技術ニュース

発行日:2022年11月14日 | 更新日:2023年05月10日

2022年8月21~24日にイギリスのグラスゴーで開催された騒音制御工学に関する主要な国際会議であるINTER-NOISE 2022 (International Congress and Exposition on Noise Control Engineering)にて、当社で開発した新しい測定装置(WinZac8-TL、16本のマイクロホンを用いた広帯域垂直入射透過損失測定装置)を発表いたしました。(https://internoise2022.org/)

当社は、「音響技術を通じて世界に貢献」するために、日々新しい技術開発に取り組んでおります。その一つの成果として、音響材料評価技術におけるブレークスルーともいえる今回の新型音響管を岡山県工業技術センターと共同開発しました。今回のINTER-NOISE 2022 での発表は、この「音響技術」を海外に発信するためのものです。

(ソリューション事業部 中川 博)

INTER-NOISE 2022の概要

まず、INTER-NOISE について簡単にご紹介いたします。
INTER-NOISE は、1974年に設立された騒音制御、音響、振動に関連する世界的なコンソーシアムであるI-INCE (The International Institute of Noise Control Engineering、国際騒音制御工学会、https://www.i-ince.org/) が毎年開催している国際会議です。
INTER-NOISE 2022は、その51回目の国際会議となり、2022年8月21~24日にイギリスのグラスゴーにあるスコットランド・イベント・キャンパス(SEC)で開催されました。今回のテーマは「Noise Control in a more Sustainable Future(より持続可能な未来における騒音制御)」で、くしくも同じ年の気候変動に関する会議COP26も同じくSECで開催されました。

スコットランドイベントキャンパス(SEC)

技術発表(テクニカルセッション)は、下記の20のメイントピックに関連したものが15の会場で並行して行われました。


  • 1. Physical Acoustics

  • 2. Advanced Measurement Methods

  • 3. Modelling and Simulation

  • 4. Flow-induced Noise and Vibration

  • 5. Vibro-acoustics and Structure-borne Noise

  • 6. Signal Processing, Reproduction and Diagnostics

  • 7. Thermo- and Aero-acoustics

  • 8. Aircraft Noise

  • 9. Environmental Noise

  • 10. Industrial Noise

  • 11. Building Noise Control and Architectural Acoustics

  • 12. Transportation Noise and Vibration

  • 13. Underwater, Ship and Offshore Acoustics

  • 14. Active Control

  • 15. Materials

  • 16. Community Noise and Planning

  • 17. Human Perception, Response and Health Impacts

  • 18. Soundscapes and Acoustic Quality

  • 19. Profession, Training, Education and Outreach

  • 20. Theme-related: Noise Control in a more Sustainable Future

筆者は当社が開発した新型音響管の計測技術を、”2. Advanced Measurement Methods” のセッションにて発表を行いました。当社の別部署であるデータサイエンス事業部からも ”8. Aircraft Noise” のセッションにて航空機騒音モニタリングに関する発表を行いました。
また、INTER-NOISE 2022では、36の企業がブースを設けて展示していました。展示としては、音響カメラに関する製品が多く、その他モニタリングシステムやノイズマッピング(ソフトウェア)などの展示がありました。

展示ブースエリア

16マイクロホンを用いた垂直入射透過損失測定装置 WinZac8-TL の発表

今回発表した新型音響管に関する計測技術というのは、建築や自動車などの産業資材で使用される吸音材料の吸音性能、遮音性能を計測するための音響管を用いた計測技術を発展させたものです。

現在規格で規定されている垂直入射吸音率計測(2マイクロホン法、規格:ISO 10534-2, JIS A 1405-2, ASTM E1050)および垂直入射透過損失計測(4マイクロホン法、規格:ASTM E 2611)では、音響管の内径で規定される周波数(具体的には、音響管内を平面波のみが伝搬する周波数帯域)のみが適用可能であるのに対し、マイクロホンを8本(吸音率計測)、16本(透過損失計測)用いることで、従来の規格で規定されている上限よりも3倍以上高い周波数までの測定が可能になるという新しい計測法です。この計測法を用いることで、音響管を用いた材料の吸音・遮音性能評価の常識を塗り替える可能性を秘めております。(特許申請済)

新型音響管での測定結果(グラフ中の赤線)

INTER-NOISE 2022の発表は、対面とリモートのハイブリッドで実施されました。
対面の場合は、パワーポイントで作成したプレゼン資料を発表前に事務局にアップロードしておき、発表時にチェアマンが予め起動したプレゼン資料を操作しながら発表するのに対し、リモートの場合は、事前に発表動画を作成したものを発表時間にチェアマンが流す形で行われました。

当社の発表タイトルは、“Extension of frequency range of the sixteen-microphone method in normal-incidence sound transmission loss measurement”(垂直入射透過損失における16本マイクを用いた周波数レンジの拡張)で、対面で発表いたしました。英語での発表ということもあり、発表内容を完全には伝えられなかったところはありましたが、質問もいくつかいただき、筆者らの研究成果は十分伝えられたと思います。

著者発表風景

INTER-NOISE 2022を終えて

コロナ感染が完全に収束はしないものの、世界的には経済を回しながらの共生を図りつつある中、INTER-NOISEも昨年は完全オンラインでしたが今年は対面+オンラインのハイブリッドでの開催となりました。発表者は8割程度が対面で、やはり研究者も対面での発表を待ち望んでいたことを伺えました。

コロナウイルス感染の第7波はピークを過ぎたとはいえ日本ではマスク着用が必須の状況であったのに対し、他の海外同様グラスゴーでも日本人以外はほとんどマスクを着用しない状況でした。当時(8月末)は日本への帰国前72時間以内PCR検査を行い陰性であることが帰国の前提条件であったことから、現地で感染しないために筆者を含め日本人の多くは現地でもほとんどマスクをしていたような状況でした。その後9月からは日本の対応も緩和されたので、その時期に訪問することができれば、現地をもっと楽しめたのではと思うと少し残念な気持ちがあります。

来年の INTER-NOISE は、千葉県幕張で開催されます。次回も対面で積極的な議論ができることを願っています。

新着記事一覧