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発行日:2023年04月13日 | 更新日:2023年05月10日


騒音対策の検討・工事業務は近隣からの苦情対応が多いため、具体的な内容を写真等でご紹介できないケースが多いです。そこで最近の検討・対策例の概要のみをご紹介させていただきます。

工場の対策

工場には多数の生産設備等があり、また重機作業等もあるため発生音は様々です。屋外にも騒音発生源が多く、屋内にも騒音のかなり大きな発生源があり、屋根・壁・窓から屋外に騒音が透過しています。他にも屋根のモニターやルーフファン、壁の給排気口や有圧扇、屋外の配管等からも騒音が発生しています。そのため私たちは先ず現場で詳細な騒音調査を行い、状況を把握します。また敷地境界だけでなく、苦情をいただいている近隣の住宅内で調査を行うケースもあります。敷地境界と住宅内の騒音状況は同じではないため、特に苦情問題を解決するためには、室内の調査が重要な手がかりになる場合があります。

① 対策の考え方

工場にある多数の騒音発生源に対して、騒音問題を解決するためには、どの騒音発生源に対して、どのような対策を行えばいいのかを自社の騒音予測ソフトウェアを使ったシミュレーションで検討しています。
対策方法は防音壁を建てる、設備を防音カバーで囲う、ダクト・ガラリには風は流れるが騒音が減衰するサイレンサを設置する、また工場建物の壁・天井に遮音壁、遮音天井を施工するなど、多くの方法があります。騒音問題を解決するためには、最適な対策箇所と対策方法の組合せについての検討が必要なため、当社ではシミュレーション検討が必須となっています。

② 対策効果について

対策効果は対策案の仕様により様々です。防音壁だけの場合、効果は一般には最大で10dB程度です。防音壁を高くした場合の単純な計算上の効果はそれ以上になる場合もありますが、実際には防音壁と建物間の多重反射の影響、防音壁からの透過音の影響で効果が下がります。サイレンサについては比較的大きな効果を得ることが可能です。ただしすべての騒音対策を通して言えることですが、対策後には対策しなかった騒音発生源の影響はそのまま残るため、あらかじめシミュレーション検討時にその他の騒音源もモデル化しておくことが必要になります。

図 防音壁設置例

図 防音壁や防音カバーに用いられる防音パネルのカットモデル

空調室外機の対策

工場以外のお客様から当社に騒音対策のご相談をいただく場合、空調設備が原因となっているケースがよくあります。特に業務用の室外機は発生音が比較的大きく、低周波音や中低音で特定の音色が目立つことで問題となっていたケースもあります。
また室外機に低騒音モードが設定されていても、ある条件になると自動的に低騒音モードが強制解除されるため、騒音が急に大きくなり、規制値を上回って苦情となっていたケースもありました。

① 対策の考え方

可能であれば設備の移設は選択肢の一つです。過去には移設してさらに防音壁で囲い、問題が解決した事例もあります。防音壁で囲う対策は、一般の防音壁対策と同様に背後の建物の壁からの反射音の影響で、十分な効果が得られない場合があります。また室外機を高い防音壁で囲う対策案では、吸気と排気が狭い範囲で循環(ショートサーキット)しないように注意する必要があります。そのため防音壁の一部にサイレンサを設置した吸気開口を作る場合もあります。
防音壁以外の対策では、室外機側面の吸気口と上部の排気口にサイレンサを設置する方法がありますが、特に低音域ではあまり効果は期待できません。対策効果を上げるには、室外機全体を防音カバーで囲い、吸排気口にサイレンサを設置する方法があります。またバルコニーの室外機置場全体を壁で囲い、吸排気口にサイレンサを設置した対策例もあります。

② 対策効果について

対策効果は様々ですが、低周波音対策も含めて、計画時のシミュレーションによる予測結果と同様の効果が得られており、15dB以上の対策例もあります。

ガラリ・有圧扇の対策

建物の外壁にある給排気口のガラリ・有圧扇から発生する騒音が問題となっているケースもよくご相談をいただきます。発生源となるファン、有圧扇は特定の音色の騒音が目立つ場合があり、低周波音が問題となっていたケースもあります。近隣の方から航空機のような騒音が聞こえてくると苦情をいただいていたケースもありました。

① 対策方法の考え方

ガラリ、有圧扇は高い位置に設置されていることが多いため、防音壁での対策は一般には有効ではありません。ガラリからの発生音に対して、必要な対策量が比較的小さい場合は防音タイプのガラリを使用する場合があります。それ以外ではガラリ、有圧扇にサイレンサを設置することになります。サイレンサは内側に吸音材を貼ったタイプ、空気の流れる方向と平行に吸音材の仕切板を入れたタイプなどがあり、後者のタイプが一般には対策効果が大きくなります。またサイレンサの長さを長くすると効果が大きくなります。そのため、シミュレーションによってどの周波数の騒音をどの程度下げれば問題が解決するかを検討し、最適なサイレンサを設計して設置しています。

図 サイレンサー

② 対策効果について

対策効果は様々ですが、対策が比較的難しい低周波音で10dB以上の対策例もあります。

固体伝搬音の対策

お客様側で吸音対策、遮音対策を行ったのに効果が出なかったと当社にご相談いただくことがあります。その場合は、固体伝搬音が原因となっているケースがあります。この固体伝搬音と呼ばれる騒音は、設備から発生した振動が原因となって建物の壁等に伝搬し、騒音となって放射している現象です。ほとんどすべての設備からは騒音と振動が発生します。騒音は発生源と伝搬状況が比較的イメージしやすいため、対策もイメージしやすいのですが、振動が原因で騒音に変わる固体伝搬音については、一般の方にはなじみが薄く、対策が見逃されるケースがあります。また振動は設備の回転に起因するため、特定の目立つ音色の騒音となって放射することが多く、苦情になりやすいと言えます。

① 対策方法の考え方

当社では屋内の作業環境騒音の対策もシミュレーションで検討しています。シミュレーションにより、毎年少しずつ騒音源を対策した場合の効果を推定することも可能です。
対策は発生音の大きい騒音源を防音カバーで囲う対策が効果的です。設備から発生する熱に対しては、防音カバーに給排気口を設け、その部分に防音フード等を設置することができます。騒音源のまわりに比較的小さい防音衝立、あるいは室内に防音壁を設置する方法もあります。ファンについては本体を防音カバーで囲い、吸排気口にサイレンサを設置する方法があります。壁等に吸音材を施工する方法もありますが、ある程度の効果を得るためにはかなりの面積を対策する必要があります。またこの方法は壁等で反射する騒音を低減することはできますが、騒音発生源から直接作業者に伝わる騒音には効果がないため、注意が必要です。
対策効果はシミュレーションで検討が可能ですが、実際の対策については場内の導線、視認性、作業性、メンテナンス性等の多くの課題があります。

② 対策効果について

対策効果は様々ですが、固体伝搬音だけであれば、防振対策によって10dB以上の対策も可能です。また低周波音で20dB以上の対策例もあります。

作業環境騒音の対策

最近は工場内の騒音対策である作業環境騒音の改善についてご相談をいただくケースが増えています。小さな作業エリアであれば、一気に作業環境騒音の対策を検討することも可能ですが、大きな作業エリアの場合は、まず当社の音響カメラで騒音を可視化し、スクリーニングを行った上で対策の優先順位を決め、検討した事例もあります。対策の最終的な目標は耳栓等の保護具が必要ない管理区分Ⅰですが、管理区分Ⅲのエリアを一段階改善し、管理区分Ⅱをめざしたいというご要望もよくいただきます。今までのお客様の中には管理区分Ⅰ(85dB未満)よりも、さらに静かな騒音低減の目標値を設定されているケースもありました。また、管理区分とは別に、特定の不快な音色の騒音を低減したいというご要望をいただき、騒音源を特定したケースもありました。

① 対策方法の考え方

当社では屋内の作業環境騒音の対策もシミュレーションで検討しています。シミュレーションにより、毎年少しずつ騒音源を対策した場合の効果を推定することも可能です。
対策は発生音の大きい騒音源を防音カバーで囲う対策が効果的です。設備から発生する熱に対しては、防音カバーに給排気口を設け、その部分に防音フード等を設置することができます。騒音源のまわりに比較的小さい防音衝立、あるいは室内に防音壁を設置する方法もあります。ファンについては本体を防音カバーで囲い、吸排気口にサイレンサを設置する方法があります。壁等に吸音材を施工する方法もありますが、ある程度の効果を得るためにはかなりの面積を対策する必要があります。またこの方法は壁等で反射する騒音を低減することはできますが、騒音発生源から直接作業者に伝わる騒音には効果がないため、注意が必要です。
対策効果はシミュレーションで検討が可能ですが、実際の対策については場内の導線、視認性、作業性、メンテナンス性等の多くの課題があります。

② 対策効果について

ある地点だけを対象とした場合は10dB以上の対策例があります。作業エリアの騒音源の可視化とシミュレーション検討により、複雑な作業環境騒音の対策も効果の予測が可能になってきています。

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