては、CD-ROM等により、ディジタル化されたカタログを配布している。 検索機能等が充実している場合もあり、提供元のメーカーの製品を用いる場合には、大変優れている提供方法ではあるが、他社商品との比較ができない。
- 各社カタログ・資料の作成方法がオリジナリティーに溢れている為、必要とする情報を探すのに労力を要する場合がある。
また、カタログ・資料だけでなく、インターネットのホームページにより自社製品の情報発信を行うケースも増えてきつつあります。 試みた方もいらっしゃるとは思います。しかし、
- サーチエンジンに入力するキーワードが適当でない為、欲しい情報に行き着かない。
- 学会発行などの情報誌にURLが掲載される一部のメーカー・商社のホームページにしかアクセスできず、 従来取り引きがなく、広告頻度の低い(出さない)会社のURLを知る機会が少ない。
- 会社名.co.jpの様な比較的わかりやすいURLを取得している企業ばかりではない。
- 各社がホームページを開設している訳ではない。
- 他社製品との比較は容易でない。
等、以上に羅列したのは、ほんの一部の問題かもしれませんが、実際、音響技術者がメーカーのホームページにアクセスし、 必要とする情報を幅広く得る事は、膨大な手間暇を必要とし、それに対して得られる情報が偶然性に支配される可能性が高く、 あまり実用的とは言えないのが実感されるところだと思います。
インターネットで情報を集める方法は、常に新しい情報が入手できる点を除き、先程のカタログ・資料を蓄積しておく方法と比較し、 実質的にどちらが優れているのかを判断できない段階かもしれません。
そこで私共は、株式会社エヌ・ティー・エスより出版される「現場実務者と設計者のための 実用 騒音・振動制御ハンドブック」発刊に伴い、 付録CD-ROMとして、音響材料に関するデータを探す為に好都合だと思われる以下の条件を満たす様、 「音響・防振材料データベース」CD-ROMを完成させました。製作に伴い、データに関しては、80社を越える音響材料メーカーに御協力頂きました。
- 幅広い選択肢。
- 検索機能を持ち、必要な情報を素早く得る。
- 比較機能を持つ。
- 一定の書式に従っている。
- 各社の連絡先が充実。
- 僅かなスペースで保存できる。
- 管理が簡単。
以下にCD-ROMの特徴、検索の流れ、入手方法などご紹介させて頂きます。
2. 特徴
-
音響・防振材料の分類は以下の8項目とし、80社を超えるメーカーからの御協力により、3551データを掲載しました。
(1) 吸音材料 30社 678商品 (2) 遮音材料 31社 351商品 (3) 防音建具 16社 130商品 (4) 床材料 19社 150商品 (5) 遮音壁 12社 44商品 (6) 防振材料 9社 1154商品 (7) 制振材料 6社 28商品 (8) 消音器 4社 1016商品 - 商品それぞれのカタログ・資料をデータベース化し、音響性能、キーワードなどによる検索機能があります。
- 所定の音響性能値に対して、最大5材料までの比較グラフの表示、印刷が可能です。(1/3オクターブ、1/1オクターブ共:図-1を参照)
図-1 比較グラフ表示画面 - 各分類毎に、最大5材料まで、画面上で同時に詳細情報の表示・比較が可能です。
- 検索結果を所定の項目(音響性能値、商品名等:図-2を参照)に対して昇順、降順で並べ替え可能です。 (図-2は、125Hzの残響室法吸音率を降順に並べ替え)
図-2 比較グラフ表示画面 - 遮音等級線の表示・非表示が可能です。
遮音材料:D曲線
防音建具:T曲線及びD曲線
床材料:L曲線 - Windows及びMacintoshの両方で使用可能です。
- 所定の書式に従って印刷機能があります。
- 商品の詳細情報として問い合わせ先のリストを、また、電子メールでの問い合わせを受け付けていたり、 ホームページを開設している会社に関しては即座にアクセスできます。
3. 検索→商品の詳細情報表示の流れ
検索の流れを以下に示します。
- 対象とする材料を吸音材料、遮音材料、防音建具、床材料、遮音壁、防振材料、制振材料、消音器より決定します。(図-3を参照)
↓ - 種類・メーカー・商品名・音響性能値など検索条件を入力します。(図-3を参照)
↓ - 前述2.で定めた条件を満たす商品がリストアップされます。その中より、詳細情報をご覧になりたい商品を選択します。(図-2を参照)
↓ - 詳細情報を表示させます(図-4を参照)
図-3 検索条件設定画面
図-4 詳細情報表示画面
検索条件として、指定可能な項目は以下の通りです。
◎ 各材料個別の指定項目
-
吸音材料
分類[多孔質吸音材、多孔質吸音板材、剛体多孔質吸音材、共鳴形あなあき板、その他より選択。 それぞれについて種類(ex.多孔質吸音材-グラスウール)も指定可能]
残響室法吸音率データ(周波数毎:範囲指定可能) -
遮音材料
分類[遮音シート、鉛シート、石膏ボード、セメント板、珪酸カルシウム板、軽量気泡コンクリート、 その他より選択。それぞれについて構造(単体、複合板、複合構造、その他より)も指定可能]
音響透過損失データ(周波数毎:範囲指定可能)
遮音等級(D値:範囲指定可能) -
防音建具
分類[窓サッシ、扉、防音シャッター、可動間仕切り、その他より選択。それぞれについて種類(ex.扉-鋼製防音扉)も指定可能]
音響透過損失データ(周波数毎:範囲指定可能)
遮音等級(T又はD値:範囲指定可能) -
床材料
分類[乾式遮音二重床、防音木質フローリング、床用防音下地、その他より選択]
遮音等級(LL又はLH値:範囲指定可能) -
遮音壁(防音塀)
分類[遮音・吸音パネル、吸音パネル、透光パネル、その他より選択。] -
防振材料
分類[防振ゴム、空気ばね、免振ゴム、その他より選択。] -
制振材料
分類[制振板、制振シート、塗布型制振材、その他より選択。] -
消音器
分類[ユニット型サイレンサ、グラスウールダクト、消音エルボ、消音ボックス、ルーバー、その他より選択。]
減衰量(周波数毎:範囲指定可能)
◎ 各材料共通の指定項目
メーカー(プルダウンメニューから選択、又は文字列を入力)
商品名(文字列を入力:一部でも可)
キーワード(文字列を入力:一部でも可)
また、詳細情報は各材料に対して、以下を採用しました。
◎ 各材料個別の詳細情報
-
吸音材料
残響室法吸音率、音響透過損失、価格及び仕様、姿図、色見本、諸特性 -
遮音材料
音響透過損失、残響室法吸音率、価格及び仕様、姿図、断面図、構造図、諸特性 -
防音建具
音響透過損失、価格及び仕様、断面寸法図、外観図、製作制限、構成材料 -
床材料
床衝撃音性能、価格及び仕様、断面寸法、色・材質見本 -
遮音壁(防音塀)
音響透過損失、残響室法吸音率、斜入射吸音率、価格及び仕様、姿図、寸法図、材料仕様図 -
防振材料
バネ定数・荷重・XYZ軸記入図、たわみ曲線図、価格及び仕様、姿図、寸法図 -
制振材料
損失係数(周波数、温度特性)、音圧の低減例、振動の低減例、価格及び仕様、姿図、断面図、施工例写真、諸特性 -
消音器
減衰量、音響透過損失、自己発生ノイズ、価格及び仕様、圧力損失、姿図、断面図、施工図
◎ 各材料共通の詳細情報
特徴・特記、営業所一覧
なお、基本的に、各メーカーのカタログに掲載されていない場合及び情報の提供の無い場合は、空欄として表示されます。
4. 入手方法
株式会社エヌ・ティー・エス「現場実務者と設計者のための 実用 騒音・振動制御ハンドブック」を御購入頂きますと、 付録として以上でご紹介させて頂きました「音響・防振材料データベース」CD-ROMがついてきます。
なお、こちらの出版会社では、購入頂く際に試読制度を取られておりますため、
購入申し込み(試読申し込み)
↓
ハンドブックがお手元に到着
(お試し版CD-ROMが添付)
↓
ハンドブック
お試し版CD-ROMを試す。
↓
購入手続き
↓
「音響・防振材料データベース」CD-ROMが、お手元に到着
となります。試読の際にお手元に届きます、お試し版CD-ROMは、
- データ数:吸音材料 10社 227商品
- 印刷機能はなし
と情報量、機能とも限定となっております。
ハンドブック御購入等お問い合わせは、以下までお願い致します。
〒113-0034
東京都文京区湯島2-16-16
株式会社エヌ・ティー・エス
Phone:03-3814-3511
Fax:03-3811-5900
5. 最後に
以上、ご紹介させて頂きました「音響・防振材料データベース」CD-ROMは、 音響材料3551商品のカタログ・資料をデータベース化し、集約・整理したものです。項目毎に条件検索を可能としたことにより、 音響技術者にとって必要な資料を、従来に比較し、格段にすばやく抽出可能と致しました。
このCD-ROMを活用して頂く事により、今までご使用される事のなかった(縁のなかった等)商品に関する情報を幅広く入手されることで、 所定の音響性能を満足しながらも感性に応じたデザイン、コスト面においても十分に検討された今までとは違う作品が創出されると幸いです。