道路に面する地域の環境基準評価システム 「NOIGIS(ノイジス)」

技術部 青木 雅彦

1. はじめに

騒音規制法に基づき自動車騒音状況を常時監視するため、毎年全国各地で幹線道路に面する地域の環境基準の達成状況が評価されています。
私たちはGIS(地理情報システム)※1)を用いて道路に面する地域の環境基準達成状況を評価するシステムを開発し【NOIGIS(ノイジス)】と名付けました。

そこでこのNOIGISの概要をご紹介させていただきます。

2. NOIGISとは?

環境基本法※2)に基づく「騒音に係る環境基準について」※3)には、 道路に面する地域では住居等のうち環境基準値を超過する戸数及び割合を把握することにより、 環境基準の達成状況を評価すると述べられています。NOIGISはパソコンを使ってこの評価のための推計を行い、 表示・出力できるシステムです。

「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」(以下、マニュアル)※4)には、 評価の精度としての二つの調査レベル、すなわち基本調査(簡易式)と詳細調査(一般式)が設定されていますが、
NOIGISは両方の手法による評価はもちろん、背後地の騒音測定結果から減衰量を設定して入力することもできます。

3. NOIGISを用いた評価手順

3.1. 評価区間等の設定

評価にあたってはまず道路端や評価区間、道路断面形状等をNOIGISに登録します。
一般に一つの評価区間は道路交通センサス区間と同程度としますが、道路条件の違い等によりさらに細分化することも可能です。

次に建物情報・街区情報を入力します。情報の多くはNOIGISがデジタルマップから自動的に読み取り整理しますが、 一部のデータについては次に述べる建物調査結果を基に入力する必要があります。

3.2. 建物調査の実施

評価区間が決まれば現地での建物調査が必要となります。

評価を行うにあたっては、現在市販されているデジタルマップの精度や情報では不十分な場合があります。 集合住宅であれば通常は住戸数等の情報をマップから読み取ることができますが、 たとえば低層の集合住宅の中にはその情報がない場合があります。この場合は現地調査により住戸数を確認する必要があります。
またマップ上では空白で情報のない建物もあります。これらもやはり現地調査によって評価対象かどうかを確認する必要があります。

私たちは現地での建物調査の前に、マップと建物情報を整理した建物調査票を準備します。
この建物調査票で重点的にチェックする建物をピックアップすることができるため、 効率的な現地調査が可能です。この建物調査票はNOIGISから出力することができます。

3.3. 基準点の騒音レベル

道路に面する地域の環境基準達成状況を評価するため、まず基準点(道路端)の等価騒音レベルを設定します。
基準点の等価騒音レベルは交通条件データを設定して計算で推定することもできますが、 一般には24時間の騒音測定値から設定します。

この測定方法は騒音レベルの瞬時値を一定間隔(例えば0.2秒間隔)で騒音計の内部メモリーに24時間連続で記憶させる方法、 一定時間(例えば10分間)の等価騒音レベルを24時間繰り返し測定する方法、あるいは1時間に1回10分間の測定を24回繰り返す方法などがあります。
ただし環境基準を評価するにあたって評価対象ではない騒音、 たとえば緊急自動車のサイレン音や他の評価基準で評価すべき航空機騒音等を除外(除外音処理)する必要があります。

この除外音処理の方法もいくつかあり、測定時に測定員が現場に常駐する場合は、 騒音計のポーズ(一時停止)ボタン等により対象外の音を除外します。

また、24時間分の騒音レベル瞬時値をメモリーに記憶させた場合は、データの変動状況をコンピュータ画面上に表示させ、 その波形から除外音をチェックします。除外音らしき波形については、測定時にICレコーダ等で録音した実際の音(実音)を再生し、 最終的に除外音かどうかを判断します。

3.4. 背後地の騒音減衰量

背後地の騒音減衰量については簡易式、一般式を用いて推定することが可能です。
また、実測によって水平方向の背後地減衰量を設定する手法も提案されています。

ある自治体が実施した方法※5)では道路端から60mまでの間に適当に間隔を空けた5点程度の測定点を設定します。 この測定点は建物の背後で対象道路が見通せない地点とします。
この地点で基準点に合わせて10分間の測定を実施し、各地点のレベル差等から減衰量を推定します。

別の自治体が提案している方法※6)では、建物の背後ではなく対象道路と交差する比較的細い路に沿って5点程度の測定点を設定します。
この測定方法では基準点と同時に1分間毎の等価騒音レベルを60回(1時間)測定し、 基準点と背後地の差分ヒストグラムの最頻値を減衰量とします。この方法は基準点以外では除外音処理が必要ないとされています。

おそらく最も正確に環境基準の達成状況を評価する方法は、人が居住するすべての住戸で24時間の騒音調査を一年中実施することでしょう。
しかしその方法が現実には困難である以上、いずれにせよ何らかの方法で各住戸の等価騒音レベルを推計することになります。

4. NOIGISの画面表示例

NOIGISの画面表示サンプルを図1~図3に示します。

評価区間毎の環境基準達成状況図サンプル
Copyright(C)2003 ZENRIN CO., LTD.(Z04A-第935号)
図-1 評価区間毎の環境基準達成状況図サンプル

街区毎の環境基準達成状況図サンプル
Copyright(C)2003 ZENRIN CO., LTD.(Z04A-第935号)
図-2 街区毎の環境基準達成状況図サンプル

建物毎の騒音レベル図サンプル
Copyright(C)2003 ZENRIN CO., LTD.(Z04A-第935号)
図-3 建物毎の騒音レベル図サンプル

5. おわりに

道路に面する地域の環境基準達成状況の評価方法と、その評価システムであるNOIGISについての概要をご紹介させていただきました。

現在私たちはこのNOIGISによる建物毎の騒音レベル推定値の検証方法や、予測式の違いによる評価結果への影響についても検討しています。
また最近発表された道路交通騒音の新たな予測法であるASJ RTN-Model 2003への対応も準備中です。

これらはまたいつか別の機会にご紹介させていただきます。

出典
※1) GIS(Geographic Information System):デジタル化した地図のデータベースを使って、 地図データの表示だけでなくデータの検索、計測、加工、集計等がきる地理情報システム
※2) 環境基本法(平成5年法律第91号)
※3) 騒音に係る環境基準について(平成10年9月30日環告64、改正 平成12年3月28日環告20)
※4) 騒音に係る環境基準の評価マニュアル(平成12年4月 環境庁)
※5) 自動車騒音の面的評価手法について 末岡伸一 東京都環境科学研究所年報 2002
※6) 差分ヒストグラム法の確定 大野嘉章(社)日本騒音制御工学会研究発表会講演論文集 平成15年9月