Noise Visionを使った異音、騒音、遮音、室内音場等の調査

技術部 青木 雅彦

1. はじめに

全方位音源探査システムNoise Vision※を使った測定をご提案し、 いろいろな調査で実際に利用していただくようになって4年目になります。その間、音の到来方向を簡単に可視化できるこの測定システムは、 さまざまな現場で使われてきました。
そこで、実際にNoise Visionシステムがどのように使われているのかをご紹介します。

全方位音源探査システムNoise Vision
図-1 全方位音源探査システムNoise Vision

※Noise Vision(ノイズビジョン)とは
当社が開発、販売している全方位音源探査システム。センサーの球体部分に31個のマイクロホンと12個のCCDカメラを装備し、 どの方向から到来する音に対しても、一度の測定で素早く音源探査結果を写真に重ねて可視化することができます。 詳しくは当社のウェブサイトをご覧ください。

2. Noise Visionを使った調査の目的

Noise Visionを使って、私たちのコンサルティング部門が今まで調査させていただいた業務の内訳は以下のとおりです。

Noise Visionを使った調査事例の分類
図-2 Noise Visionを使った調査事例の分類

今までの実績では、住宅等の異音調査と、工場の騒音対策のための調査が共に28%を占め、 次いで建物内の遮音性能調査が14%となっています。
次に、調査の分類ごとにその内容をご紹介します。

3. Noise Visionによる異音・不思議音調査

当社のウェブサイトに異音・不思議音調査のページを掲載していることもあり、 Noise Vision関連で最もお問い合わせが多いのがこの調査です。

以下に室内で何かが軋むような衝撃音が発生した時の測定例を示します。測定で得られたデータからまず異音の波形を探し(図-3-1)、 次にその波形の卓越周波数を分析します(図-3-2)。最後に卓越周波数帯域の音を対象に、音の到来方向、 つまり音の発生部位を写真に重ねて赤く表示します(図-3-3)。

異音の波形例
図-3-1 異音の波形例

異音の周波数分析例
図-3-2 異音の周波数分析例

Noise Visionを使った異音の調査結果例
図-3-3 Noise Visionを使った異音の調査結果例

Noise Visionのトリガー機能を使えば、突然発生する一瞬の音も取り逃がすことはありません。 測定後(音の発生後)数分後には、コンピュータの画面にこのような分析結果を表示することができます。

Noise Visionの分析結果は音の発生個所を示すだけなので、直接その発生原因が分析できるわけではありません。 けれどもいつ、どこで発生するかがわからない一瞬の音をハードディスクに収録するため、後から様々な分析ができ、 その音を後から試聴することもできます。

また、一見すると室内で不規則に発生しているような異音でも、今までの測定例では、 概ね音の発生個所が複数の特定の部位に限定できることがわかりました。このように音の発生しやすい部位がわかることは、 対策のための一つの手がかりになると思われます。

4. Noise Visionによる工場の騒音調査

多くの騒音源がある工場では、敷地境界や屋内の作業者の位置でNoise Visionを使えば、 影響の大きい騒音源をスクリーニング(選別)することができます。

騒音対策は影響の大きい騒音源から対策することが基本です。そのためこのスクリーニングは近隣への騒音対策はもちろん、 屋内の作業環境騒音対策でも有効な手法です。また、さらに当社の騒音予測プログラムGEO NOISE(ジオノイズ)を併用することで、 ハイブリッドな対策検討も可能です。

Noise Visionを使った作業環境騒音の測定例
図-4-1 Noise Visionを使った作業環境騒音の測定例

作業環境騒音のシミュレーションモデル例
図-4-2 作業環境騒音のシミュレーションモデル例

一般に工場の騒音対策はシミュレーションモデルで検討します。既存の工場で騒音対策を検討する場合、 最初に騒音の現況をモデル化しますが、この現況モデルの精度が、その後の対策シミュレーションの信頼性にかかわってきます。

この現況モデルをチェックするため、Noise Visionで測定した地点の騒音をシミュレーションで計算し、 シミュレーション上で寄与の大きい騒音源が測定結果と対応しているかをチェックします。 このチェックを多くの地点で行うことでシミュレーションモデルの精度を上げることができれば、 より信頼性の高い対策検討が可能になります。

5. Noise Visionによる建物の遮音調査

隣室で遮音測定のための試験音(オクターブバンドノイズ)を発生させ、Noise Visionで測定する場合があります。
この場合、まず騒音計で音源側と受音側の室の音圧レベルを測定し、そのレベル差から周波数毎の遮音性能を求めます。 ここまでは通常の遮音測定ですが、どこの部位が弱いのかをNoise Visionで簡単に確認することができます。 これはオフィスの間仕切り壁やホテルの界壁の遮音性能を改善したい場合等に有効な手がかりとなります。

通常の遮音性能調査結果例
図-5-1 通常の遮音性能調査結果例

Noise Visionを使った透過音の調査結果例
図-5-2 Noise Visionを使った透過音の調査結果例

6. Noise Visionによる室内の音場調査

Noise Visionは室内の音の響きの調査等にも利用されています。
例えば、強い反射音やエコーは音響障害となる場合がありますが、Noise Visionの測定結果から、 壁や天井のどの部分から強い反射音が来ているのかを確認することが可能です。

Noise Visionを使った室内の反射音調査結果例
図-6 Noise Visionを使った室内の反射音調査結果例

7. Noise Visionを使ったその他の調査

Noise Visionは今までご紹介させていただいた調査の他にも、いろいろな現場で使われています。
例えば、環境騒音を監視するために屋外に騒音計を設置する場合がありますが、 その地点が調査地点として適切かどうかを判断するため、Noise Visionを使って強い反射音の影響がないかをチェックできます。
また、高架道路や高架軌道からの騒音の発生状況を確認することもできます。

Noise Visionを使った高架道路裏面の調査結果例
図-7 Noise Visionを使った高架道路裏面の調査結果例

8. 実験によるNoise Visionの性能確認

ここまで見ていただいたようにNoise Visionを使うことで、今までは出来なかった測定が可能になっています。 現場では15分程度で測定準備が終わり、一度測定すれば数分で分析結果を確認することができます。 そのためいろいろな現場で利用していただけるようになりましたが、厳しい条件下での測定も増えてきました。

たとえば室内の異音調査で、その発生音レベルがかなり小さい場合があります。 このような異音調査はクレーム関連が多いため、現場で測定できなかったということがないよう、 Noise Visionの測定限界を把握しておくことも必要です。

私たちは必要に応じて、当社の実験室でNoise Visionの性能を実験により確認しています。 低騒音の測定限界についての実験結果によれば、例えば1000Hzの暗騒音レベルが10dB程度の場合、 測定対象の騒音が16dB程度以上であれば、音の発生個所を突き止めることが可能です。

当社音響研究所での実験状況
図-8-1 当社音響研究所での実験状況

Noise Visionを使った無響室実験のデータ例
図-8-2 Noise Visionを使った無響室実験のデータ例

Noise Visionの低騒音測定限界の例
図-8-3 Noise Visionの低騒音測定限界の例

9. おわりに

Noise Visionをもっと気軽に調査に利用していただくには、測定の品質を確保したまま、 さらにコストを下げることも重要な課題です。そのため分析方法の簡略化はもちろん、測定データの提出方法を工夫し、 場合によっては測定後、分析画像ファイルをその場でお渡しするだけといった、お客様のニーズに合った方法で利用していただく場合もあります。

Noise Visionは当初16個のマイクロホンを搭載していましたが、現在では31チャンネルとなり、 この春には従来型のセンサー(260mm)よりも小さい小型センサー(直径165mm)や、 分析結果をビデオ映像に重ねて表示できるリアルタイム音源探査分析オプションも公開しています。

これからもNoise Visionを使うことで、今までできなかった調査を、 今までよりも気軽に利用していただけるよう努力したいと考えています。