ヘッドホンを用いたリアルな音量再生方法のご紹介

DL 事業部
出納 正三  加藤 幸大

1.はじめに

技術ニュース41 号では、弊社の音場再現技術を用いた航空機騒音の疑似体験技術をご紹介させて頂きましたが、収録にはダミーヘッドマイクロホンが必要であること、再生環境とし て原則、無響室が必要であることなど、コストもさることながら再生環境も限定されることになってしまい、手軽に騒音の体験をできるものではないというデメリットがありました。今回は騒音レベルをできるだけ正確に再現することに目的を絞ることにより、低価格で再生環境も手軽に実現できる「リアル音量再生方法」をご紹介致します。

2.リアル音量再生方法紹介

今回ご紹介する再生方法は、航空機騒音の再生音量を正確に再現することを目的としており、装置構成は、再生装置、ヘッドホンアンプ、ヘッドホンと非常にシンプルです。図2は映像コンテンツ製作を前提とした場合の装置構成例ですので、再生装置はBDもしくはDVDプレイヤーとしています。再生装置は民生用と業務用で出力レベルが異なるため注意が必要ですが、後からボリューム調整を行うのでどちらでも対応は可能です。再生ボリュームの調整はヘッドホンアンプによって行います。ヘッドホンはできるだけ周波数特性にクセの無い、スタジオモニターなどによく用いられている、いわゆるモニターヘッドホンを採用します。

3.航空機騒音の収録

映像コンテンツを作成する場合は、まずビデオカメラが必要になります。最近はスマートホンなどを用いて簡単に動画撮影ができるようになりましたが、簡易な撮影機器では、風雑音低減などを目的とした、ユーザーの意図していないフィルターが入っていることが殆どです。これが正確な騒音レベル再現の妨げになってしまうため、フィルターを解除できる機材を使用する必要があります。また、騒音レベルを正確に再現するためには、収録時に騒音計を用いて騒音レベルを把握しておく必要があります。つまり、ビデオ専用のガンマイクなどは用いずに、騒音計の出力を直接ビデオカメラにライン入力して航空機騒音を撮影・録音します。尚、騒音計からのAC出力はフィルターのかかっていない状態のZ特性に設定し、ビデオカメラと接続します。

更に、映像コンテンツの演出として、航空機騒音のメイン映像に騒音計の騒音レベル表示画面をワイプ画像としてはめ込み処理など行う場合には、騒音計の画面を記録する別のビデオカメラも必要となります。複数のカメラを使用する場合は、機器間の時刻同期を行う必要があり、業務用のカメラを使用する場合は、タイムコードを用いた同期を行うことができます。タイムコードによる同期の方法が取れないときには、カチンコを用いて編集時に音声トラックを見ながら同期点を探して、簡易的に同期を行う方法も可能です。特に航空機騒音は騒音計の時間重み付特性をSLOWで測定しているため、コンマ数秒のずれがあっても殆ど違いは分かりません。

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図1 大がかりなダミーヘッドによる収録

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図2 リアル音量再生方法の系統図

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図3 撮影時の系統図

4.無響室での再生レベル調整

収録した航空機騒音をヘッドホンで再生したときに、実際に収録した現場と同じボリュームとして感じるように設定するには、いくつか工程があります。

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図4 再生レベル調整の手順

まずは、収録した素材を無響室内でスピーカー再生します。この時、一定距離の地点に騒音計を設置し、例えば70dBで収録した音をこの空間でも実際に70dBと表示されるようにスピーカーのボリュームを調整します(図4の①)。次に騒音計の代わりにダミーヘッドマイクロホンを設置し、騒音計が70dBを示したのと全く同じ条件でスピーカー再生し、ダミーヘッドマイクロホンの表示レベルを確認します(図4の②)。そしてダミーヘッドマイクロホンにヘッドホンをかぶせ、実際の再生装置構成(図2再生システムの系統図)による再生を行い、ヘッドホンから出力される音によって、ダミーヘッドマイクロホンの表示レベルが、先ほどのスピーカー再生で出力したレベルと同じになるようにヘッドホンアンプのボリュームを調整します(図4の③)。この段階でヘッドホンによる再生レベル調整が完了です。

一度この調整を行えば、後からコンテンツ追加を行っても、騒音計校正時の基準信号を録音しておけば、それを元に相対的なレベル調整が行えるため、わざわざ無響室を使用することはありません。ただし、再生機器が変わってしまう場合は、出力レベルが機器によって異なることがあるため、再調整をする必要があります。

5.おわりに

この再生方法はリアルな音場再現をすることはできませんが、騒音問題について特に重要な騒音レベルのボリューム感の再現を正確に行うことができます。また、撮影時にダミーヘッドマイクロホンを使用しないため、現場が大掛かりにならずに済み、撮影回数が増えた場合のコストを比較的抑えることができます。再生環境もスピーカーで大掛かりに行う場合と比較すると、どこにでも持ち歩ける利点があるため、非常に自由の利く方法と言えます。なお、この方法は国土交通省の羽田空港機能強化に関する説明会でも採用いただき、複数の会場でリアルな音量を体験いただいています。

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