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2025年9月26日に創業80周年を迎えた建材メーカー大手のDAIKENが、岡山県にある研究開発拠点・R&Dセンター内に、音響専門の実験棟『音環境ラボラトリー(音ラボ)』を開設しました。無響室、2つの残響室、2つの箱型実験室などを有し、さまざまな音響測定を可能にする同施設。早速、中を見ていきましょう。

■自社内に実験棟を持つ意義

はじめに、『音ラボ』の開設に至った経緯をR&Dセンター音技術研究室 室長の駒倉昌和氏に聞きました。

「弊社は建材メーカーとして知られていますが、住宅向けの防音室などを手がける音響事業も1982年から行っています。この事業を住宅以外にも広く展開していこうという計画があり、そのためには、社内に高性能な音響実験棟を持ち、技術力を上げていくことが必要であると考えたのが出発点です」

『音ラボ』が完成する前は簡易的な残響室で遮音試験や吸音試験を行っていて、そこである程度の測定はできたものの、JIS 規格に沿った設備ではないため、カタログに記載するデータは外部の試験場に試験体を持ち込んで計測していたとのこと。同じくR&Dセンター 音技術研究室の村岡昌紀氏は「自社内でさまざまな試験が行えるようになったことで、開発のスピードが上がる」と、その効果を語ります。これは、公的な試験場に出向く工程がなくなることで効率が上がるという側面だけでなく、無響室が備わったことによって分析の速度が上がったことも要因として挙げられるとのこと。村岡氏はこう話します。

「例えば防音ドアが設計通りに性能を発現していない場合、残響室と残響室の間にドアを入れて測定する"残響室法"では分からなかったことが、残響室と無響室の間にドアを入れて測定する"音響インテンシティ法"だと、"戸先のパッキンが弱い"といったことが一目瞭然で突き止められるので、開発のスピードが上がるのです」

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残響室。大型の開口を備えた試料カセットが挿入されている状態です。天井や壁に透明の拡散体を吊り、十分な拡散性を確保しています。

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試料カセットを無響室と残教室の間に挿入しようとしているところ。この方式により、効率よく測定を進めることができる。

この点について、日本音響エンジニアリングの柿沼誠はこう語ります。

「音響インテンシティ法は、たくさんの測定ポイントを測定し、測定結果を可視化することで、どのあたりから音が漏れているのかが分かるようになります。一方、残響室法は、JIS等の規格が先に制定した測定方法でごく一般的に採用されている測定方法になります。2つの測定方法にスムーズに対応すべく、カセット型の試験体を残響室/残響室の間、残響室/無響室の間に簡単に差し替えられるシステムを導入させていただきました」
この試料カセットも『音ラボ』ならではの工夫がされていると、日本音響エンジニアリングの石垣充が話してくれました。

「試料カセットは、①遮音性能を測りたい防音壁などを自由に施工できる枠だけのもの、②枠内全面がコンクリート壁のもの、③その一部に開口を設けて試験体を組み込めるものの3種類があります。③は開口を塞いで壁として使うこともあるので塞ぎやすい大きさの開口を設けるのが一般的ですが、先ほど防音ドアの遮音性能を測定するお話があったとおり、こちらではドアが組み込めるように大きな開口になっています。ドアの測定用に縦2,600mmの開口があり、上下に分かれた遮音扉でその開口を塞げるようになっています。その開口に1,000mm角試験体用の枠を入れて上の遮音扉を締めると1,000mm角試験体用の開口となり、両方閉めると室間の開口を塞ぐためのコンクリートの壁と同等になります」
無響室、残響室に続いて見せていただいたのが2つの箱型実験室。天井の上部が上層階の床面と想定されていて、箱型実験室Bは200mm厚の鉄筋コンクリート床で固定、箱型実験室AはプレキャストコンクリートやCLTなど材質を変えて床衝撃音の測定が行えるようになっています。R&Dセンター音技術研究室の岸征宏氏はこう話します。

「床の材質を変えての衝撃音測定はよく行っているのですが、大規模になるため外部の試験場で行おうとすると1週間泊まりがけで行くような工程です。それが自社内で完結するので効率はかなり良くなりますね」

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箱型実験室。こちらの部屋は天井=上階の床の素材を取り替えられるようになっていて、さまざまな素材の床衝撃音が測定できます。

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箱型実験室の上に設置された床衝撃源。タイヤを備えた装置は、階上での人の飛び跳ねなどを想定した衝撃を加えることができます。

■構想から開設までの道筋

前出の駒倉氏は、『音ラボ』の構想が立ち上がった時点である程度のイメージはできていたといいます。
「外部の試験場で測定を行う際に、運用部分で扱いやすいところと扱いづらいところがあり、良いところは取り入れ、悪いところは改善した形にできればと考えていました。それで、手始めに日本音響エンジニアリングさんに問い合わせをさせていただいたわけなのですが、それとは別に他社さんの音響実験棟を見学する機会があり、そこが我々の求めているもの、ほぼそのもので。そこを手がけたのが日本音響エンジニアリングさんだと知り、これは話が早いということで進めていったわけです」

建設は2024年8月20日に着工。立地は海に面した埋立地で、工業地帯のため大型トラックの往来も多く、日本音響エンジニアリングとしては騒音への対策を入念に行いました。大規模な試験体の搬入に備えた開口を確保しながら、建屋と試験室トータルで必要な遮音性能を達成できるよう、建屋の外装材、屋根材、シャッターなども遮音性能の高いものが採用されています。

建設中は、日本音響エンジニアリングの中西祐太が現場管理を担当。その工程を、「大きな搬入物が多かったので、導線の確保を現場管理する上で特に意識して取り組みました。特に試料カセットは特殊車両で運んできているので、不備がないように細心の注意を払いました」と振り返ってくれました。そして2025年11月13日に開設。同社内のあらゆる部門が連携しながら、より高性能な建材・素材の研究開発が行われる環境が整いました。冒頭で紹介した駒倉氏のお話のとおり、今後DAIKENの技術が「住宅」の枠を超えて世の中の音環境改善において存在感を増していきそうです。

■『音ラボ』の開設と併せて導入していただいた垂直入射吸音率測定システム「Winzac 8」

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垂直入射吸音率測定システム「Winzac 8」

今回の『音ラボ』の開設と併せて、弊社の広帯域対応垂直入射吸音率測定システム「WinZac 8」を導入していただきました。WinZac 8は同じ管径の従来型音響管に比べ2倍以上高い周波数まで吸音率および音響透過損失を測定可能です。

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取材にご協力を頂いた皆さん
左からDAIKEN R&Dセンター 音技術研究室の岸征宏氏、村岡昌紀氏、駒倉昌和氏、
日本音響エンジニアリングの中西祐太、石垣充、柿沼誠

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