「他人に気兼ねせずに心ゆくまで楽器練習を・・・」(その2)

技術部 大橋 心耳

1. はじめに

前回の技術ニュース第20号では、企画特集「他人に気兼ねせずに心ゆくまで楽器練習を・・・」として、 1.一戸建て内に設置されたマリンバ練習スタジオ(半地下)、2.庭先の離れに設置されたドラム練習室、 3.マンション内に設置されたピアノ練習室の合計3つの事例紹介を行ってきた。

今回も引き続き同様の主旨で"24時間楽器練習レンタルスタジオ"及び "マンション内に設置されたピアノ練習室"の2件について事例紹介を行う。

2. 実施例

2.1. クレシェンドスタジオ(24時間楽器練習スタジオ)

相談を頂くに至るまでの背景

続いては楽器練習室というよりも、楽器練習スペースを提供する立場の個人スタジオの事例である。

クレシェンドスタジオは、日暮里駅から歩いて2分ほどの日暮里通りに面した、 コンクリート造のマンション建物の地下一階に設置された楽器練習スタジオ(テナントとして入居、スタジオオーナーは村上氏)である。
上階に位置する一階部分には、ビルのオーナーが経営する店舗、2階部分には学習塾が入居している。 3階部分にはビルオーナーの事務所スペース、4階より上階は住居スペースとして数世帯の入居者がいる。

・・・筆者の所に相談が持ち込まれたのは、2002年春のことであった。・・・

クレシェンドスタジオ平面概略図
図-1 クレシェンドスタジオ平面概略図

既に村上氏は、知り合いから紹介された工務店の手によりスタジオ建設(主に内装工事)を完了し、 2001年秋から営業を開始されていた。

開業当初より当スタジオは、日暮里という地の利に加え、周辺にレンタル楽器練習室も見受けられないこと、 村上氏自身が以前プロのPAエンジニア・レコーディングエンジニアとして活躍され録音への技術的な拘りからスタジオA・Bの2室及びスタジオA部分に併設された録音用モニター室と32chのディジタルレコーダー機器設備等を備えたこと及び低料金をモットーとしたことなどが幸いし利用客からはかなりの反響があったそうである。

ところが、営業開業後2週間ほどして村上氏にとって、連日胃の痛む毎日が始まった。 もともとスタジオ設置時の大前提として、しっかりとしたコンクリート造の建物の地下に陣取りさえすれば、 周辺に騒音で迷惑をかけることは無いであろうし、スタジオ内装工事を依頼した業者も「スタジオ工事の経験がある。」 ということであったので安心して任せていたが、現実は厳しかったようで実際にスタジオを開業し、スタジオ内でバンド演奏が開始されると、 上階(一階)の洋品店を超え、更に上の二階からの苦情が度重なるようになった。

意外な展開を迎え村上氏は、スタジオを建設した業者と共に、スタジオ天井内部の配管の処理、 吸音材の貼り付けなど騒音対策やスタジオ営業時間やバンドの発生音量の制限などを設け何とか営業継続の為の試行錯誤を繰り返すこととなった。

二階が無人となる休日には、営業時間の制限にとらわれず夜中までスタジオ営業を行うと今度は更に上の四階の住居世帯から「聞こえるよ!」 と言われる始末で困り果て、詳しくビル内部の各フロアにおいて調査してみると、結局スタジオ内でバンド演奏が始まると、 一階部分は車の通行量が多いのであまり気にならないが、二階部分はもとより三階の事務所でも多少、夜間には四階の住居部分でもドラム音やエレキベース音が聞こえていた。

スタジオの経営者としてはスタジオ運営コンセプトとして営業的な採算面は勿論のこと

  • いかなるバンド形式の、大音量を発生するグループにも練習場所を提供したい。
  • できれば24時間営業したい。
  • ユーザーの希望があれば、本格的なレコーディング業務も行いたい。

であったが、開業直後からの実態は

  • 音量の小さいグループしか使用できない。
  • 音量の大きいグループには、音量を絞って貰うことをお願いするしかない。
  • 営業時間の制限をかなり受けることになる。

となった。

筆者が現場確認に伺い、村上氏、ビルのオーナー、ビル本体建設を担当されたゼネコンの責任者の方々との話し合いにより、 現状把握及び対策案の策定に取り組むことになったのが2002年の4月であった。(残念ながらこの時点では既にスタジオの内装工事業者とは連絡不可能な状態となっていた。)

村上氏からの強い要望事項は、スタジオ営業の継続を大前提として

  • 上階の皆様にこれ以上迷惑をかけるわけには行かない。
  • なるべく現状を利用した上で必用最小限の対策を行いたい。

であった。

現状調査

他の業者が手がけた、しかも完成したばかりのスタジオではあるが、内装建築図面や設備に関する図面も皆無の状態である。 おまけに施工当事者と連絡が取れない状態では遮音構造などに関する仕様詳細などの質問すら出来ない状態からの出発である。

ウルトラCの案件であった。

何はともあれ現状把握を正確に行なう事がスタートを切るための絶対条件で、 地下1階スタジオ部分で発生した楽器練習音が直上階や更にその上階に位置する居室等に影響を及ぼす伝播メカニズムを解明する必要がある。
また、スタジオで練習音が発生していないときのマンション内各室の騒音レベル(暗騒音と呼ぶ)を把握し、 対策目標値をクリアにしておく必要がある。

遮音現状調査は、スタジオから上階に至る騒音の伝播ルート(通常、複数存在する・・)及びそれらの各寄与度を知ることが経済的な対策設計につながることから、 入念な調査計画が必要となるし、当然のことながら上階の居住者の皆さんの協力も不可欠である。

演奏時の調査

まずは、スタジオ内でロックバンドが演奏中のスタジオ内及び2階居室における騒音レベルを把握する作業から始めることとした。

図-2にスタジオ内で演奏中の音圧レベル周波数特性例を示すが、室中央付近で騒音レベルは110デシベル(dB(A))を超えていることが判る。 前回の技術ニュース20号の企画特集でもドラム・ピアノ・マリンバ等の発生音量例を掲載したが電気的に大音量を発生するエレキベースやエレキギターの音量はそれらを上回り、 その周波数分析結果も低域から高域の各バンドに渡り100~110dBとなっている。

地下スタジオ内で110dB(A)を超える音量が発生したときの二階部分の騒音レベルは、40dB(A)前後、更に上階の3階居室では、 それより更に数dB低くはなるがマンション周囲が静かになる夜間は勿論のこと昼間でさえも時により演奏音が聞き取れる状態であった。

地下1階Bスタジオ内でロックバンドが演奏したときのスタジオ内及び2階居室における音圧レベル周波数特性
図-2 地下1階Bスタジオ内でロックバンドが演奏したときのスタジオ内及び2階居室における音圧レベル周波数特性

上階居室における暗騒音に対し、練習音が卓越しているので(この例では2階NO.1室では63~250Hz帯域で10dB程度、 暗騒音よりも卓越した状態となっている。)当然練習音が聞こえる様が物理データ上でも確認できた訳である。

今回の暗騒音測定時には2階NO.1室では換気扇が作動している状態であったがこれが全停止状態になると更に居室内の暗騒音が下がり影響の度合いがより顕著になるので要注意である。

次に、地下1階部分から直上階を経由し2階部分に至るまでの主な伝播ルートを予測する。

厄介なことに集合住宅として建設されたマンションビルには通常設備配管が地下の共有スペースに集約されている場合が殆どで当事例でも地下スタジオ天井裏に配管群が貫通し上階に配管されている部分もあり、 これによる振動伝達や配管用のパイプシャフト内を空気伝播している可能性もある。

又、配管だけでなくスタジオ内装材自体の振動が直接躯体に入射した場合、 躯体を通じてビル全体に振動が伝播して行き各室の内装材を振動させ騒音を再放射させる固体伝播音も十分に想定しておく必要があり対策を前提とした全ての伝播ルート毎の寄与度を把握して行くことになる。

地下設備電気配管群
図-3 地下設備電気配管群

地下1階の天井部分に配水管関連も集中している
図-4 地下1階の天井部分に配水管関連も集中している

試験音による調査

練習スタジオ内でバンド演奏が行われたときの室内での発生音量や上階居室における騒音レベルを把握し大まかな対策の方向を設定することが出来たので今度は人工的な試験音を用いた騒音伝播経路の特定作業に入ることになる。

伝播経路の現状調査を目的とし、まずはスタジオ内で試験音をバンド音量と同等又はそれ以上の大音量で鳴らし、 2階部分との遮音性能を測定する。

この作業と同時にスタジオ内装材(床、壁、天井)及び地下配管などの各部分の振動の発生状況や2階居室部分の各部分(床、壁、天井及び配管など)の振動の状況を把握する。

スタジオ内における大音量発生装置の様子
図-5 スタジオ内における大音量発生装置の様子

スタジオ内装材の部位毎の振動測定の様子
図-6 スタジオ内装材の部位毎の振動測定の様子

次に、スタジオ内の床、壁、天井、扉、 配管類などの各部分を加振した時の上階居室の内装材の各部の振動を測定し加振部位ごとの上階への寄与度を測定する。

通常この作業は、音源側の各部位と受音側の各部位毎のマトリクス的な相互関係を把握する必要がありその手数及び得られるデータは膨大なものとなる。
しかし、騒音対策の確実性と工事費用の削減効果を狙う為には、 これらの作業を的確に行っていき正確な伝播経路を知る必要がある。

ハンマー加振によるスタジオ各部から上階への寄与度測定
図-7 ハンマー加振によるスタジオ各部から上階への寄与度測定

騒音の伝播経路の寄与度の大きなものは割合特定することが容易であるが、それらを対策工事していくと今まで寄与度のはっきり特定できなかった伝播経路が思わぬ伏兵となり、 あるレベル以上狙った効果が得られなくなってしまうことがある。

その為には事前調査段階であらゆる伝播経路を想定しそれらを個々に潰していく作業が必要である。 勿論ビルの内部だけでなく外部を経由する騒音伝播ルートや、空調設備や換気装置などを経由する伝播ルートなども見逃すわけには行かない。

改修工事の実施及び結果

今回の詳細現状把握作業により、伝播ルート及び各寄与度の把握が出来た時点で費用効果の検討を行った上で具体的な対策案の策定を行った。

今回の事例では、

  • スタジオは、床・壁・天井共に全て躯体と振動縁切りした浮き構造で所定の遮音量を持った2次遮音層を設ける。(スタジオA・B)
  • 各スタジオ共に、天井裏を貫通する配管部分はそれぞれラギングを行う。
  • 使用していない配管に関しては、スタジオエリア内に貫通しないように終端処理する。
  • 空調設備や排煙設備関連の経路に対しても、所定の遮音量を持った構造やサイレンサを設ける。
  • 電気設備の配管の振動絶縁も当然のことながら行っておく。
  • スタジオ部分に併設された録音調整室に関しては、現状をそのまま利用してもOKである。
  • スタジオBに併設された倉庫は、現状のままでOK。

などにより、スタジオ内装施工の改修・実施を行った。

改修はかなり大掛かりとなってしまったが、結果は図-8に示すとおり、

遮音改善を表現するグラフ
図-8 遮音改善を表現するグラフ

で、所定の目標(70dB/125Hz)を無事にクリアできている。

オーナーに確認したところ改修工事完了後は一切の苦情から開放されたそうでまずは「ハッピーエンド」と言ったところである。

今回はビルの地下部分に設置された練習スタジオの音が

  1. ビルのかなり上階にまで伝播してしまっている。
  2. 騒音対策を検討する資料が極端に乏しい。
  3. 練習スタジオ内で発生する音量が極端に大きい。
  4. 新設されたばかりの綺麗なスタジオで改修コストを出来るだけ少なくしたい。

などなど技術的には、難易度の高い"ウルトラC"の案件であったが、今回の作業を進めるにあたり、 事前調査―対策案策定―対策工事実施のそれぞれの過程において「音響理論や基本に忠実に物事を地道に進めれば結果は当然それに伴う」 事が実感できた事例と言えよう。

筆者の所に寄せられるライブハウス・スタジオが入った雑居ビルや集合住宅における楽器練習音の騒音苦情及び対策に関する相談は、 その伝播経路が単純に空気伝播音によるものだけではなく、今回の事例のように固体伝播音(例えば、コンクリート躯体や設備関連の配管、 ダクトなどに一度振動が入るとその振動がビル建屋中を伝播し、どこかにその振動に共振するような内装材料があるとそこから再び騒音として再放射される・・) が深く関与しているケースが多い。

しかもこれらの固体振動音による伝播は、 場所によりかなり聞こえ方が異なり対策を進めていく上で固体振動音に対する十分な知見が必要であることは言うまでも無い。

効果的な騒音対策を策定するにあたっては、空気伝播経路だけでなく固体伝播経路にも十分に注意し受音側に至るまでの想定されるそれぞれの伝播経路を調査し、 その寄与の大きい順番に的確な対策を検討していく事が肝要である。

  • スタジオA
  • スタジオB
  • 図-9 スタジオA
  • 図-10 スタジオB

録音調整室
図-11 録音調整室

クレシェンドスタジオ オーナーの感想

スタジオを作るにあたって、まずご近所への騒音問題を考えました。
その結果、ビルの地下部分にスタジオを作れば問題は解決するんじゃないかと思い、 長年の夢であるレンタルスタジオが運営できることで夢が膨らんでいました。
しかも内装施工業者は、スタジオを手がけたことがあると言っていましたから、安心していました。

ところがスタジオをオープンしてから2週間ぐらいして日増しに上階に対する騒音問題が深刻に感じられようになってきました。

楽器練習用の貸しスタジオですから、お客さんがどんどん入ってくれないと成り立ちませんが、 スタジオへの問い合わせの電話のベルが鳴る度にひやひやしながら応対しなければいけないのですから・・・音量、営業時間の制限との板ばさみでした。
それはもう、本当に胃が痛む思いでした。朝起きてからスタジオに出てくるのがあんなにも辛かったことはありません。
しかも、スタジオで練習中に上階からクレームが来てもお客さんに「止めてくれ!」とは言えませんし。

人に迷惑をかけたままスタジオを運営していくことに自分自身大きな赤信号でした。
施工業者も、何度か手直しをしましたが、これ以上何も手立てがないと言うことで苦心していたところ、 幸いにもビルのオーナー・ゼネコン責任者の方から、日本音響エンジニアリングを紹介して頂き、 スタジオ内装図面もなにも残っていない状態から現状のスタジオの騒音問題を詳細に測定・解析をして対策案を提示してくれました。

対策案は結局「現状のスタジオ2室を解体し新たに防音構造から作り直せばOK」といったものでした。工期は3週間。
その時点まで私は、スタジオ内装業者に対し不信状態に陥っていましたので対策案に対しても半信半疑でした。 資金的にも二重投資になりますし・・これで旨く行かなかったらどうしようもないですし。

今となってはあの時の胃の痛くなる思いや、スタジオ受付電話のベル音に対する恐怖心とは無縁となりました。 上階からの苦情はあれ以降皆無です。

現在はスタジオ2室と録音モニター室であらゆるジャンルのお客さんを受け入れています。
営業時間も、朝の11:00~翌朝05:00がこのスタジオの一日です。勿論お客さんからの要望次第で24時間営業にも対応しています。

最近では、スタジオでの練習だけでなくそれに併設された録音モニター室を利用したCDアルバム製作やデモテープつくりなどの録音業務なども含め私の意図したスタジオサービスがリーズナブルな料金で安心して提供できるようになり日本音響の皆さんに感謝しております。

スタジオ録音調整室で音楽製作に取り組む村上氏とスタッフの五十嵐氏
図-12 スタジオ録音調整室で音楽製作に取り組む村上氏とスタッフの五十嵐氏

続いて「マンション内に設けられた、バイオリン&ピアノ練習室」の事例である。

2.2. Y邸バイオリン練習室---工事部 石垣 充

都心部にある高層マンションの最上階に作ったバイオリンの練習室を紹介する。

エントランスホール間とガラスだけで隔てられたその練習室は、「ガラス張りの部屋」と言っても過言ではなく、 エントランスホール側の壁面のほとんどがガラス面、その対向する面にも大きなガラス窓があり、大都会の眺望が広がっていた。 そして、「このガラスを活かして練習室をつくりたい」というYさんの要望に応えるべくプランニングを進めることとなった。

まず、遮音性能については、音源としてバイオリン演奏だけでなくピアノの伴奏を考慮した設計を行った。 バイオリンと違って、ピアノは振動が直接床に伝わるため、防振ゴムで振動を絶縁する二重構造を採用した。 扉や窓などの建具は、部屋の出入口、バルコニーの出入口とも遮音のアルミサッシ(引き戸)を採用し、 エントランスホール側には12mm厚のガラスの窓を作ることにした。

部屋の音場については、部屋のスペースとの関係上、バイオリンの演奏だけのときと、 ピアノの伴奏があるときでは室の響き方を変える必要があると予測された。バイオリンが艶やかに響くようにすれば、 ピアノ演奏音が響きすぎる感じになるであろうし、今度はピアノの音が整うまで吸音すると、 バイオリンの音がとても味気のないものに感じられるようになるからだ。従って、部屋自体は基本的に響き気味に作り、 あとは演奏者の好みや演奏スタイルに応じてカーテンを用いて調整できるように設計した。

具体的に述べると、前述したガラスがある面と出入り口がある面の3面が、カーテンを吊ることができる反射面で、残りの1面が吸音面となっている。反射面が対向して存在するので、フラッターを少なくするためにエントランスホール側のガラスはノコギリ形状にしてある。さらに、天井の中央部には、音が拡散するように曲面の反射面を作り、その両翼に中低域を効果的に吸音するための下がり天井を作って音を整えた。

完成後、部屋にピアノや調度品が置かれた状況で、部屋に入らせていただきドアを閉めてみた。 音場的には、耳の詰まったような圧迫感もなく、ガラス面が多いので視覚的にも開放感があり実際よりも広く感じた。 居室としても申し分ない練習室をつくることができたと思う。この練習室の設計・施工を通じ、 一人の演奏家の限りない感性が育まれる環境創りの一役を担えたことを嬉しく思う。

ここで、Yさんに頂いた御感想を掲載する。

バイオリンは娘の成長に合わせ各分数サイズを経て、1/16サイズから現在使用の4/4フルサイズへと変わりました。

以前の住居は、マンションの6階、角部屋。隣人は毎日の練習時には留守と、大変助かっていたものの、 上下階の方にはやはり大変迷惑をかけていた様子で、苦情は、フルサイズになったころから、管理人さんを通して徐々にふえていきました。
また、ピアノ伴奏もするリビングルームでの練習は、電話やインターホンの音に気が散り、 来客があってはレッスンを中断ということも、集中しにくい要因となり大きな悩みでした。

そして昨年のこと、防音室を一番に考えリハウスを機に弦楽器店、ピアノ販売店のご協力を得て日本音響エンジニアリングを紹介していただきました。

工事については高層階であること、パーティールームとして特長ある大きなガラスを活かしてのリクエスト、 施工会社(*1)との綿密な打合せを必要とすること等、ご苦労されたことと思いますが、 高い技術をもって完成された防音室は想像以上に素敵で大変感謝しております。内装についてはよくある隔離された練習室のイメージは全く無くて、 モダンなすりガラスを活かし明るく温かみのある、落ち着いた仕上がりに大変満足しております。他にもドア部分、 天井、床、照明なども非常にリビングルームと調和の取れた上品なまとまり感があり、皆にも大好評でした。

使用してから5ヶ月を経た現在、お蔭様で以前よりはるかに集中した練習ができるようになり、 成果を上げている様で嬉しく思います。この空間で娘がこの先どんな美しい音を求めて自分の音楽作りをしていくのか楽しみになりました。 大変ありがとうございました。

*1) マンションを作ったゼネコンのこと

完成したバイオリン練習室
図-13 完成したバイオリン練習室

3. 次号の予定

最近では、楽器を手にする若者が増えてきているという。又、熟年世代の方達も昔のようにもう一度音楽に"親しんでみたい"ともいう。
他人に迷惑を及ぼす音の心配をせず・誰にも気兼ねせずに楽しめることが本来の音楽・・・「音を楽しむ」・・・であろう。

そんな環境を自らの住環境の中に実現する為には、我々庶民にとっては少し思い切った初期投資が必要となる。 それゆえ、その投資が無駄にならないよう・悔いを残さぬように入念な検討をされることをお薦めする。

楽器練習室だけでなくホームシアター、カラオケ、オーディオルームなど 「音楽あるいは音や映像を楽しむスペース」の設置に対するニーズは今後ますます増えつづける傾向にあるが、 割合手軽に実現できるメーカー既製品を利用する方法、又自分にマッチした音環境を目指しセミオーダーメイドする方法、 本格的にスペシャルオーダーする方法・・などなど人それぞれであろう。

今回の連載企画が、少しでもそんな皆さんの参考になれば筆者としても嬉しい限りである。

次号では、プロのJazzピアニスト兼作曲家が閑静な低層マンション内に設置した練習室兼録音室の事例を中心に、 引き続き「他人に気兼ねせずに心ゆくまで楽器練習を・・」の事例紹介を継続したいと思う。