音・振動の実験室、計測システムと技術サービス 音響実験室 残響室

残響室の用途と目的

残響室とは、空間内に「拡散音場」を近似的に作り出すため、壁、床、天井を高い反射性に仕上げた音響実験室です。
すべての音を吸収する無響室とは対極にあり、「内部の多重反射と残響によって生じる音場」を積極的に活用することで、特有のデータ計測と処理を行います。


伝統的な3つの使用目的


主に吸音材や遮音材の評価などに用いられ、以下の3つが代表的な測定項目です。

(1) 音響材料の残響室法吸音率の測定
(2) 音響材料の音響透過損失の測定
(3) 各種機器の音響パワーレベルの測定


進化する残響室の用途:自動車から航空宇宙まで


近年、残響室は材料評価の枠を超え、最先端の開発現場で多様な広がりを見せています。

(4) 実践的な大規模測定: 自動車の車体における総合的な遮音性能評価など
(5) 最新デバイスの評価: ノイズキャンセリングヘッドホンの高度な精度評価環境としての活用
(6) 極限環境のシミュレーション: 航空宇宙分野における、打ち上げ時の大音圧を模擬した音響試験(RFAT等)

これらも拡散音場を利用した試験であり、残響室の応用例と言えます。
当社は、あらゆる要求仕様を満たす残響室の基本計画・設計・施工から、目的に最適化された専用測定システムの納入、運用サポートまでを一気通貫でご提案。お客様の高度な評価環境構築を強力にバックアップします。

残響室の設計

残響室の設計において、正確な測定環境を構築するための重要な鍵となるのが「室容積」と「室形状」です。


室容積:低周波測定の精度を左右する要件


一般に、低周波数域まで正確に測定するには大きな容積の残響室が必要です。周波数が低く(波長が長く)なるほど、小型の部屋では音圧分布に偏りが生じやすく、理想的な拡散音場から外れてしまうためです。


室形状:不整形からスペース効率の良い直方体まで対応


従来、日本では壁や天井を傾斜させて反射音の偏りを抑えた「不整形」の残響室が主流でした。しかし近年は、適切な室寸法比の選定と拡散体などによる音場改善によってISOなどの工業標準規格を満たした「直方体」の残響室も認められるようになり、導入の選択肢が広がっています。


多様な施工ニーズと高度な測定要件に応える、当社のソリューション


当社は、残響室の設計・施工において、確かな技術力と多彩な提案力でお客様の課題を解決します。

・コンクリート造からパネル製まで柔軟に対応
 高い剛性を誇る本格的なコンクリート造の残響室から、耐荷重制限のある場所にも手軽に設置できるパネル製の残響室まで、豊富な施工実績を誇ります。


・高精度な透過損失測定を実現する「結合実験室」
 音響透過損失の測定に不可欠な、2つの残響室(または残響室と無響室)を結合した高度な実験室の構築にも対応。高い遮音性能を持つ試料の特性を正確に測定できる構造ノウハウを有しています。

・試験工数を大幅に削減する「試料取付機構」
 測定精度の確保だけでなく、試料のセッティングと密閉(シール)作業を自動化する「試料取付カセット」など、お客様の運用工数を削減する実践的なソリューションをご提供します。

自動車用防音材の評価に

自動車開発における小型残響室の課題

現在、自動車産業では車体の「軽量化」と「静粛性」を両立するため、防音材料の適材適所な配置が求められています。それに伴い、材料の小型サンプルを評価する「小型残響室」のニーズが高まっています。 しかし、小型残響室はその容積の小ささゆえに、温湿度などの環境変化が測定結果に大きく影響しやすく、サンプルの再設置時における再現性の確保も大型残響室に比べて非常にシビアであるという、技術的な課題を抱えていました。


課題を克服する、当社の測定ソリューション


当社はこうした課題を解決するため、比較的小さなサンプルの音響性能を正確に測定できる、小型残響室向けの様々な「音場改善策」を開発しています。
測定システム自体にも吟味を重ね、小型残響室特有の測定結果の不安定性を極力排除。残響室単体での「残響室法吸音率測定」や、残響室+無響室での「音響透過損失測定」において、自動車メーカーや部品メーカー様、建設会社様の標準設備として数多く採用される高い実績を誇ります。


自社で試験を受託する「実務者」だからこそのサポート力


当社の最大の強みは、私たち自身が音響試験の受託を行っている「試験実務のエキスパート」であることです。
単なる実験室の施工メーカーという枠を超え、日々現場で測定を行っている当事者の目線から、納入後の精緻な運用手法やトラブルシューティングまで、お客様の開発業務をトータルにサポートいたします。

コンポーネントや自動車の遮音性能の評価に

自動車開発において、静粛性(NVH)の向上は最も重要なテーマの一つです。当社は材料単体の評価にとどまらず、より実践的な「コンポーネント評価」や「実車評価」に対応する高度な残響室ソリューションを提供しています。


組み付け状態での遮音性能、音漏れを特定する「コンポーネント評価」


材料単体では高い遮音性を示しても、組み付け(アセンブリ)後には隙間などから音漏れが生じ遮音性能の欠損が生じます。そのため近年では、ドア、フロアパネル、ダッシュボードといったコンポーネント状態での評価が不可欠です。

・大型の結合試験室の構築
 実寸大のコンポーネントを評価するため、比較的大きな「残響室+無響室」や「残響室+残響室」の結合試験室を設計・施工します。

・音響インテンシティ自動測定による工数削減
 マイクロホントラバースを使った近接音響インテンシティの自動測定システムを導入することで、複雑な部品の音漏れ経路を可視化し、試験時間を大幅に短縮します。


全方位からの騒音侵入を模擬する「実車(完成車)評価」


EV化に伴いエンジン音が消失した現在、外部からの騒音侵入をいかに防ぐかが開発の鍵を握ります。そこで威力を発揮するのが、実車を残響室内に設置して行う車体総合遮音性能の評価です。

・短時間でウィークポイントを網羅的に把握
 残響室内(拡散音場)は音圧レベルがほぼ一様になるため、車両の全周囲から均一な音響負荷をかけることができます。この状態で車室内を測定することで、ドアシールやボディの隙間など、車両全体の遮音の弱点を極めて短時間で特定し、手戻りのないスムーズな開発を支援します。