音空間事業本部 石垣 充

1. はじめに

平成元年に開局した、千葉県を中心に関東全域に発信しているFM放送局「ベイエフエム」が、放送設備の更新時期を迎え、 平成18年12月に幕張のワールドビジネスガーデン(WBG)27階に移転、運用を開始しました。
以前より、ここでサテライト「スタジオマリブ」として運用していましたが、このたび同フロアでの増床を行い、 千葉中央の旧本社機能のすべてをWBGに集約しました。

2. コンセプト

幕張ベイエリア、WBGの高層階にあるスタジオマリブからは、東京湾と都心のビル群、遥か遠くの木更津や富士山までもが一望できます。 この景観を妨げないように、ガラス窓を多用した「開放感のある空間」を演出し、更に、限られた空間に、 贅肉をギリギリまで削ぎ落とした「省スペース」のスタジオの計画と、放送エリアを昼専用と24時間対応の2つのエリアに分けた「省エネルギー」対策を目論んだプランニングをしています。

特に省エネルギー対策では、オフィスタイムのビル空調の積極的な活用と、S側エリアのみで夜間稼動ができるように計画し、ランニングコストの削減を目指しました。

写真1 WBG27階から都心方向を望む
写真1 WBG27階から都心方向を望む

3. レイアウト

N側エリアには、公開イベントやライブステージのための多目的スペースと、2つの生放送用スタジオ、録音専用スタジオ、 及びCDライブラリーが配置されています。生放送のスタジオの1つは、音響性能に優れた既設のスタジオを、そのまま仕上表面の改装を行い、 昼の番組を中心にした放送エリアとしました。

S側エリアには、マスターを核に、2つの生放送用スタジオと、制作スペースが配置されています。オフィスエリアも同じS側にあり、 放送エリアとの境界部分にはNEWSルームとCM登録室がある効率の良いレイアウトとなっています。境界部分には引き戸を設けて区画し、 独立した24時間稼動の放送エリアを構築しています。

図1 27階放送エリアレイアウト
図1 27階放送エリアレイアウト

4. 主要室の紹介

4-1 No.4スタジオ

大きな窓がこのスタジオのポイントです。眺望を守るために外壁側の壁を「ガラスだらけ」にしています。
ここからの眺めは素晴らしく、パノラマの海と、日の出はもちろん、富士山に沈む美しい夕日を堪能できます。

音響性能を考えれば、ガラスは最小限したいところですが、眺望を最大限に生かすため、敢えてチャレンジをしました。 窓以外の部分で吸音処理を効率よく行い、音場を整えて、爽快な気分で放送できるスタジオが完成しました。

4-2 No.5スタジオと制作スペース

No.5スタジオは、マスタールームからも直接コントロールできるように中央に配置されていますが、 広い制作スペースに面して開放的に窓を設ける事により、このスタジオからも、すばらしい景色を見ることができます。

写真2 No.4副調整室
写真2 No.4副調整室

写真3 No.4スタジオのガラス窓
写真3 No.4スタジオのガラス窓

写真4 No.5スタジオから制作スペース方向を望む
写真4 No.5スタジオから制作スペース方向を望む

写真5 制作スペース 右手がゲストスペース
写真5 制作スペース 右手がゲストスペース

4-3 多目的スペース

改修前の多目的スペースは、天井裏に大きな空調設備が納まっていたため天井の低い空間でした。 今回の改装で、空調機械を更新し、ダクトワークを改善することで改修前より天井が高く、より快適なスペースに生まれ変わりました。 公開放送や、ライブ演奏等に活用され、通常は主に打合わせスペースとして使われています。

写真6 多目的スペース
写真6 多目的スペース

4-4 No.2スタジオ

主に電話リクエスト生放送番組のためのスタジオとして、CDライブラリーに隣接して計画されており、 常設の電話オペレーターデスクも設置されています。
スタジオ前のスペースは、ライブラリーへのアクセス等を考慮して広めに設定され、石畳の中庭をイメージした、 おしゃれな空間になっています。

写真7 No.2副調整室
写真7 No.2副調整室

写真8 No.2スタジオ
写真8 No.2スタジオ

5. 音響計画(吸音処理)

仕上のお色直しをして改装されたNo.1スタジオは、開設当初からラジオスタジオとしてはかなりのハイスペックな計画で作られていました。

壁厚は1m程度で、吸音層だけでも45cmもあるレコーディングも可能なスタジオでした。対照的に、 移転に伴い新設されたスタジオは、実用重視で、壁厚は33cm、吸音層は、ほんのわずかな寸法になっています。
中低音域用の吸音層は、ある程度の容積が必要となりますから、天井での吸音処理を計画し、 圧迫感が生じない最小限の下がり天井を設けました。

このような吸音処理により、No.1スタジオに比べればややライブ気味ですが、「省スペース」ながら快適で、実用的な落ち着いた音場になっています。

図2 スタジオ断面イメージ
図2 スタジオ断面イメージ

6. 最後に

「ベイエフエム」のWBG移転プロジェクトでは、設計など準備期間のかなり早い段階から各関係者(ビル管理会社、 機器メーカー、工事会社、スタジオスタッフの方々)と連携がとれたことが、すばらしいスタジオの完成につながったと思います。 きっと放送を聴いていただければ感じていただけると思います。このようなすばらしいプロジェクトに参加させて頂いた事を感謝しております。