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発行日:2023年07月13日 | 更新日:2023年07月25日


2023年5月24~26日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」に出展し、「音で、クルマを新しく。」をテーマに、次世代自動車に求められる車室内の音のデザインとコントロール、新たな計測技術について提案しました。
「音で、クルマを新しく。」するためには 、どうしたら良いのでしょうか?本記事では、当社の提案内容についてご紹介いたします。

「音で、クルマを新しく。」するために、何をすればいいのだろう?

電気自動車の台頭、静粛性の向上、モビリティのサービス化など、車室空間のあり方が変化しています。例えば、電気自動車の車室内は大きなエンジン音が消え、大変静かになりました。自動運転技術も相まって、静かになった車室内ではこれまでにはできなかったクルマの楽しみ方が検討されています。このような状況においては、音の大きさ・高さだけでなく、そのバランスや方向感にも大きな影響を受ける人間の聴覚を考慮する必要性も高まっていくことでしょう。一方で、電気自動車はインバータノイズ等の高周波音が目立つ場合もあり、対策を行わなければならない周波数はこれまでとは異なるという側面もあり、防音材はこれに対応していく必要があります。
また、環境配慮の観点から新しい防音材が開発されたり、デジタル化や開発スピード向上が求められたりと、開発手法もこれまで通りではなくなっています。
このような時代のなか、「音」という側面からクルマの新しい時代に挑戦するために、当社は3つの提案を行いました。

提案1:音をデザインする ― 音の感性トレーニング

静かになった車室内では、これまで以上に車室内の音をデザインする必要性が高まっています。デザインにあたっては、理想とする音のイメージがあるかと思いますが、そのイメージをチームに伝えるため難しさを感じたことはないでしょうか?

例えば、「1kHz」という言葉から、どんな印象の音で、どんなものから出ていて…などとイメージするのは一定の経験がある人でないと難しいでしょう。かといって「ホーというような高い音」というあいまいな言い方をいてしまうと、人によって受け止め方がバラバラでなおさら混乱してしまいます。このように、音を表す物理量と聴こえる印象の結びつきの個人差が、音について伝える難しさの原因とひとつであると考えられます。

これまで「音を表す物理量と聴こえる印象を結びつける」トレーニングは、OJTによって実施されることが一般的でした。しかし、経験の浅いエンジニアの方が十分な能力や知識を身につけるには長い時間が必要です。

当社では、音に関する共通言語をもつためのトレーニングとして、「真耳®Online」をご提案しています。真耳®Onlineなら、実車環境がなくても、ロードノイズ・エンジン加速音・風雑音など自動車業界向けの訓練コンテンツを使って、効率的な能力向上が可能です。

会場ではこの真耳®Onlineのトレーニング体験を設置しておりましたので、多くのお客様がご自身の聴感能力について驚きをもって体感されていました。

提案2:音をコントロールする ― 音響シミュレーションを用いた開発支援

開発スピードの向上が求められる中で、音をコントロールするためにできることは何でしょうか?

それに対する解のひとつが、試作レスを実現する音響シミュレーションです。一方で、音響シミュレーションは設定する条件次第で現実の実験結果から乖離することも多く、悩まれる方も多いかと思います。当社では、これまでの音についての実験・測定の知見を活かし、シミュレーションを用いた音響材料の総合開発支援を開始しました。音響メタマテリアルの解析をはじめ、ご相談いただけますと幸いです。

本展示会では、2022年10月にアップデートした「積層構造音響特性予測ソフトウェアSTRATI-ARTZ」についても展示しました。新しく追加した音響モデルである「Katoモデル」は、繊維材料のパラメータ(繊維径・繊維密度・嵩密度)だけを用いて吸遮音性能を予測することができるモデルです。本モデルは、流れ抵抗や粘性特性長・熱的特性長などを用いる従来モデルとは異なり、製造に直結したパラメータで表現できることから、より開発に近い検討を行うことができます。また、STRATI-ARTZは伝達マトリクス法を用いた1次元でのシミュレーションですので、計算スピードが非常に速く、3D-CAEを実施する前の当たり付けにも非常に有用です。

提案3:音を計測・評価する ― 防音材性能測定

電気自動車が普及していく中で、高周波域に対応した防音材が注目されています。これらの防音材の性能を測定するためにはどのようにすればよいのでしょうか?

防音材の性能を表すためには、音響管を用いて垂直入射吸音率や垂直入射透過損失を測定することが一般的です。ところが、音響管の径は測定したい周波数の波長に合わせる必要があり、高周波域においては例えば直径15mmなどの非常に細い管で測定しなければなりません。直径15㎜の円になるよう原反から測定サンプルを切り出すのですが、切り出し箇所の選定、切り出し技術、音響管への設置と測定を困難にする多くの課題がありました。

今回展示した「広帯域対応 垂直入射吸音率測定システム WinZac 8」は、これらの課題を解決する画期的な測定システムです。同一管径でも2倍以上の周波数まで測定できることで、高周波域でも大きな測定サンプルを使用することができ、前述した課題を改善することができます。

会場では多くのお客様からシステムについてのご相談をお受けしました。

また、弊社では材料単体の性能評価だけではなく、成形品の残響室法吸音率・音響透過損失の受託試験もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

まずは日本音響エンジニアリングに相談してみませんか?

当社は50年以上にわたり、レコーディングスタジオなどの音響内装工事を母体とし、「いい音」にこだわりを持って事業を進めてまいりました。本展示会では、「音で、クルマを新しく。」するために当社でできる3つのご提案を行いましたが、その他、車内音のデザインや音響実験室・試聴室の設計施工をはじめ、工場の騒音音対策まで幅広いご提案が可能ですので、音に関する困りごとがございましたら、ぜひ当社までご相談いただけますと幸いです。

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