NOE技術ニュース

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発行日:2026年09月18日 | 更新日:2026年09月18日

取引先のお客様を迎えることもある評価試聴室。インテリアは落ち着いたトーンで統一されています。

業務用カラオケシステム「DAM」 を通じてうたう楽しさを届け、ビッグエコーなどのカラオケ店舗運営によりうたう環境を提供する株式会社第一興商(以下、第一興商)が2026年2月に本社を移転し、それまで東京都内の3拠点に分散していた各部門をJR高輪ゲートウェイ駅近くのビルに集約しました。部署間のよりスムーズな連携を実現するこのプロジェクトにおいて、日本音響エンジニアリングは「評価試聴室」の移転を担当しました。

第一の要件は「音が変わらないこと」

移転に際しての要件の一つに「移転前の部屋と音が変わらないこと」がありました。その点について、第一興商 開発本部 商品開発部 開発三課 リーダーの安藤巨高氏はこう話します。

第一興商 開発本部 商品開発部 開発三課 リーダーの安藤巨高氏。

「カラオケ本体、マイク、アンプ、スピーカーの開発は、評価試聴室での音を基準に進められます。また、開発スタッフだけでなく、営業スタッフや店舗スタッフも評価試聴室で“正しい音”を確認し、それをもとに仕事を行いますので、基準をぶれさせないためにも移転前と音が変わらないことが求められていました。日本音響エンジニアリングさんは、マイクの製造パートナーであるメーカーさんのスタジオも手がけられていて、私自身そのスタジオの音を何度も聞いていたこともあり、信頼感がありましたのでお願いすることにしました」

カラオケ本体やスピーカーの聞き比べができる環境を整備。スピーカーは、カラオケボックスを想定し、あえて部屋の隅に設置しています。

移転前の部屋と音が変わらないことが求められた今回の評価試聴室作り。ポイントは「反射した音をしっかり聞ける環境」であると安藤氏は語ります。

「レコーディングなどに使うスタジオは響きを抑えた環境であることが多いと思うのですが、当社の評価試聴室は、歌ったときに気持ちよさを感じる音の返りが必要なのです。そういう意味では、ここの音はカラオケボックスの音に近いですね」


旧環境を再現するため、移転前の評価試聴室と空間の大きさを合わせた上で音の調整が行われました。日本音響エンジニアリングの中西祐太はその工程をこう話します。

日本音響エンジニアリングの中西祐太。

「壁の中の構造は予測した吸音と反射で作り、移転前の評価試聴室で測定した残響時間のデータや主観評価に近づくように吸音と反射の調整をしていきました。その後、安藤さんに音の響きを確認していただき、さらに調整をしていきました」


一方、新たに加えられた要件として「遮音性能の向上」がありました。移転前の環境は遮音性能がそれほど高くなく、隣の会議室への音漏れが課題になっていたとのこと。また、評価試聴室ではマイクの落下試験も行うため、落下時に周囲や階下に音が響き渡らないようにすることも求められました。「遮音については、予算をかけてしっかりしたものにしたいという思いがありました」と安藤氏は振り返ります。

この要件に対して日本音響エンジニアリングの宮崎雄一は話します。

日本音響エンジニアリングの宮崎雄一。

「遮音性能を高めると、低域のエネルギーが残りやすくなります。その低域を処理するために吸音材を入れると高域も吸われていってしまうので、ある程度高域を返してあげられるようバランスよく壁の中の構造を調整しました。また、将来的に“もう少し声の返りが欲しい”などの要望が出てきたときに対応できるよう、壁の中の調整を行えるようにしています」

加えて、室内の響きをある程度コントロールできるよう、吸音用のカーテンも設けられました。

吸音用のカーテンを出したところ。

カラオケを導入する施設にはさまざまな形態があり、インテリア全体が音をよく吸う柔らかい素材のソファやカーペットで作られたような店舗もあります。その場合、カラオケボックスを想定して調整された音では響きが足りなくなることが考えられるため、事前にシミュレーションが行えるようになっています。カラオケ本体には帯域ごとに音を調整する機能が備わっているので、カーテンを出した状態で基準の音になるよう、あらかじめカラオケ本体での設定を把握しておけるのです。

また、同じく新たに導入された照明の調光/調色機能も、さまざまな店舗環境におけるカラオケ本体やリモコン、スピーカーなどの見え方や、ユーザーインターフェースの確認に役立てられています。

照明の明るさを下げ、色を暖色にすると、部屋の印象が変わり機材の見え方も変わります。

こうして完成した新しい評価試聴室。安藤氏は「世界で一番音のいいカラオケボックス」と評します。

「新人研修でもこの部屋を使って音の聞き比べを行ったのですが、そのときにも『ここが世界で一番音のいいカラオケボックスだから、ここの音を基準にして現場でも音を調整するんだよ』という話をさせてもらいました」

今後も、第一興商の手がける「DAM」の音の基準を評価試験室で示し、新しいハードウェアやサービスの開発に役立てられていくでしょう。

取材・文:北口大介
撮影:八島 崇

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