販売終了製品・サービス 室内音響指標分析システム(販売終了製品)

室内音響指標分析システム AERAP

AERAPはAEIRMで測定されたインパルス応答を用いて、残響時間をはじめ音楽やスピーチに対する明瞭度といった、室内音響の分野で利用されている音響指標値を算出するシステムです。
これまで、室内音響の分野ではその評価をエンジニアや設計者の「耳」に委ねることが一般的でした。しかし、こういった主観的な評価というのは、「澄んだ響き」、「ぼやけた音像」といった抽象的な表現をされることも多く、誰もが同じ感覚を得られるとは限りません。そこで他の分野と同様、主観的な聴感とよく対応した定量的な指標値の構築が求められています。

様々な音響指標の算出が可能

インパルス応答測定システムAEIRMで測定されたインパルス応答を分析し、様々な室内音響指標値を算出します。AERAPは、1/1、1/3オクターブバンドのフィルタリング機能を備え、室内音響分野で提唱されているほとんどの指標を算出することができます。 これらの音響指標は、ISO3382 Acoustics - Measurement of the reverberation time of rooms with reference to other acoustical parameters 内にも定義や算出方法が規定されています。

算出可能な室内音響指標について

Echo Time Pattern
(エコータイムパターン:ETP)
インパルス応答をバンドパスフィルタに通すことにより得られる時系列データです。
本ソフトウェアでは、インパルス応答ファイル(IMPファイル)形式として保存されます。
このデータは、他の指標を計算するための基本データとなります。
Reverberation Time
(残響時間:RT)
エコータイムパターンからインパルス積分法(Schroeder法)を利用して、音圧レベル減衰波形を求めることが出来ます。
残響時間とは、本来、定常状態から60dBエネルギーが減衰するまでの時間を指します。
音圧レベル減衰波形を最小二乗法で直線近似し、その傾きから残響時間を読み取ります。
Early Decay Time
(初期減衰時間:EDT)
直接音到来後、初期の10dB減衰から読み取った残響時間を指します。
減衰波形が完全な指数減衰である場合は、残響時間と全く同じ値になります。
しかし、音圧レベル減衰波形が折れ曲がり等を示す場合、主観的な残響時間(すなわち残響感)は比較的初期の傾斜で決まるという実験結果があります。
この初期残響時間はそういった実験から提案されました。
Strength (G) ある点のインパルス応答から求めたエネルギーと、同じ音源を無響室に設置し、10m離れた点で測定したときのエネルギーの比を取ったものです。
この指標は、ホール内の音圧レベルの分布を、自由音場における音圧レベルの距離減衰と比較して示す場合に多く用いられます。
その定義から、算出には無響室で音源から10m離れた点で測定されたインパルス応答データが必要となります。
Clarity (C80、C) 音楽を対象とした明瞭度に関するパラメータとして提案されました。
直接音到来後80msecまでに到来するエネルギーと、それ以降のエネルギーとの比で定義されます。
Deutlichkeit
(ドイトリヒカイト:D50、D)
音楽を対象としたClarityに対して、スピーチの明瞭度に関するパラメータとして提案されたのがDeutlichkeitです。
直接音到来後50msecまでのエネルギーと、直接音を含む全エネルギーの比で定義されます。
Center Time (時間重心:ts) Cremerが提案した、エネルギーに時間の重みを付ける方法です。
音節明瞭度がよく対応するという報告があります。
Support (ST) Gadeが提案した、ステージのための音響指標です。
ステージ音響で問題となるのは、一般に二つあります。
一つは、「自分の音の聞き取り易さ」、もう一つは「他のパートの聞き取り易さ」です。
このうち「自分の音の聞き取り易さ」に着目した方法がSupportで、ステージ上の演奏家の位置に設置した音源と、そこから1mだけ離した位置に設置したマイクロホンで測定したインパルス応答を使用します。
直接音到来後100ミリ秒までのデータに着目するか、200ミリ秒までのデータに着目するかによって、ST1、ST2の二つのパラメータが提案されています。
Speech Transfer Index
(話声伝送指数:STI)
Houtgastらは、残響や暗騒音によるスピーチの明瞭度の低下を見かけのS/N比の低下と捉え、スピーチを模した100%振幅変調波を用いてスピーチの明瞭度を開発する方法を開発しました。
この方法では、残響やエコー、暗騒音の影響が変調度の変化となって現れることから、その変調度(Modulation Transfer Function : MTF)を測定し、その結果からSTIを導いています。
 一方、Schroederは室内に妨害騒音がない場合、インパルス応答を自乗した信号のフーリエ変換が変調伝達関数(MTF)と等価であることを示しています。
従って、暗騒音の影響を考慮しないでよい場合は、インパルス応答からSTIを算出することが可能になります。 本システムでは、この方法に従ってSTIを算出します。
RASTI IEC Publication 268-16において、STIの算出を簡略化したものとして、RASTIが提案されました。
STIが125Hz~8kHz(1/1オクターブ幅)の7帯域について計算を行うのに対し、RASTIはその簡易計算バージョンとして500Hz、2000Hz(1/1オクターブ幅)の2帯域から指標を算出します。
Lateral Efficiency (LE) Lateral Efficiencyは、側方反射音のエネルギーに着目した指標です。
この指標の測定には、無指向性マイクロホンで測定したインパルス応答と、双指向性(8の字指向性)を持つマイクロホンの指向軸をホールの軸に対して直角に向けたときのインパルス応答の2種類の測定が必要になります。
Room Response (RR) Room Responseは、Lateral Efficiencyと同様、側方反射音のエネルギーに着目した指標です。
測定方法は、LEの場合と同様です。
Early Ensemble Level (EEL) Gadeが提案した、ステージのための音響指標です。
Supportが「自分の音の聞き取り易さ」に着目した指標であるのに対し、Early Ensemble Levelは「他のパートの聞き取り易さ」に着目した指標です。
Supportと同じくステージ上の演奏家の位置に音源を設置し、そこから1mだけ離した位置にマイクロホンを設置して測定したインパルス応答と、実際にその音を聴取すべき演奏家の位置にマイクロホンを設置して測定したインパルス応答を使用します。
Inter-Aural Cross Correlation (両耳間相互相関度:IACC) 安藤は、左右の耳に入射する信号感の相互相関度としてIACCを定義し、IACCと音楽のpreferenceとの関係を明らかにして、室内音響設計への導入を提案しました。
実際に測定する場合には、ダミーヘッドマイクロホンで収録するなど、両耳の位置で測定されたインパルス応答が必要になります。

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