航空機の高度コース測定

技術部 山下 晃一

1. はじめに

航空機騒音の監視においては騒音レベルの測定とともに、航空機の飛行経路による騒音の分布を知るために高度コース測定も行って来ました。 測定点で航空機騒音のピーク時刻、ピークレベル及び継続時間を把握しWECPNLを計算する航空機騒音測定では自動化は比較的早くから行われ、 当社でも固定測定局「DL-1420」や移動測定局「DL-80/PT」を開発し自動測定に対応しています。 それに対応し、高度コース測定の場合、その飛行範囲の広さと移動速度の速さ等の問題から自動化のみならず入手を要する測定においても、 かなりの困難を伴ってきました。ここでは、以前から行われていた航空機の高度コースから測定方法から、 当社が開発した高度コース測定システム「DL-PP101」による測定方法に至る流れを紹介していきたいと思います。

2. 従来の高度コース測定方法

簡易的に航空機の高度コースを把握するための方法として、以前カメラと大型分度器を用いて測定を行ってきました。 これは、飛行コースの側方で見晴らしの良い場所を測定点とし、航空機の機体が測定点に対して真横になった時、カメラのシャッターを切ると同時に、 三脚で支持した大型分度器でその仰角を読み取ります。分析は現像したフィルムから機影の長さをノギスで測り、 その値と航空機の実際の長さおよびカメラマンのレンズの焦点距離から航空機までの距離を計算します。 この方法では測定点は1地点だけで測定ができるという利点はありますが、カメラの関係で夜間の測定が行えないこと、 航空機を本当の真横から撮影できなければ誤差が非常に大きくなるといった欠点があり、次第に述べる2地点で大型分度器を用いる方法と併用して行われてきました。
この方法では、まず航空機の飛行経路の両側それぞれで見晴らしの良いところを遊び測定点とします。 2地点それぞれでお互いの測定点を指し示す方向に分度器を向け、その方向を航空機が横切った瞬間に2地点同時に仰角を読み取ります。 分析は地図上から拾った2地点の距離、2地点の標高差とそれぞれの仰角から三角測量の方法で水平距離と高度を計算します。 この方法は簡単に行うことができて、昼夜を問わない点から良く行われてきましたが、 高度コースを断面でしか捉えることができず(カメラと大型分度器を用いた場合も同様)、 連続的な経路の把握を行うためには測定点のペアを可能なかぎり多く設置する必要があり、そのためには多大な人手が必要でした。

3. 成田市における高度コースの常時監視

今までに述べてきた高度コース測定の問題点を踏まえ、当社では高度コース自動測定システム「DL-1420C」を開発し、 昭和62年に成田市に設置され、現在も測定を行っています。このシステムは飛行経路の両側に設置し、 航空機の騒音の到来方向のデータ(音響ベクトル)を互い照合し合成することにより、高度コースを測定します。 X・Y・Z各軸方向の合成音響ベクトルを得るため、多数のマイクロホンの中から測定した周波数特性および位相特性の揃った複数個マイクロホンを使用し測定した音をDSPを用いた高速演算回路で計算します。 計算結果は中央局にオンラインで送られ、そこで2地点のデータの照合を行い、 高度コースを計算します。下図にはこのシステムが計算した音の到来方向と、大型分度器で人が測定した仰角とを比較したものです。

成田市における高度コースの常時監視

4. 高度コース測定システム「DL-PP101」ついて

当社では、「DL-1420C」のように騒音による高度コース測定システムの開発と併せて、 目視による簡易的で、高精度なシステムの開発も行ってきました。1つには「DL-1420C」の測定結果の検証を行うツールとして、 また1つには分度器による方法が特定断面の把握しかできないことから、同じように簡易な方法で飛行経路を空間で把握したいという欲求がありました。 仰角測定だけでは、どうしても断面データしか把握できず、飛行コースを3次元で把握するためには水平角の測定も併せて行う必要があります。 そこで大気の流れを観測するまために従来から用いられてきた「セオドライト」を用いて測定を行いました。 この測定器は、望遠レンズの水平角、仰角それぞれのハンドルを操作して、航空機を追跡しながら任意の時の値を読み取ることができます。 しかし、水平角、仰角を別々に操作する必要があること、レンズを通して対象が倒立して見えること、瞬時の値をレンズ内の窓から水平、 仰角それぞれを随時に読み取らねばならないこと、航空機のように速い速度で移動する対象を追跡するようになっていないこと、 などの理由から「セオドライト」に似て違うシステムを新たに開発することしました。 「セオドライト」での欠点をすべて改良するため、特に以下の点に留意しました。

  1. レンズをオペレータの操作で、即座に任意の方向に向けられること。
  2. データは、人が読み取るのではなく、そのままパソコンで読み取り、ディスクに記録すること。
  3. レンズは、正立像で見えること。
  4. 操作に熟練を要しないこと。

こうして高度コース測定システム「DL-PP101」が完成しました。原理としてはきわめてシンプルで、正立像の望遠レンズを水平面、 水直面自在に動かせるように水平な台に設置し、その台は、頑強な三脚に固定します。 設置時に水平位置出しが行えるように台には水準器が取り付けてあります。人がこのレンズを覗きながら1本の操作棒を動かして航空機を追跡し、 任意の時に操作ボタンを押します。水平動作部および垂直動作部にはそれぞれエンコーダが取り付けられ、ボタン押下時の位置に応じたパルスを出力します。 そのパルスをパソコンの拡張スロットにセットした専用ボードが0.1度の精度で読み取ります。 後は、その角度データをそのときの時刻データ(年月日、時分秒、0.1秒精度)と共にディスクに記録します。 2地点それぞれのパソコンは事前に、また随時に時刻を正確に同期させておくことが必要ですが、集計時には、 これらのデータを自動的に補間してから照合しますので、分度器の時のように2地点で合図をしながら同期させて角度を読み取る必要はなく、 それぞれが好きなタイミングでボタンを押してデータを取り込むことができます。

高度コース測定システム「DL-PP101」ついて

このシステムを用いることにより、簡単、随時かつどこでも航空機の高度コース測定が可能になりました。 また、データを直接パソコンで読み取っていますから、分析の手間も一掃され専用ソフトウェアにより高度コースが自動的に計算できるようになっています。

測定は分度器を用いた方法と同様、2つ測定点から航空機を同時に追跡します。 しかし、分度器法のように経路を挟んだ両側に設定する必要はなく、経路の両側に1点づつでも、片側に2点でもかまいません。 ただし航空機の飛行経路を広範囲に渡り測定することができる場所に設置することが望ましく、 逆に言えば、測定点の選定の段階で測定可能範囲が定まってしまいます。また2点のデータを照合して三角測量の方法により高度コースを求めますから、 航空機から2点を結ぶ線の角度が狭かったり、航空機が2点を結ぶ線上付近にある場合、 すなわち航空機から2点を結ぶ線の角度が広すぎると、1度以下の読み取り誤差が大きく寄与してきます。 また各測定器水平だしも重要です。このような測定器の設定条件が満足され、 十分な視界があれば10から20kmにわたり航空機の飛行経路を追跡することが可能です。
現在、このシステムを用いて、成田空港航空機高度コース実態調査(千葉県)を年に2回定期的に行ったり、 成田市高度コース自動測定システムとの突き合わせ作業、福岡空港航空機高度コース調査あるいは、 渡り鳥の飛行コース調査といったことにも利用されています。

高度コース測定システム「DL-PP101」ついて
分析も、測定データは、フロッピーに入ってきますから手間は少なくなりましたが、 航空機1機について数km分の時刻、座標、高度データを入力すると膨大な量となり、対象機数が多いときは大容量のメディアが必要になります。 しかし、コンピュータ容量の問題さえ解決すればパソコン処理の利点を生かし、 単に高度コースを求めるというだけでなく様々なデータを引き出すことができます。時刻データと座標データを照合することで、 航空機の速度(ベクトル速度、上昇速度、水平移動速度)や上昇角度も簡単に求められますし、 航空機の情報(航空会社、機種、行き先、飛行目的)とリンクすることで統計的な2次処理も行えます。 高度コース測定と同時に騒音測定(ピークだけでなく時系列での連続した騒音データ測定)を行えば、 航空機のパワーレベルの推定やそれをもとにしたデータベースの作成などが行えます。
当社は、このシステムを利用した航空機高度コース測定を引き続き実施していくほか、 航空機以外の利用範囲を広げるべくお客様のニーズにお答えできるよう対応していきます。 このシステムの利用について御要望等ございましたら、御連絡頂けると幸いです。

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