DL 事業部
忠平 好生

1.はじめに

平成27年度に、沖縄県が全国に先駆けて、米海兵隊普天間飛行場周辺における航空機の飛行に伴う低周波音の常時監視システムを構築しました。県の要求仕様に基づいて、当社はシステムの詳細設計から携わっております。本稿では、県の許可を得て、当該システムの概要について紹介いたします。

2.システム紹介

当該システムは、低周波音圧レベルを連続測定する測定局と、測定局のデータをオンラインで回収し集計を行う中央局で構成されています。低周波音の測定装置は、航空機騒音の測定装置と同じ測定局に設置しており、中央局において低周波音と航空機騒音のデータを関連付けて分析・集計することにより、航空機の飛行に伴う低周波音の発生状況を監視することが可能となっています。

低周波音測定装置では、低周波音圧レベル計から1秒毎にG特性音圧レベルと1~80Hzの1/3オクターブバンド音圧レベルのデジタル値を取得して連続記録しています。合わせて、技術ニュース第40号で紹介した航空機の機種識別機能も装備しており、航空機の機種をリアルタイムで自動判定し、その結果も連続記録しています。また、機種判定結果を精査したり、機種判定精度の向上を目的として、技術ニュース第39号で紹介した連続静止画記録システムも併設しています。

航空機の飛行に伴う低周波音を測定するのに、最も悩ましいのがマイクロホンの高さをどうするかです。航空機騒音の測定では、主たる目的が環境基準の達成状況を把握することであるため、"immission"、すなわち騒音曝露の程度を測定する視点に立って、床面から1.2~1.5m の高さにマイクロホンを設置します。同様の視点で低周波音を測定するならば、こちらもマイクロホンの高さは1.2~1.5m となりますが、飛行音の入射波と床面からの反射波との干渉を考慮した場合、測定に大きな支障となる問題が生じます。床が剛な反射面と仮定するならば、床からの距離が1/4波長となる場所において入射波と反射波が打ち消し合って常に振幅がゼロとなります。真上から音波が入射した場合、1.2mでは70Hz、1.5mでは56.7Hzあたりが常にゼロとなってしまいます。低周波音の常時監視という目的からすると、これではあまりにお粗末な結果となってしまいます。

床面反射による音波の干渉の影響を少なくするには、マイクロホンの高さを極端に低くするのが効果的です。低周波音では、"emission"、すなわち音源の大きさの程度を測定する視 点に立ったものとして、床面にマイクロホンを置いて測定する方法が用いられることがあります。そうすることで、床面反射による干渉の影響を排除し、音源からの音波の曝露量を広い周波数範囲で正確に把握することが可能となります。

中央局では、航空機騒音発生時の低周波音圧レベルを、沖縄防衛局が「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書」※で示した物的、心理的、及び生理的影響に係る環境保全の目標値(基準値)と比較してグラフ表示する機能や、航空機1機毎に目標値を超過した秒数を集計して日報を作成する機能等を備えています。

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図1 低周波音対応常時監視測定局の一例(センサー部)

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図2 低周波音対応常時監視測定局の一例(本体部)

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図3 低周波音測定装置のブロック図

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図4 低周波音圧レベル計マイクロホン部

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図5 中央局における低周波音測定結果の表示例

3.おわりに

航空機の飛行に伴う低周波音に関しては、現在のところ環境基準のような目標値や規制値は設定されていませんが、将来、そういった基準が示された場合に、過去に遡って評価を行うことができるため、当該システムによるデータの蓄積は非常に有用と考えられます。また、蓄積データを活用することで、基準の策定に向けた取り組みにも関与できるものと期待しております。

最後に、本稿の掲載をご了承いただきました沖縄県環境部環境保全課の皆様に感謝の意を表します。

※ 第6章6.5低周波音6.5.3評価
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/
hyoukasyo/hyoukasyo.html

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