NOE新試聴室

営業部 川井 正行

1. はじめに

当社の新本社内に新試聴室が完成しましたので紹介します。旧試聴室は、当社の別館(倉庫の中!!)の中にあったのですが、これを作った理由は、当社が施工したスタジオのミキシングルームの音調整を現場で行っていたのですが、時間と手間が現場では掛かりすぎてしまうので、何とかならないものかと考え、それならば、施行予定のミキシングルームの実物大シミュレーションルームとして作ったのが旧試聴室です。室は、各面(床・壁・天井)の吸音・反射を施工と同条件にし、そのミキシングルームに入れるスピーカーを設置して、そこで、ミキサーの方々に音を聴いていただき音調整を行い、その結果を施工に結び付けてきました。
この旧試聴室は、これまで数多くのスタジオのミキシングルームのシミュレーションを行い、多くのスタジオミキサーとのふれあいを通じて、大きな成果が得られたと考えています。
今回、新しい試聴室をどのように作るかを社内で検討したところ、・AV機器の音色を聴き比べるオーディオメーカーの試聴室タイプ・レコードの編集・最終音調整を行うレコード会社のマスタリングルームタイプ・ビデオの編集室タイプなど色々な案が出されました。
しかし、当社では、新たにOSSシステムや音場シミュレーションシステム等の開発を進めており、これらは今後の音場評価・音場再現の新しい手段として重要な位置付けを持っています。これらのシステムを皆様にアピールするため、新試聴室を発表の場にできないかと考え設計することにしました。

2. 新試聴室の設計

新本社は、7階建の最上階で、試聴室は、このフロアーの中央に位置しており、試聴スペースと小さな前室兼コンピュータ室で構成されています。試聴室の周りが事務・設計のスペースなので、壁遮音層はコンクリートブロックで囲い、床はグラスウール浮き床のコンクリートで、階下に対して防音しています。上階は屋上のため、特に遮音は考えずコンクリートスラブのままとしています。入り口は鋼製防音扉を用い、前室と試聴室の間は防音引き戸を用いています。内部の吸音については、通常は前反射・後吸音とするところを、今回は新システムの性格上、全面吸音としました。
仕上げとして、床はフローリングの上にタイルカーペット(将来への対応として、タイルカーペットを剥がせば床が反射面にも成るように)とし、壁・天井はグラスウール25mmを貼ってクロスで覆い、その表面に化粧サウンドトラップ(合板にグラスウールを両面貼りクロスで仕上げたもの)を吊るしています。ちなみに、サウンドトラップは表面のグラスウールで高音を、合板で低音を吸音するものです。下に写真を示します。

新試聴室の設計試聴室

3. OSSシステム

さて、この新しいOSSシステム(OSSとはOrthostereophonicSystemの略)ですが、これは元来、ある音場をそのまま別の場所で再現するためには、通常のマイクロホンよりステレオ等で収録しても、元の音場が再現できないのでどうしたら良いか、から考え出されました。
OSSシステムは、人頭を模擬したダミーヘッドの両耳の中にあるマイクロホンの出力信号を利用し、この信号を特殊なデジタルフィルターで処理することにより、再生音場において、あたかも源音場(収録した場所)にいるのと同等な聴取を可能にするシステムです。
例えば、ミキシングルーム等の音場を評価する場合、従来はミキサーが各スタジオのミキシングルームに出向いて行かなければならず、これでは比較評価が旨くいかないうえ、時間的にも効率的ではありません。そこで、ミキサーが色々なスタジオに出向く代わりに、ダミーヘッドで色々なミキシングルームの音を収録し、OSSシステムを使って同一の場所で各ミキシングルームの音場を再現できれば簡単に比較試聴が出来るわけです。
具体的には、先ほどのダミーヘッドマイクロホンの信号をDATに収録、再生は2chスピーカーで行いますが、再生時にDATの信号をデジタルフィルターを利用して、右の耳には右のスピーカーからの音だけが聞こえるように(方法として、右の耳には左のスピーカーからの音が入らないように右のチャンネルの信号に左チャンネルのキャンセリングの信号を入れる。もちろん、左の耳にも同様に右のキャンセリングを行って)すると、ダミーヘッドに入った信号がそのままの信号で両耳に入り、あたかも収録した場所に居るように聞こえます。(2チャンネルによる立体音場再生)再生時にスピーカーからの音が壁等に反射すると、キャンセリングが旨くいかない為、新試聴室は、先ほど述べたように吸音構造になってます。
OSSの応用用途としては、録音スタジオ、コンサートホール、リスニングルーム等の合理的な音場設計、評価法の確立自動車等の車室内音場のシミュレーション各種騒音(家電製品、車、OA製品等)の騒音評価全周ステレオ方式の開発各種オーディオ機器の比較、統一的評価テレビ、映画、ゲームマシン等の音響効果の作成仮想音場のシミュレーションその他、アイディア次第で、その用途は多種多様にわたります。

音場シミュレーションシステム音場シミュレーションシステム

4. 音場シミュレーションシステム

一方、音場シミュレーションシステムの方は、コンサートホールや試聴室の音場を図面から推測できないか、との発想から考え出されました。ある部屋があって、その形と各面の音響吸音特性が分かれば、どの様な音が聞こえるのかが分かるシステムです。
例えばコンサートホールを設計していて、形の違う案が幾つかあったり、どの面を反射にし、どの面をどの位の吸音にしたら良いか考えるとき、このシステムを使用すれば、実際に作る前に、どの様な音が聞こえるかが分かります。
具体的には、CONCERTという当社のソフトで部屋の形状をコンピューター上に三次元で構成し、2つの音源の位置と1つの受音点の位置を指定して、音源から受音点まで、どの様な方向から、どの様な大きさ、遅れ時間、周波数特性で反射してくるかを計算させます。次に、SYMPHONYという当社のハード(実時間畳込み器)で上記データにより、DSPボードで音の伝達を計算し、ドライソースの音が受音点でどの様に聞こえるかを、各方向別に加工します。加工された音は、各方向別にアンプで増幅されたスピーカから再生します。部屋の形状や吸音特性のシミュレーションデータの切り替えは、1秒以内に行われるので、ほとんど瞬時に比較試聴ができ、どの様な部屋のパターンが一番良いかがすぐにわかります。
音場シミュレーションの応用用途としては、OSSとほぼ同様ですが、使う手法、考え方、結果の出し方が異なり、色々な方法で音場コントロールを行っていきたいと考えています。

5. 試聴のお誘い

今回の新試聴室は、以上の様なコンセプトで作りましたので、もし、皆様が少しでも興味をお持ちになり、ご連絡を頂ければ、いつでも上記システムを試聴出来ます。気楽に遊びに来る感覚でおいでください。皆様とディスカッションすることによって、新しいアイディアや用途が考えられ、我々の方向を決めて行きます。また、新試聴室は、基本的に吸音をメインに作ってありますので、スピーカー、アンプ、エフェクター等の試聴会を行っていただくことも可能です。(事前の連絡と若干の使用料が必要となりますが。)もうすでに、何社かの方が試聴会を開かれ、メーカーや輸入商社の方とスタジオミキサーのコミュニケーションが図られています。

連絡先:電話03(3634)3525
担当 高山・清水

試聴のお誘い試聴のお誘い