工事部 米山 進

1 はじめに

今、FM放送の新しい波が全国に波及しています。FM横浜が1985年12月20日に放送を開始してから8年、現在のFMの先駆け的存在であったFM横浜が、横浜の新名所となりつつある横浜ランドマークタワーに移転し、新しく生まれ変わろうとしています。
横浜ランドマークタワーは、「みなとみらい21」地区のシンボルとして建設された日本一の超高層ビルで、高さが296m、地上70階、低層棟には巨大なショッピングモール、高層棟はオフィスとホテルからなり69階は展望フロアーとなっています。
また、「みなとみらい21」事業は、21世紀に向けた「国際文化都市」「情報都市」「人間環境都市」という3つの大きな考え方に基いて進められている街づくりで、「横浜国際平和会議場」「国際会議センター」「国際展示場」などが作られ、今後も21世紀に向け、文化の先端を担うべく街づくりが進められています。
このような、文化、情報の街として生まれつつある環境の中で、「FM横浜」が「YOKOHAMARADIO」に変わり、今年10月10日に本放送が開始されます。
今回、当社は「YOKOHAMARADIO」開局のお手伝いをさせていただきましたので、その概要を紹介させていただきます。

図-1 スタジオ平面図
図-1 スタジオ平面図

2 スタジオの概要

スタジオは、タワー棟のオフィスエリアの10階に作られ、生放送用スタジオが2室、番組制作用スタジオが1室、制作・ダビング用スタジオが2室、編集用ブースが4室、更にメインとなるマスタールーム、ラックルームがあり、他にCMルーム、レコードライブラリー、CVCF室、エアコンルーム、ロビー、NEWSなどの機能を中心に配置されています。
また、最上階には通信機器室があり、屋上には送信用のパラボラが設置されています。そして、非常用発電機が低層棟の屋上に設置され、非常時に対応できるように設備されています。

< 社 名 > 横浜エフエム放送株式会社
<C.Iネーム> YOKOHAMARADIO (ハマラジ)
<コールサイン> JOTU-FM
<周波数・出力> 横浜送信所 84.7MHz・出力5KW
湘南中継所80.4MHz・出力100W
< 放送区域 > 神奈川県・東京都・千葉県の全域
茨城県・静岡県・栃木県・群馬県・
埼玉県・山梨県の一部

3 スタジオの設計

スタジオの設計コンセプトは、「キャビン風」ということでしたので、舟のイメージ、海のイメージで進めました。

(1)スタジオA、B

生放送に多く使用されるスタジオAとスタジオBは、打合せコーナーをはさみ、左右対象の配置となっています。スタジオAはJR桜木町駅側に配置され、眼下には日本丸が望めます。スタジオBは海側に配置され、ベイブリッジ、インターコンチネンタルホテルが望めます。スタジオA・B共、ブースとサブコントロールルームから構成され、室間には大きな覗き窓を設け、コントロールし易くし、また外部に対しても景色を見れるように窓を設けています。

スタジオ写真

今回計画されたのがオフィス部分ということで、壁・天井部分の内装は、構造上、乾式工法としました。
遮音構造は、固定遮音層で各スタジオを仕切り、その内側に浮構造のブースとサブコントロールルームを設けました。
浮遮音層の構造として、床が防振ゴムとコンクリートで、壁は防振ゴムを介しLGS下地にロックウールを充填し石膏ボード15mm2枚から作られています。天井は防振ハンガーを介しLGS下地にロックウール充填し石膏ボード15mm2枚という構造となっています。
吸音構造としては、サウンドトラップとグラスウールを適度に配置し、石膏ボードの鳴りを押さえる目的で、遮音層面にはレンガブロックをランダムに配置しています。

内装仕上は、「キャビン風」ということを考慮して、スタジオA、B共、壁はガラスクロスを使用し、色は2種類のブルー系で、海のイメージを出しています。
腰壁は不燃材に木目の練付をした化粧板を使用し、床はナラのフローリング貼りとしました。天井には、薄いグレー系の色のガラスクロスを使用しました。

サブコントロール写真

サブコントロールルームは、左右対象を基本とした平面形状とし、左右が6.15m、前後が6.0mで、十分な作業スペースを確保しています。また、天井は、左右をダクトスペースに利用したため下り天井となっており、高さは2.1m、中央部は舟底をイメージした形状にし、高さは2.4mとしています。
バッフル面はハードバッフルとし、石膏ボードとケイカル板にダイノックシート仕上としました。また、バッフル面の裏側にレンガブロックを貼り、重量を増し強固な壁となっています。スピーカはパイオニアM2402が採用され、ビルトインタイプとしています。取付は、浮遮音壁に固定し、浮遮音層面にはボードの鳴りを押さえる為にレンガブロックを貼り補強しています。内部は、サウンドトラップにより、吸音しています。

(2)スタジオC

スタジオCは、主に番組制作用のもので、ブースとサブコントロールルームで構成されています。また、マスタールームを見通せることができ、ブースも兼用できるようになっています。窓は中央部分のみとし、左右のスピーカを下げて、モニターし易くしています。
遮音構造、吸音構造は、スタジオA・Bと同仕様としています。壁・天井の仕上げは、グレー系のクロスで、腰壁及び床はスタジオA・Bと同仕様としています。

(3)ダビング用スタジオ

ダビングルームは、スタジオCの横に廊下を挟んで配置しました。主に、制作、ダビングに使用されます。構造としては、浮構造としましたが、壁の遮音層は固定遮音層のみとし、床と天井については、他のスタジオと同様としています。吸音構造としては、壁、天井共、グラスウールを適度に配置し、壁の遮音層面にはブロックレンガをランダムに配置しています。仕上げは、他のスタジオと同様としています。
スピーカは、パイオニアのスモールタイプで新しく開発されたものが採用されました。取付は、天井より金物で吊る方法としました。

(4)マスタールーム

マスタールームは、エントランスホールから廊下を通り、奥に配置されています。マスタールームは、他のスタジオとリンクされており、各スタジオからの信号を確認する最も重要な室で、その他の設備の状態を確認できるようになっています。また、マスタールームの後ろに配置されているラックルームは、大きな窓を挟み、確認しやすいようにしています。
ラックルームは、機器の発熱量が大きいので、常に冷房状態を保たなければならず、空調機のバックアップも必要となります。

(5)その他の施設

消火設備に関しては、各スタジオ共スプリンクラー設備をしていますが、マスタールーム、ラックルーム、CVCF室は、機器の保護のためハロン消火設備を採用しています。しかし、ハロンは地球環境保護の為、使用禁止が指導されており、今後の検討課題となっています。
ラックルームの横に配置されたエアコンルームは、スタジオC、ダビングルーム、マスタールーム、ラックルーム用の空調機が設置されています。また、スタジオA・B用の空調機は、ロビー及びレコードライブラリーの天井裏に設備されています。エアコンルームの奥には、ハロンボンベ室が配置されています。
エアコンルームの横には、CVCF室が設置されており、電源供給用の幹線分岐盤、CVCF等が配置され、電源供給の重要な室となっています。また、非常時の照明の切替えをスムーズにするため、一部の照明器具はバッテリー付としています。
CVCF室の横には、CMルームと仮眠室が配置されています。間仕切は、パーティションで施工しました。
編集室用ブースとNEWS、レコードライブラリーは、ロビー周辺に配置され、各スタジオの中央部分に位置しています。また、レコードラックの床は、構造上鉄骨で補強されています。

ロビー写真

廊下から入ると、正面にはRのガラススクリーンがあり、左右に化粧の丸柱が立っています。右側のガラススクリーンは平面で、デザインはRガラスと同様の波形で、3種類のデザインを組み合わせたものとなっています。床はナラのフローリング貼りで、壁は薄いブルー系の壁紙、天井は白色系の吹付塗装となっています。スタジオA・Bを挟んだ部分が打ち合わせスペースと電話リクエスト兼用のスペースとなっており、左右にスポンサー用ロッカーなどがあります。その奥は、ロビーとなっており、ソファーが配置されていて、くつろげるスペースとなっています。左右には窓があり、景色が望めます。また、このスペースのみが喫煙場所となっており、空気清浄機が設備されています。

(6)音響性能等

音響性能は、設計時点での目標値を満たしており、空調騒音レベルは、マスタールームを除き、全てNCー15以下で、設計時点における建築での設定許容騒音レベルであるブースNC-15、サブコンルームNC-25を上回った結果となっています。また、残響時間は、放送設備が設置されていない状態で測定されたものですが、ブース及びサブコンルームは、0.3秒から0.35秒の間になっており、今後設備機器が入れば多少短くなると予想されます。

以上、各スタジオの機能、構造などの概略をまとめてみましたが、今回のコンセプトである「キャビン風」のイメージが、多少でも取り入れる事ができたかと思います。全体の配色がブルー系、グレー系、木質系と大きく3種類でまとめられていて、横浜、湘南のイメージともマッチしたものとなっています。

4 おわりに

「みなとみらい21」計画は、2000年を完成予定として進められており、横浜駅から新港埠頭にかけて海岸線186haの地区に、就業人口19万人、居住人口1万人の新しい街ができつつあります。また、「インターナショナルな街」横浜は、情報、文化の発信地でもあり、そのような環境の中からYOKOHAMARADIOが新しい波を発信してくれることと思います。
末尾になりましたが、今回、ご協力いただいた多くの方々に深く感謝いたします。