技術部 古谷 敬

1. はじめに

音響計測の精度向上及び時間短縮・省力化を目的に開発しましたマイクロホン移動装置「MTシリーズ」については、 第1号機を世に送り出して、7年が経過しました。この間、様々な測定・計測の自動化やシステム化のお手伝いをさせていただくなかで、 用途や測定対象物の形状等により、多彩なラインナップを開発しています。

MTシリーズの基本型である3次元空間を移動する MT-3000、マイクロホンローテータMR-1000 、ターンテーブル TT-1000、 半球面を自由に動き回る円弧トラバース MRS-3、無響室天井取付け固定型トラバース MTS-5のような大型のものから、 車室内の様な狭い空間で使用し自由に大きさを変えることが出来る MT-2000等まで用意しております。 これらの多くは、お客様からリクエストやお引き合いをいただき開発したもので、今度とも様々なバリエーションに挑戦していきたいと考えています。 比較的最近に開発したものに MT-2000-DC2がありますが、動作中に殆ど音のしないDCサーボモータを使用しています。

MT-2000-DC2 のその他の特徴としては、下記のものがあげられます。

  1. コントローラの前面のパネルキーにより、マニュアル操作が可能
  2. オプションで外部装置(ペンダントボックス)を取付けることでリモコン操作及びティーチング機能が付加されます。03meca1-01.jpg
  3. 以前から、コンピュータの電源を切ってしまうと MT-3000等は「マニュアルで動作させることが出来ない」とユーザーの方から言われていました。 そのようなことから今回、通常の MT-3000, MT-4000(ステッピングモータタイプ)にも、 MT-2000-DC2と同様にマニュアル操作が可能なリモコン装置を付加することが出来るようになりましたのでここにご紹介させていただきます。

2. リモコン装置及び機能

ステッピングモータを使用している機種(MT-2000, MT-3000, MT-4000 等)のコントローラはコンピュータのみの制御しかできなかったことから、 ホスト側のソフトウエアによりマイクロホンホールド部分の移動を行っていましたが、リモコン装置を付加することで、 ホストコンピュータを介さずにマニュアル操作及びティーチング機能を可能にしました。そのため、被測定物の側で見ながら移動させ、 初期位置の決定等が簡単に出来るようにしています。

このリモコン装置は、RS232Cインターフェースを介して制御を行い、次の機能を有しています。

A. モード切り替え

ホストコンピュータからの制御とリモコン装置からの制御を選択することができます。

B. マニュアル制御

ア 任意点への移動

(各軸方向へキーを押している間移動します。)

イ 距離指定による移動

(数値入力で任意の方向へ移動します。)

ウ 絶対座標への移動

(各軸の絶対座標値により移動します。)

エ 相対座標への移動

(各軸の移動距離により移動します。)

オ 移動速度の設定

(各軸の移動速度を設定します。)
C. 非常停止

動作中に非常停止させることができます。

D. ティーチング機能(教示機能)

マイクロホンホルダーの移動空間中の障害物を避けるために、移動(測定)経路を順次記憶させ、 測定のソフトウェアと連動する事でよりきめ細やかな移動(測定)ができます。

E. 本体仕様
入出力ポート 1チャンネル、D-SUB25pin
ケーブル D-SUB25pin コネクタ2m
伝送方式 調歩同期
伝送コード ASCII
語 調 8ビット
パリティ なし
ストップビット 1ビット
ボーレート 9600
伝送制御 CTS-RTS、X-OFF
表 示 LCD6桁×2行
使用電源 +5V、100mA(D-SUB25pinより供給)
外形寸法

196(W)×110(D)×49(H)mm

3. リモコン装置の利用

一般にマイクロホン移動装置を利用して測定を行う場合、 測定対象物やマイクロホン移動装置を置いた無響室と計測機器やコンピュータを置いた計測室に分かれることが多いことから、 対象物とマイクロホンの位置設定や、測定開始点へ移動させるには、コンピュータ側で監視カメラを利用したり、 無響室側と計測室側の2人以上で位置決定をしていますが、このリモコン装置を使用すれば、1人で被測定物を実際に見ながら移動させることができ、 測定作業の時間短縮と省力化が図れます。

また、任意の1ポイント測定等にも便利です。

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4. コントローラ改造

これらのリモコン機能に関して、今後納品させていただく全てのMTシリーズについては、オプションとして付加することが可能ですが、 現在お使いいただいているマイクロホン移動装置にも、コントローラを改造することで、リモコン装置を付加させることができます。

下表に旧コントローラから最新コントローラにリモコン装置を付加したバージョンアップをご紹介いたします。

コントローラ 改造内容 機能
1 ARETHA(Ver. 3.2) <GPIB I/F> 25P-DSUBコネクタ付加
8P-DIP SWITCH付加
ROMの差替え
リモコン装置付加
(Ver. 7.0)
2 MT3042(Ver. 3.1以下) <GPIB I/F>
モータドライバー(シルバー)
新型ケースへのもりかえ
25P-DSUBコネクタ付加
8P-DIP SWITCH付加
ROMの差替え
リモコン装置付加
(Ver. 7.0)
ホールドオン/オフ

SI、GOコマンド
(Ver. 3.0以下に追加)
3 MT3042(Ver. 3.1以下) <GPIB I/F>
モータドライバー(ブラック)
新型ケースへのもりかえ
25P-DSUBコネクタ付加
8P-DIP SWITCH付加
ROMの差替え
モータドライバーの交換
CPUボードの交換
リモコン装置付加
(Ver. 7.0)
ホールドオン/オフ*1

SI、GOコマンド*2
(Ver. 3.0以下に追加)
*1 ホールドオフ:モータ停止時の出力電流(トルク保持電流)をオフしモータをフリーにします。 これにより停止時の機械暗騒音を全てカット出来ます。尚、ホールドオンは逆に停止時のトルク保持を行います。(通常状態)
*2 SI:初期化動作(IN もしくは GO)を省略しコントローラ電源投入後にデータ入力を行うことで本体制御を即実行可能とします。 GO:機械原点へ移動し初期化を行います。

5. 新型インテンシティ・プローブ・ローテータ(MTTG Ver.2.0)

また、最近、音響インテンシティ測定における3次元ベクトルマップ作図自動化の為に開発しましたインテンシティ・プローブ自動方向転換装置、 MTTGの新型ができましたのでここにご紹介させていただきます。

新型は、従来のタイプより形状を細長くし、ボディ先端も反射を考慮して円錐形としています。

マイクホルダがマウントされる回転リングは大小2種あり(B&K TYPE4181,4178に対応)、 それぞれのインテンシティ・マイクロホンとスペーサとの組み合わせにより選択出来る様になっております。

さらに、パルスモーター駆動方式により、位置制御が可能ですのでパワーレベル測定にも使用出来ます。 MTS-5 等とリンクしてシステムアップするとより威力を発揮することができます。

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6. お客様へ

既にMTシリーズをお使いのお客様で、リモコン装置や新型のMTTGに興味を持たれた方、また導入をお考えの方は、 当社までご連絡ください。特に旧コントローラを改造する必要のある場合は、改造のための時間や経費が異なりますので、詳しくご説明させていただきます。

また、前にも述べましたとおり、MTシリーズは、お客様からのリクエスト、ご要望により発展しています。 今後とも、特殊な用途、特殊な形状にも挑戦していくつもりですので、何なりとお申しつけくださるようお願いします。