音空間事業本部
出口 公彦, 葛西信輔

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1.プロジェクトの概要

現在の本社に程近い、目黒川沿いに建つ新築ビルへのLDHグループ EXPG STUDIO東京校の移転に合わせ、地下1階に大型リハーサルスタジオを新設した。当初からスタジオ専用に計画されており、各階の階高も高く、無柱の大スパンとした充分な広さを確保できる建物である。地上階は、プロへの登竜門として、ダンスレッスン・ボーカルレッスン・DJレッスンのアマチュア向けスクールとして運用され、地下階は一線を画したプロ専用のリハーサルスタジオとなり、まさに「ダンスミュージックの聖地」とも言うべき堂々とした建物である。

工事進捗の途中段階での参入であったが、地下のスタジオについて、当初の計画を見直し、大音量のダンスミュージックのライブリハーサルに対応できるように遮音・振動の再検討等を行い、進捗中の設備等を最大限に生かした修正計画として2017年8月に竣工した。

地上階のダンススクールには、ダンス用のスタジオが大小4室、ボーカルレッスンルームが3室、DJレッスンルームがあり、ひとつの建物の中にアマチュアからセミプロ、そして憧れのアーティスト専用スタジオが一体となったスタジオビルが運用を開始し、連日の大盛況となっている。

2.スタジオの構成

スタジオは、Ast・Bst・Cst の3室で構成されている。Aスタジオは、約212㎡の大型のリハーサルスタジオで、ダンスパフォーマンスと同時にバンド編成を入れた大規模なライブのリハーサルが可能である。Bスタジオは、約93㎡の中規模の横幅の広いスタジオで、ダンスパフォーマンス専用のリハーサルスタジオという位置付けとなっている。Cスタジオは、コンパクトながらボーカルブースとコントロールルームという本格的なプリプロルームとなっている。

Aスタジオには、MIXルームとミーティングスペースを確保するため、遮音タイプの大型スライディングウォールが設けられており、小規模のリハーサルでは、スライディングウォールでスペースを分割して使用する事で、音響的に独立したMIXルームが確保できる。

逆に大規模なダンスパフォーマンスのリハーサルでは、隣接するBスタジオをMIXルームとして使用する事で、全てのスペースをバンド+ダンスパフォーマンスのリハーサルに使用するレイアウトとなっている。

また、Ast・BstとCstとは、それぞれ回線が繋がっており、各スタジオでのレコーディングも可能となっている。

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3.音響計画とインテリア

Aスタジオは大音量でのリハーサルを要求され、初期計画の遮音構造をそのまま生かし、更にその内部に「もう一つの箱」を作る計画とした。コンクリートの浮床と浮遮音 天井・浮遮音壁を追加し、躯体+1次遮音層+浮構造遮音層の遮音構造となっている。

スタジオ内には前述のスライディングウォールが設置されているが、重量を構造躯体で支持しながら防振する必要があり、構造設計者と打合せを行い、柱と梁で支持する防振 構造のH型鋼の梁を増設して取付けを行った。おおよそ12mの一面にはカガミを設置し、周囲に拡散壁と吸音壁をバランス良く配置する事で室内の響きを調整している。

天井には様々な照明等の演出が可能となるようにグリットパイプを設けている。

Bスタジオは、横に広くダンスリハーサルに特化した形で計画を進めた。横方向のロングパスエコー対策として、短編方向の壁を上方へ傾斜させた拡散壁としている。

特に遮音対策は行わずにカガミにより支配的となる室内の響きを天井に大きな吸音用のスペースを設ける事で音響対策を重点的に行なった。

Cスタジオは、初期計画の遮音構造内に間仕切壁を追加して2室に分割し、それぞれコンクリートの浮床と浮遮音天井・浮遮音壁の構造とし、更に上階のダンスレッスンス タジオからの遮音と振動対策を強化する目的で自立式の遮音構造を採用した。

プリプロルームのデスクは壁に沿ったラウンド形状で、周辺機器を壁面と手元にマウントしスペースを確保、後壁にはAGSシステムを配置する音響計画とした。

各室の内装仕上げは、ナチュラルなフローリングの床と白い壁のデザインで統一されてすっきりとまとめられている。