サンオー株式会社 奥澤敏雄 大橋正幸
日本音響エンジニアリング企画部営業推進室 高島和博
1.はじめに
本記事では2019年8月に日本音響エンジニアリングの仲間となった、株式会社サンオーを初めてNOE技術ニュースでご紹介いたします。
サンオーの創業はバブル経済真っ只中の1986年。台東区浅草、浅草寺雷門の目と鼻の先に事務所を構えました。創業以前、商船で世界中を巡るエンジニアであった奥澤が、船内での騒音によるストレスの解消をビジネスのヒントに立ち上げた会社です。そこから40年近くの間、防音(騒音対策)に関するノウハウを蓄積してきました。
一方の日本音響エンジニアリング(NOE)は、2021年に騒音対策事業部を立ち上げました。自社が施工する騒音対策の部材を自ら生産できるサンオーに対し、NOEはこれまでの音響内装工事や音響コンサルティングのノウハウを生かし、シミュレーションや計測技術を強みとする防音工事を提供しています。また、音響性能を測定できる実験室を所有しているため、開発した材料の性能評価・改善も得意分野です。このように得意分野が異なる2社ですが、現在では同じビルに事務所を構え、サンオーが開発した部材の性能をNOEの実験室で評価し性能向上とコストダウンに努めるなど、一体となって事業を推進しています。
サンオーが行ってきた防音対策は多種多様ですが、その中から最近のトピックを掻い摘んでご紹介致します。
2.宇宙開発を支える防音や音響材料開発
防音事業のすそ野は幅広く、工場だけでなく商業施設、物流施設等、私たちの身近にも数多く存在します。一方で特殊な用途で必要となる防音もあり、意外なところで必要とされることも多いのです。
騒音発生原因として大きなエネルギーを使う、あるいはエネルギーを産み出す現場をイメージされる方は多いと思いますが、そのイメージは間違っておりません。その中でもここ数年で注目を集めているのが宇宙開発事業です。
サンオーでは2011年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)へ防音、防振、恒温、恒湿のクリーンルームを納入したことが宇宙関連の最初の案件でした。このクリーンルームは実験室として利用され、実験用の器材として約1トンの走行クレーンも設置されています。一方、NOEも2009年から特殊な壁材料の音響性能開発試験を受託した後、防音性能測定システム等を納品するなど、JAXAの宇宙開発に貢献してきました。サンオーが納入した防音室で実験した機械やNOEの試験システムで検証された部材が宇宙開発の発展に陰ながら寄与しています。

3.スマホ社会を支えるデータセンターの騒音対策
日常使用しているスマートフォン。検索をしたり、友人に連絡を取ったりする際、スマートフォンとサービス(アプリ)提供会社のシステムとの間ではデータのやり取りが行われます。データをサーバーに届けるための中継地点や実際の処理が行われているサーバーが設置されているのが、データセンターと呼ばれる施設です。関東近郊でデータセンターが多数設置される場所として知られているのが千葉県印西市。印西市にデータセンターが集中する理由は、人口が多く大量のデータ処理が必要な関東地方にあって、電力インフラが整っていることに加え、安定した地盤、津波や洪水等のリスクが低いことと言われております。
データセンターの内部は最新のネットワーク機器とデータを処理するサーバーが多数設置される、いわばコンピュータの集合体になっており、大量の熱が出ます。コンピュータを冷却するために用いられるのが大容量の冷却設備で、データセンターの屋上にはチラーと呼ばれる冷却機器が多数設置されることが一般的です。データセンターが多数置かれている印西市は千葉ニュータウンを構成する住宅地で、近隣への騒音が問題になることは想像に難くありません。
サンオーでは近年このデータセンターの騒音対策に注力し、特に空冷チラーから発生する騒音に対し空調機器メーカーと協力して組んで周囲への騒音影響を回避するための対策を実施しており、印西市に立地するデータセンター案件も担当しています。あなたのスマートフォンが間接的に発生させた騒音の影響をどこかでサンオーが低減している、そんな状況になっています。


4.働く人の安全を守る-作業環境騒音の対策
サンオーが携わった案件の一例として、塗装工場の騒音とその対策についてご紹介したいと思います。
元々は金属の腐食防止が目的であった塗装ですが、現在は見た目のカスタマイズ等に用いられる用途が一般的です。自動車や機械の部品工場で生産される製品には塗装行程が必須で、圧縮空気を使ったガンで塗料を吹き付けますが、この塗装工程における騒音が問題になることがあります。作業は塗装ブースで行われますが、塗装ブース内にミスト状の塗料が浮遊するため、空気流で浮遊物を誘引し、水のシャワーを通して回収する形が一般的です。この空気流を発生させるための排気ダクト出口付近での騒音が、敷地周辺に住宅がある場合は特に夜間の騒音が問題になることがあります。サンオーがお問合せを受けた際は排気ダクトに消音器を設ける対策をご提案しています。
周辺に対する騒音影響もさることながら、昨今、工場を経営する側でも意識しなければならないこととなってきているのが、工場内で働く従業員に対する騒音、つまり作業環境騒音の影響です。昔ながらの工場では、ベテラン技術者も多く、機械から発生する騒音に対して敏感ではないことが多いのですが、これは決して良いことではありません。長年の継続勤務で騒音に関する感覚が麻痺しているケースが多いのです。生産設備のリニューアルの際に、改めてその騒音を認識し、機械の入れ替えタイミングで防音を検討する、そんなお問い合わせが増えてきました。また、保護具(耳栓)が必要とされる労働安全衛生規則で定められた管理区分II以上の現場に対し、保護具を外せるように対策したいというニーズも多く頂きます。このように工場外に対する対策もさることながら、従業員の定着問題や働き方改革と関連して工場内の作業環境騒音対策のニーズが高まっており、サンオーでは積極的な提案を行っています。

5.おわりに
サンオーは防音一筋約40年、7000件以上の施工実績を誇ります。防音パネル、防音壁、遮音マット、遮音シートなどを適切に組み合わせ、多種多様な騒音問題に対し、ご予算に見合った効果の高い防音対策をご提案してきました。2024年5月には千葉県船橋市の新工場が稼働し、生産能力を大幅に向上させることができました。騒音でお困りのことがあれば、ぜひサンオーにご相談下さい。
