音空間事業本部 河野 恵  企画室 山下 晃一

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1. はじめに

オークウッドプレミア東京様を会場にしたHOTERS様主催のホテル宿泊体験型SHOWROOM「HOTERES Editorial HOTEL」企画にて音響調整家具Meleon(メレオン)を設置したところ多くの反響をいただきましたので、この場をお借りしてその一端をご紹介させていただきます。昨今のコロナ禍においては、ショールームのような、実際に行って、触って・見てもらう対面式の体験機会をつくるのはなかなか厳しい状況です。そんな中、オータパブリケーションズ様発案の "体験型SHOWROOM"という企画は、実際のホテルの客室の一室に展示物を飾り、人と会わずに宿泊しながら体験いただくというコロナ禍ならではの画期的な企画でした。当社が開発したMeleonは、実際に部屋に置いて「良い音空間」を体感していただくことが重要な製品ですので、まさに、Meleonにぴったりの体験型企画と言えます。今回は、ホテルの客室だけでなく、宿泊者が利用可能な会議室にもMeleonを設置し多くの方々にご体感いただく機会を得ました。

2-1. ホテル客室に求められるニーズの変化

ホテルの客室というと、プライベートな空間、自由に思い思いの過ごし方ができる空間であり、カフェや休憩所にはない高いホスピタリティが求められます。こうした従来のホテルに求められる過ごし方に加え、昨今浸透しつつあるテレワークやワーケーションといった「働く」という要素にも積極的に対応し、ホテルの付加価値を高めようという意識の高まりも感じられます。それに伴いこれまであまり注目されなかった「音」に対する利用者の感度も上がってきている、というお話しをお聞きする機会も増えてきました。WEB会議に参加することは当たり前の日常となっていますが、ホテルのような静かな場所では、音に対する感度がオフィス以上に高くなり、聞き取りづらさ、話しづらさなどにストレスに感じない工夫も求められているのかもしれません。

2-2. Meleon×ホテル客室

こうした音の問題を解決するために開発した製品がMeleonです。ホテルは高い静粛性を保つために、壁の仕様が一般空間よりもしっかりしているため音が外部に漏れづらく、静かという利点はありますが、反面、音が響きやすくこもりやすくなりがちです。このような場合は、内装材の工夫で改善するのが一般的ですが、そもそも音響調整のできる内装材は限られている上に、ホテルのデザイン・コンセプトに合うものを選ぶのが難しい、というのが現実です。また、内装材の場合、建築基準法の内装制限から、デザイン面だけで気軽に採用できないという問題もあります。しかし、Meleonならこの問題もクリアできます。Meleonは家具ですので内装材として扱われません。また、様々なデザイン・バリエーションを用意していますので、ホテルのコンセプトや各客室の雰囲気に合わせてコーディネートできます。一般的な吸音系の音響調整材が直接壁面に取り付けることを考慮しせいぜい25mm前後の厚みであるのに対し、棚構造のMeleon用に開発された吸音材は約125mmの厚みがあり、一般の吸音材では処理できない中低域に対して高い吸音性能を発揮します。もうひとつ、良い音環境をつくるための重要なポイントとして「音の響きの周波数のバランスを整える」ということが挙げられます。Meleonは吸音・拡散を組み合わせて響きの周波数のバランスを整えることができる音響調整機構という特長を持っています。従来の吸音材ではその性能が高いものほど、高い周波数の音をばっちり吸音してしまうため、多用するほど響きの周波数バランスを崩し、結果として居心地の悪い空間となってしまう、ということがあります。私たちは、スペックだけでは表現できない、真の居心地の良い音空間を多くの人々に知って体感して欲しいという想いで、スタジオや放送局といったプロフェッショナルの建築音響内装で培ってきた音響技術を駆使し、加えて、より空間に馴染むような意匠性の高いアイテムとしてMeleonを開発しました。

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3. Meleon×ホテル会議室

今回のホテルには宿泊者も使用可能な会議室が併設されています。会議室は客室と異なり吸音性の内装や備品が少なく、壁から反射して聴こえる声の反響音が相手の声を聴きづらくしています。特にWEB会議では、複数人と会話をするために用いられることが多い無指向性マイクロホンは部屋の響きも一緒に拾うため通信先ではこちらの話し声が聞きづらくなりますし、それを電気的に処理するといっそう不自然に聴こえることもあります。こうした問題を根本から解決するためには、会議室自体の音響的な改修が必要になっていたのですが、家具であるMeleonは設置するだけで部屋の響きが変わり、聞き取りやすく・話しやすい音環境に変わります。昨今のリアル会議でも、ソーシャルディスタンスを保つ必要から相互の距離が離れ、その結果大きな声になりがちですが、Meleonがあれば余計な壁からの反射を軽減してくれるので、伝えたい相手に本来の声が伝わる実感を持てるため声を張らずに会話ができます。"音疲れ"せず、生産性の高い会議が実現できます。

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4. 最後に ~アンケート結果~

本企画に参加された方々より、Meleonの感想をいただきましたのでいくつかご紹介させていただきます。

  • 音楽をかけながら会話をしてみたが、通常よりも会話が聞き取りやすい気がした。それがあるのとないのとで比較をしてみたい。インテリアとしてデザインに非常に優れており、スタイリッシュな空間を演出できてとてもよい。
  • これは新たな発見でした。ホテルは音響に関して鈍感な部分がありますが今後は重要と感じました。
  • インテリアに溶け込んでおり、説明を拝読するまで音響調節器だとは気付きませんでした。部屋で過ごす中では実感しにくかったのですが、ムービーを拝見し、これからの時代にマッチするアイテムだと感じました。
  • 部屋と会議室で実際に体験したが、確かに音がよく聞こえた。
  • こちらの家具が音響調整家具だと気づきませんでした。斬新なディバイダーのような家具(設備?)だと思います。

今回はMeleonの出し入れをできる環境ではなかったため、その有無による効果の差を検証していただくことはできませんでしたが、多くの方が音環境に敏感になっており、Meleonの存在価値をじんわりと感じていただけたということがわかりました。また、ホテルの客室や会議室で過ごす中で、"音"との付き合い方が以前とは全く違ってきていると実感しました。他にもオンラインの声が聞き取りづらいことを言いだせずにそのまま会議が続き、再度同じような会議をもう一度することになるというような、気を遣う・時間を多く使うといった非効率な経験をしたこともあったという意見もいただき、改めて"音環境"を多くの方々が問題として認識されているということもわかりました。こうした問題に対し、私たちはMeleonで、皆様に寄り添うように丁寧な空間づくりのお手伝いをすることができると思います。ホテル空間では"おもてなし"というホスピタリティの高さが求められていますが、"音でのおもてなし"が、今後付加価値を高め、QOLの向上に貢献できると考えます。

5. オークウッドプレミア東京様の声

この度はHOTERES様の企画を通じて、日本音響様のMeleonを客室と会議室に設置させていただく機会を得ることができ、大変光栄に存じます。ホテルの雰囲気と全く違和感のないデザイン性に加え、使用された方々のご意見の多くは、コロナ禍によりリモートワークをする機会が増える中、音の重要性を認識するものでした。ホテルは五感で非日常の雰囲気を体験していただく場所でもあり、その意味ではMeleonが業界にとって欠かせない、我々が求める快適な空間づくりに一助を担うアイテムになりうることに、大いなる将来性を感じます。

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