音響計測・評価・開発支援 吸音遮音材料性能評価・予測 広帯域対応 垂直入射吸音率測定システム WinZac 8

マイク8本使用で、より広帯域に吸音率を測定!
・幅広い周波数範囲の測定を実現
・高い測定精度を実現


広帯域対応 垂直入射吸音率測定システムWinZac 8は、単一のサンプルで広帯域の吸音率測定を安定して行うことができる、これまでにない音響管システムです。同じ管径の従来型音響管と比べて2倍以上高い周波数まで測定可能にすることで、「幅広い周波数範囲の測定」と「高い測定精度」の両立を実現しました。WinZac 8を使用すると、これまで細管でしか測定できなかった高周波帯域の測定精度を大きく改善することができます。WinZac 8は、岡山県工業技術センターと共同開発した「8マイクロホン法」と呼ばれる手法を採用しております。8マイクロホン法の詳細については、参考文献をご参照ください。(特許出願中)

幅広い測定周波数範囲

WinZac 8は、8マイクロホン法で高周波帯域、従来法(ISO 10534-2 / JIS A 1405-2)で中低周波帯域を測定し、これらのデータを結合することで、1つのサンプルで幅広い測定周波数帯域をカバーします。
従来法で低周波数から高周波数までの広い周波数帯域の吸音性能を評価するためには、低周波数を受け持つ太い音響管(大きいサンプル)と高周波数を受け持つ細い音響管(小さいサンプル)という、大きさの異なる複数の管(サンプル)で測定しなくてはなりませんでした。

しかし、大きさが異なる管(サンプル)で測定すると

  • サンプルを切り出す手間が増える
  • 測定時のサンプルをセットする手間が増える
  • サンプルを保管する手間が増える
  • 太管/細管の切り出したサンプルの物性が異なる(同じ原反であっても、ムラが生じる可能性がある)
  • 太管/細管での同一周波数における吸音率が一致しない(特に通気が少ないフォーム系の材料など)

などが生じるため、作業コストが増大したり、データの取り扱いが困難になったりします。
1つのサンプルで広帯域に測定ができると、これらの問題を解消できます。

高い測定精度

WinZac 8は、従来型音響管の上限周波数の2倍以上の高周波数に対応できるため、同じ周波数の測定を行う際に従来よりも大きなサンプルで測定することができ、測定精度の向上および測定の効率化を図ることができます。

従来法では、音響管の内径が波長の約0.58倍未満でなければならないという限界があるため、一般的に吸音材の性能評価の対象となる高周波数の場合、細い音響管を使用しなければなりません。(例えば5,000Hzだと直径40mm以下)

しかし、細い音響管(=小さいサンプル)で測定すると、

  • 切り出しサンプルによるばらつき
  • 音響管とサンプルの隙間の影響
が生じ、吸音率の測定精度が低下してしまうことがあります。従来法でこれを回避するには、測定サンプル数および測定回数を増やさなければなりませんでした。それに対し、大きいサンプルで測定できると、これらの問題を改善できます。

16マイクロホンを用いた垂直入射透過損失の測定

本来、音響管を用いた透過損失測定は多孔質材料に適用される手法であり、通気がないサンプルの測定には向いていません。これは、試験体の寸法が小さくなると、遮音性能が「重さ」よりも「硬さ」によって支配される「剛性則」に従うようになり、一般的には重ければ重いほど、かつ周波数が高ければ高いほど遮音性能が高くなるという「質量則」に従わなくなるためです。
これに対し、従来の規格で規定されている上限周波数よりも3倍以上高い周波数までの垂直入射透過損失を測定できる本手法を用いれば、試験体の寸法をより大きくとることができ、主要な帯域においてほぼ質量則に沿った測定が行えることが期待できます。(特許申請済み)

測定例

メラミンフォームの垂直入射吸音率(WinZac 8(内径100mm管)使用)

WinZac 8(内径100mm管)では、100Hzから5.8kHzと幅広い周波数を測定することができます。これは従来型音響管の上限周波数1.8KHzのほぼ3倍の周波数です。

この高域の吸音率は従来型音響管(内径40mm)と比べてもほぼ同等であり、かつ低域ではより安定した測定結果が得られています。

PETフェルトの垂直入射吸音率(WinZac 8(内径40mm管)使用)

WinZac 8(内径40mm管)では、200Hzから10kHzと幅広い周波数を測定することができます。
これは従来型音響管の上限周波数4.8kHzの2倍以上の周波数です。

ゴムシート3mm厚の垂直入射透過損失(WinZac 8 (内径100mm管)使用)

黒い実線がゴムシート3mm厚の質量則(無限平板の垂町入射条件における遮音性能の理論値)、青い実線が直径40mmの音響管での測定結果、緑の実線が直径15mmの音響管での測定結果です。直径40mm、15mmサンプルの実測値が理論値(質量則)と大きく乖離しているのがわかります。青(直径40mm)、緑(直径15mm)グラフの透過損失のディップ(青:約1,000Hz、緑:約4,000Hz)は円形サンプルの一次共振によるもので、その周波数では遮音性能が理論値より大きく低下します。また、一次共振より低い周波数帯域では質量則とは逆に低周波数が低くなるほど遮音性能が高くなる「剛性則」の領域を示しています。

これらに対し、WinZac 8で測定した垂直入射透過損失(赤線)は主要な帯域においてほぼ質量則に沿っていることがわかります。

スペック

内径100mm管タイプ 内径40mm管タイプ
サンプルサイズ 直径100mm 直径40 mm
測定周波数範囲*) 100 ~ 5,800 Hz 200 ~ 10,000 Hz
規格準拠法 100 ~ 1,800 Hz 200 ~ 4,800 Hz
8, 16マイクロホン法 500 ~ 5,800 Hz 1,000 ~ 10,000 Hz
測定方法 吸音率:ISO 10534-2 / JIS 1405-2, 8マイクロホン法
透過損失:ASTM E2611, 16マイクロホン法
測定可能音響特性 ・垂直入射吸音率
・音響透過損失
・複素音圧反射率
・比音響インピーダンス
・特性インピーダンス
・伝搬定数
・実効密度
・体積弾性率
・伝達関数
・ランダム入射吸音率(推定値)
・音響透過損失(推定値)

*) 規格に準拠した方法と8, 16マイクロホン法を組み合わせた場合の測定周波数範囲です。

参考文献

  • 1.A. Sanada, K. Iwata, H. Nakagawa, "Extension of the frequency range of normal-incidence sound absorption coefficient measurement
    in impedance tube using four or eight microphones", Acoust. Sci. & Tech. 39, 5, pp335-342 (2018)
  • 2.眞田、中川、"8マイクロホン法による広帯域垂直入射吸音率測定 ―マイクロホン配置と音源構造の工夫による更なる高周波化―", 建築音響研究会資料, AA2019-53 (2019)

関連サービス・製品

関連記事