データサイエンス事業部 水野 貴宏

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航空機騒音データ分析システムがクラウドサービスになりました

航空機騒音の自動監視装置で測定されたデータは、専用システムで集計し、航空機騒音の評価指標であるL den 等を算出します。従来では、このようなデータ分析システムは専用端末に航空機騒音集計用アプリケーションをインストールして利用する運用が一般的でした。‍
弊社では、このようなエンドユーザ様の運用負担が大きい、専用業務端末が必要となる専用端末型のシステム構成から脱却し、航空機騒音監視業務を無理なく維持・継続いただくため、クラウド型のデータ分析システムの提供を行っています。‍
クラウド型航空機騒音データ分析システム Airise(エアリス)とその特徴をご紹介しま‍す。

クラウドだから運用が容易

クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise は、インターネットを通じて利用できるクラウドサービスです。インターネットがあれば使用することができるため、運用面において、以下3 つのメリットが得られます。

Airiseの運用面におけるメリット

1. 利用する場所や端末を問わない

インターネット接続環境さえあれば、事務所内に限らず、外出先でも利用することができます。在宅勤務中でも使用可能ですから、働き方改革や柔軟な働き方の推進にも貢献します。もちろん、Airise を利用するためにはライセンスが必要で、誰もが操作できるわけでありませんので、データを第三者に閲覧・改ざんされるというような事態は発生しません。

利用する場所や端末を問わない

2. 異動時の引継ぎが容易

航空機騒音監視業務の担当者様が異動となる場合でも、新任担当者様に引継ぎが必要になるのはライセンス情報のみです。
専用端末が不要のシステムですから、新任担当者様は異動直後からすぐにご自身のPC でAirise を利用いただくことができます。

異動時の引継ぎが容易

3. システム維持コストが小さい

専用端末型のシステムと比べて、クラウド型システムは運用作業面と費用面の両面におけるシステム維持コストを小さくすることができます。
その理由は専用端末型システムで必要になる以下のコストを不要として、削減が可能だからです。
■ 端末整備費用
機器代の他、アプリケーションのインストール費用や端末の設置場所スペースが必要
■ 端末保守費用
年間保守契約を締結し、年に1 回程度の定期点検と故障時の臨時点検が必要
■ 端末更新費用
機器の老朽化やメーカサポート期限の到来に伴い、5 年に1 回程度の頻度で機器更新事業の起案と実行が必要

システム維持コストが小さい

航空機騒音測定・評価マニュアルに準拠した集計結果を手軽に

クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise は「航空機騒音に係る環境基準(環境省)」及び「航空機騒音測定・評価マニュアル(環境省、令和2 年3 月)」に準拠したシステムです。航空機騒音測定・評価マニュアルは全国の航空機騒音監視業務を実施する上でご担当者様が指針とされている文書ですが、その内容は多岐にわたり、複雑なものです。航空機騒音測定・評価マニュアルの細かな記載までは把握しきれないというご担当者様であっても、Airise をご利用いただけば、航空機騒音測定・評価マニュアルに準拠するために求められる対応ができるようになります。‍
例えば、航空機騒音測定・評価マニュアルには「航空機と航空機以外の騒音を識別する方法」として右に示した手法が例示されていますが、Airise ではこれらすべての方法を利用することができます。
同じくAirise では、「評価に用いる測定データを確定する方法」として示されている手法についても機能として網羅しているうえ、洗練されたユーザインタフェースにより、わかりやすく直感的な操作感を実現しています。‍

Airise で利用できる「航空機と航空機以外の音源を識別する方法」

・騒音レベルの大きさや継続時間、変化パターンを基に識別する方法
・騒音の到来方向の情報を基に識別する方法
・航空機が発するトランスポンダ応答信号電波等に着目する方法
・騒音の周波数特性の違いを基に識別する方法
・隣接する測定局間の騒音発生時間差で識別する方法
・レーダ航跡データと照合する方法

Airise で利用できる「評価に用いる測定データを確定する方法」

・近隣の測定地点の測定結果を用いる方法
・音圧信号の記録を用いる方法
・運航情報を用いる方法

測定データ確定作業用画面の例
測定データ確定作業用画面の例

他にも、クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise には多彩な機能が搭載され、使いやすいよう統合されています。
・航空機騒音集計結果帳票がプリセットされ、Excel 形式でダウンロードできる帳票出力機能
・プリセットの帳票様式にとらわれることなく、任意の方法で集計した結果を用途に応じてダウンロードできる騒音検索機能
・常時監視測定局の「今現在の騒音レベル」と「直近で発生した航空機騒音」のデータを確認できる、モニタリング機能
・可搬型測定装置で測定した短期調査結果データをシステムに投入・集計するデータアップロード機能
・データ確定作業の省力化を実現する、航空機騒音総合判定機能、航空機騒音確率値機能や寄与度分析機能

導入事例

 

クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise は2020年度の運用開始以降、多くのユーザ様に採用いただいています。その中で、クラウド型システムならではのメリットを特に有効活用されている茨城県県民生活環境部様の導入事例をご紹介します。‍
茨城県様では、成田空港及び自衛隊百里基地(茨城空港と共用)の航空機騒音を把握するため、常時監視測定局12 局(成田対象局10 局、百里対象局2 局)にて通年測定を行うとともに、可搬型測定局にて7 日間ないしは14 日間程度の短期測定を行っています。‍
Airise を導入する以前は、データサーバ及び分析システムが研究機関である茨城県霞ケ浦環境科学センター様(以下、「霞センター」と表記)に設置されており、データサーバや専用通信回線等を維持・運用する作業負担がある反面、霞センターでは、いつでも自由に通年測定ならびに短期測定の分析結果を確認する事ができました。一方、茨城県庁には航空機騒音データ分析システムを利用するための専用端末及び専用通信回線を整備していませんでした。‍
そのため、茨城県庁において通年測定ならびに短期測定の集計結果を確認する場合、霞センターから集計結果ファイルをメールで送信する必要があるなど、非常に手間のかかり、かつ人的作業ミスが発生しうる運用となっていましたが、2022 年度にAirise を導入いただき、これらの課題を一括で解決することができました。‍
Airise 導入以後は、データサーバ及び分析システムはクラウド上に整備され、霞センターにはデータサーバ・分析システム及び専用通信回線を置く必要がなくなりました。インターネットを通じて航空機騒音データ分析システムを利用することができるようになったため、霞センターからはもちろん、茨城県庁からも通年測定と短期測定の分析結果を簡単に確認し、いつでも測定結果帳票を出力することができるようになりました。各ご担当者様が普段から使用されている事務用PC ですぐにご利用いただけますから、航空機騒音の測定結果情報が必要になったときには、それがたとえ外出先だったとしても、必要な情報に即時アクセスできます。‍
また、既にご説明させていただいた通り、Airise には測定データを確定するために必要な機能がすべて備わっていますが、自力で実施しようと思うと、確定作業はなにかと手間のかかるものです。近年、この人手が必要となる確定作業を外部委託される事例も増加してきました。従来、外部委託の際には業務受託者に対して測定データや分析システムを提供する必要がありましたが、Airise ではこのような面倒な事前準備は必要なく、業務受託者用のシステム利用ライセンスを追加発行するだけで簡単に実現することができます。‍

クラウド型システム導入前

        
クラウド型システム導入前
                  

・県庁からは分析システムが利用できない
・霞センターにおいてデータサーバの運用負担あり
・専用サーバ、専用端末、専用通信回線が必要

クラウド型システム導入後

        
クラウド型システム導入後
                  

・県庁から分析システムの利用が可能になった
・霞センターにおける機器運用負担が解消した
・専用機器や専用通信回線が不要になった
・場所を問わず利用可能になった

今後に予定している追加機能

クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise では、今後も様々な機能を追加することを予定しています。‍‍
分析作業にまだ慣れていない担当者様でもデータ確定作業が簡単にできるよう、測定データの確定作業を強力にサポートするソフトウェアアップデートや、不正アクセスなどの外部の脅威から大切な測定データをより一層強固に保護するセキュリティ強化などがその一例ですが、そのなかでも目玉として「航空交通情報サービスの提供」を予定しています。‍
航空交通情報サービスとは、一般財団法人 航空保安研究センター(以下、「ATSRI」と表記)が航空の振興に資することを目的として実施している事業です。‍
航空交通情報は、「国土交通省航空局(以下、「航空局」と表記)が航空管制業務等の実施に伴い生成するレーダ情報等の航空交通に関する情報」のことで、その中には「航空機の位置情報(緯度、経度、高度)」「離着陸した空港や、離着陸予定時刻、便名、機材名、運航者情報などを含む航空機の出発及び到着に関する情報」「飛行場の気象情報や使用滑走路情報を含む空港情報」などが含まれています。‍
航空機騒音監視業務を運営するにあたってこれらの情報を得ることができると、様々な利点が生まれます。例えば航空機の位置情報は、測定データの確定作業の際に騒音を発生させた航空機と測定地点との位置関係を把握し、確定作業を補助します。また、日常的な航空機の飛行経路を把握・監視し統計的に分析することはもちろん、例外的な経路で飛行した航空機の位置を把握することで、周辺住民から寄せられた相談電話に対して的確な応答が可能となるなど、多角的かつ正確な対応が実現します。‍
これまでATSRI は、航空局から航空交通情報の配信を受けて、この情報の利用を希望するユーザに対して適切な情報処理・情報付加を行い、提供する機関として、平成16 年からの長年にわたりこの役割を担ってきました。‍
これまではATSRI のみが航空交通情報サービスを提供する唯一の機関でしたが、このたび、弊社ではATSRI からの配信を受け、この航空交通情報を航空機騒音データ分析システムにおいて分析システムのユーザの皆様に提供できるようになりました。‍
現在では、航空機の位置情報を提供しているweb サービスなども存在しており、ご存じの方も多いと思いますが、これらはある意味非公式な情報であることから、周辺住民などに向けた対外的な公表を伴う航空機騒音監視事業においては、信頼性が担保されていないこれらの情報を使用することに対して懸念があるのも事実です。‍
航空交通情報は航空局を情報源としているため、信頼性が担保された唯一の公式な情報であり、この情報を弊社の航空機騒音データ分析システムをご利用いただいているユーザの皆様にご提供できることは、皆様の業務効率化や分析結果の正確さを向上するに留まらず、騒音監視業務における新しい価値を提案するものと期待しています。‍

クラウド型システム導入後

最後に

Airise は、煩雑だった従来の専用端末型の分析システムの欠点を補完するだけでなく、航空機騒音監視事業の運営をより高い次元に押し上げ、業務効率化を図りながら誰でも、どこでも、いつでも、容易に運用できるクラウド型航空機騒音データ分析システムです。‍
これまで弊社が航空機騒音監視のエキスパートとして蓄積してきたノウハウと、独自開発した特許技術、日々世界で生まれ更新され続けている最新技術を組み合わせ、必ずやユーザの皆様に納得いただけるシステムになっていると自負しています。実際にその利便性を実感いただくため、試用ライセンスの発行を随時受け付けておりますので、導入をご検討いただける際は是非お気軽にご相談いただけますと幸いです。‍

システム要件
クラウド型航空機騒音データ分析システムAirise を利用いただく際は、以下条件を満足する端末をご準備ください。
■ソフトウェア環境
・OS:Microsoft Windows10(64bit 版)Home, Pro,Enterprise 以降
・ブラウザ:Google Chrome(最新版)
・表計算アプリケーション:Microsoft Excel 2017 以降
■ハードウェア環境
・CPU:Intel Pentium 4 以降
・メモリ:8GB 以上
・ディスプレイ解像度:1920×1080 以上
■ネットワーク環境
・インターネット接続

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